2013年4月21日 第1回FINDAS研究会「言語/文学からみる現代南アジア」の報告

掲載日 | 2013年04月25日

2013年4月21日に行われました2012年度第4回FINDAS研究会の報告です。

テーマ「言語/文学からみる現代南アジアー対抗・アイデンティティ・セクシュアリティ」

発表者 1:萬宮健策(東京外国語大学)

発表者 2:石田英明(大東文化大学)

発表者 3:小松久恵(追手門学院大学)

発表者 4:萩田博(東京外国語大学)

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発表者 1: 萬宮健策(東京外国語大学)

「現代インドにおけるスィンディーの位置づけ」

本報告では、現パキスタンのスィンド地方からインドに移住した人々に注目し、インド政府による言語に関する対応が考察された。スィンディーの内部においては、ヒンドゥーとムスリムの間の敵対関係はそれほど著しいものではないことを指摘したうえで、文字体系が宗教の差異を超えて併存している点をスィンディー語の特異性として論じた。この文字体系が文化的なシンボルとして一定の価値を持ちつづけているという論点が示された。

発表者 2:石田英明(大東文化大学)

「ヒンディー・ダリト文学の歴史と現状」

本報告では、1990年代後半に組織化されはじめたダリト文学団体の歴史と現状を述べつつ、近年の文学団体内の新たな試みが提示された。新たな試みとはすなわち、情報技術の発達や、団体の会員相互の不仲などの理由により活動が停滞していた2000年代後半のダリト文学団体の状況から脱却しようとする試みのことであり、たとえば、デリー大学傘下のヒンディー語科教員であるムケーシュ・マーナスによる若手のダリト作家の育成や、テージ・スィンによって進められている、「ダリト」という言葉を用いない「アンベードカル主義作家連盟」という新たな団体の設立をめざす動きなどのことである。

発表者 3:小松久恵(追手門学院大学)

「女が語る『生』と『性』 ―近現代ヒンディー文学をめぐる一考察」

本報告では、近現代のヒンディー文学における女性の著作を取り上げ、彼女たちのジェンダー認識の変容について検討がなされた。20世紀初頭に北インドでの女子教育の普及とともに、女性たちが文学と関わり始めたが、女性たちは当時「性」というテーマに対して沈黙を保っていた。しかし時代が変わり、現代のヒンディー文学界では、女性作家にとって「性」は隠匿すべきものではなくなっている。その例として、英語作家のショーバ・デーとヒンディー語作家のアルパナ・ミシュラを取り上げ、彼女たちが認識している「性」あるいは「生」というものの内実を浮かび上がらせた。

発表者 4:萩田博(東京外国語大学)

「文化的伝統へのまなざし ―インドにおけるウルドゥー文学者とインド・イスラーム文化」

本報告では、インドのウルドゥー作家であるクッラトゥル・アイン・ハイダルやラーヒー・マースーム・ラザーなどを取り上げて、彼らがどのようにインドのムスリムとしてのアイデンティティを模索していったのかを考察した。ラーヒー・マースーム・ラザーがヒンディー語で執筆をするようになった際、多くの批判を受けたが、彼は、文学者としてより多くの人々に自らの主張を伝える必要があるのだと語った。またクッラトゥル・アイン・ハイダルはラクナウでのムスリム・ヒンドゥー間の平和的共存を記述した。これらから、彼らのインド・ムスリムとしてのアイデンティティの一端を見ることができる。