1. | 日 時:平成13年12月7日(金) 10:00〜 12 :00 |
2. | 場 所:如水会館 松風の間 |
3. | 議 事:【発言内容の記録中、委員の発言には〇印を、大学側の発言には●を付した。】 |
(1) | 「大学(国立大学)の構造改革の方針」及び「新しい『国立大学法人像』について(中間報告)」に対する本学の対応 |
● | 大学の構造改革について本学は、当面、従来から様々な形で進めてきた改革をさらに総合的に推し進めて、より一層、個性が輝く大学を追求していくという道を選んだ。理由は、スケールメリットを最大限に発揮するには距離の近い東京都内あるいは多摩地区の大学同士でないと現実的には無理があること、教育の質の向上や教育研究の可能性の拡大など意味のある統合でなくてはならないこと、ミニ総合大学を作ってこれまで培ってきた個性が埋没してしまうのでは意味がないことなどであり、まずは生き残りの問題に身をさらしながら自己改革を続ける方がよいと考えた。再編統合に目をつぶろうとしているのではない。スケールメリットの確保と本学が追求することとが両立するなら再編統合も考えられるので、それも常に視野に入れている。この後説明する外国語学部改革もその一つである。タックスペイヤーから存在が認められる大学であるために10数年から20年先を展望したマスタープランを策定中である。法人化についても10月にワーキンググループを立ち上げ、政治学・法学・経済学を専門にする先生方に集中的に検討してもらっている。また、従来2人であった学長室補佐を5人に増強して、点検評価、広報活動、社会貢献、国際交流・留学生問題、研究活動といった課題に積極的に取り組もうともしている。 |
〇 | 小規模であることも大学の個性の一つなので、私どもの大学ではそれを守っていきたいと思っている。文部科学省は小規模であることを尊重しないと言うことか、また、東京外大の決定は(小さい)スケールを守るということもあったのか。 |
● | スケールメリットという場合のスケールとは何か、学生数のことか学部数のことか予算のことかと様々な機会に文部科学省に聞いたが、明確な返事はなかった。米国の最優秀校ランキングでは小さな大学がずいぶん上位を占めている。ホームページを見ても小規模で手間暇かけたいい教育を行っていることをうたっている大学が多い。本学としては、スケールの問題よりも、統合することによって追求していた教育研究の方向が歪曲されて埋没してしまうのを恐れたと答えるのが適切であると思う。 |
〇 | 個性をぜひ輝かせていただきたいが、東京外大の個性とは何か。外事専門学校から東京外国語大学になったときに、フォーリン・スタディーズという英訳名称をあてて、他の外語専門学校と違うんだという理念があったと思う。語学の達人プラス フォーリンスタディーズを実現するためにはかなり制度的工夫がいる。 |
● | 外国語学部が本学のすべてではないが、外国語学部が本学の個性をもっとも体現していると思うので、次の審議事項でそれに答えるのが適当だと思う。ただし、その前に一言。個性というと理念や目標の議論になりがちであるが、その大学にしかない理念や目標を持った大学というのは少ないと思う。長い歴史の中で培ってきた教育研究の在り方も個性であるので、本学の個性に関しては、もう少しふくらみのあるものとして考えたい。 |
〇 | 大学改革の問題では、鳥瞰・俯瞰する文部科学省などのロジックと、大学でなければわからない「虫験」(虫が触知すること)とのロジックを早く結びつけないといけない。その意味でお尋ねしたい。大阪外国語大学とはどの様な相談をしておられるのか、また、東京外国語大学は国立大学であるということをどう認識しているのか。 |
● | 大阪外国語大学のことを私が代弁するのは難しいが、大阪外国語大学長は、現時点ではどこか統合の相手があれば探したいとお考えになっていると思う。また、本学は国立大学としてとどまらざるをえないと考えている。理由はつぎのようなことである。「百年兵を養うはこの一日のためなり」ということばがあるが、普段はさほど必要性が感じられないマイナーな言語が、国際政治や事件の勃発などで緊急に必要になることがある。今次のアフガニスタンのパシュトー語などがそれである。文化大国であればその備えを常にしておかなければならない。もう一つ、日本の社会の中でも国際化が進んで、さまざまな言語がさまざまな局面で必要とされている。英語だけできてそれで国際化されているというのでは余りに寂しい。しかし、そうした多様な言語が私学で教育できるかと言えば、財政的にきわめて難しい。本学は国立大学であるからこそその任務が果たせるのだと考えている。 |
〇 | メリットが何かという主張が大事である。守りでは駄目だ。外国語の分野においては、国立大学のメリットは何かということを、鳥瞰・俯瞰している側に積極的に伝えることができないか。 |
(2) |
外国語学部の改革について |
● | かつて2学部案というのがあったが、文部科学省から学部の複数化よりも統合再編との厳しい指摘があった。この4月には2年をかけて改革を考えようということで学部で検討を始めたのであるが、6月に構造改革の話が出てきて急速に検討する必要が生じたので、学部に緊急委員会を設け検討を開始した。本学の現状、抱えている問題点、社会状況等を考慮して「改革の方向性」を考えている。事項としては、 1)独自性、個性、潜在能力を最大限に発揮できる教育、研究体制の確立。 2)国際化した日本社会と世界で活躍できる人材の育成。 3)地域、社会、世界に開かれた大学作り。 4)本学の豊かな人的資源を最大限活用する。 |
〇 | グローバル化という言葉が出てくるが、グローバル化を大義名分として、例えば少数言語の消滅、文化の画一化という力が働いていることに非常な危惧の念を持っている。むしろ、文化の個性化、少数言語の擁護は外大の大きな責任ではないかと思う。文部科学省の方針がスケールメリットや効率化とつなげて言われるのを不思議に思っていたが、今日の話で経済財政諮問会議などで言われていることだと説明を聞いてわかった。ならばなおさら気をつけなければならない。定員の弾力化は大変結構なことだが文部科学省が予算上のことで認めない方向と聞く。大学改革を求めるなら文部科学省が柔軟性を示すべきだ。その上で東京外大の個性がよけいに輝くのだと思う。 |
● | 近年、全体としては実学化の方向に走っているが、それが全てでなく、少数言語やそういう地域の研究を守るのも本学の使命と考える。 |
〇 | 学部・大学院一貫性は高度専門職業人養成という説明であった。ところが社会は修士修了者を冷たく見ているので、それを突破しないとこれはお題目に終わる気がする。東京外大はこれをどうとらえているか。また、専門性を強調する一方で幅広い教養という説明があるが、幅広い教養について東京外大はどう考えているか、カリキュラムの中ではどうなっているか。 |
● | 修士修了者の就職については確かに冷たいと感じている。教育指導とともにシステム的にどういう形で卒業後の面倒を見るかが課題であると思っている。 |
● | 高度専門職業人の養成を考えて一貫コースを構想しているのだが、こういうものを作っても、就職ということでは難しいという意味のご質問ですか。 |
〇 | むしろ前向きで、いい修士修了生を出して突破していくことが必要であるということである。積極的に社会への働きかけていく必要があると申し上げたかった。 |
● | 大学院では、前回説明した4新設コースの内、国際協力、国際コミュニケーション、日本語教育の3コースを新設し、既に30人の学生をとった。来年度は残りの英語教育コースについても新設する。定員の関係から前期課程の学生の大半が後期課程へ行けない上に就職率がよくないというのでは無責任なので、需要のある分野のコースを新設して対応している。今後は70名位を高度職業人養成コースにして学部と大学院を繋ぐこととしたい。これによって大学の特色が生かせ、かつ、就職の幅も広がる。 |
● | 幅広い教養というのは本学では,26専攻語と英語をベースに文化や地域、国際面での視野を身につけることであるが、一般教養だけに終わらず高度専門職業人を養成するという部分に大学としての性格を打ち出していこうと思うし、就職で新しい分野を開拓するという戦略でもある。 |
○ | 中国では2〜3年間集中的に一つの言語を勉強して国家機関、貿易、外交といった方面に就職する。欧米では、語学に経済学や法学などを加えたダブル専攻で勉強しているから就職率も抜群なのである。また、比較文化に関してであるが、これは視野を広げるのには役立つが、価値観の次元で教えるのは難しい。日本人も欧米人も自国の文化や価値観を分かっていない。だから、学問として成り立たないし就職にもあまり役に立たない。それでも国立であればまあまあ生き残れるが、私学ならばこれでは学生は来ない。私は小さな大学院の学長もしているが、そこでは大学院では1年留学するというのが条件である。東京外大はどうか。 |
● | 大学院生はほぼ100%留学している。今回の学部改革でもぜひ強化したいのだが、制度化ということになると経済的支援などの点で難しい。現実に行っていることと制度が存在することとがイコールにならないことに苦慮している。 |
○ | 日本で英語で講演したときに同時通訳がついたが、後で速記録を見たら言いたいことと全然違っていたということがあった。また、翻訳活動でも原作を裏切ることが非常に多い。私が軽い調子で書いた英文が、和訳されると学術論文のように固くなっていたとか。フランス文学で英訳がないものが和訳ではあるというように、日本は翻訳天国とも言える。でも翻訳が必ずしも優れているとは言い難い。東京外大は、ぜひ通訳や翻訳に力を入れてほしい。 |
(3) | その他 |
※四大学連合について |
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● | 四大学連合では、既に東京工業大学、東京医科歯科大学、一橋大学の3大学間で複合領域コースができている。本学は進行が遅れているが、目下、東京工業大学との間に2大学間複合コースがまとまりつつある。実行段階に入ると、学生が大学間を動き回るのか、ビデオやITを使うのか、集中講義なのか、と難しい問題を抱えているのが実情である。統合再編問題に関連して四大学連合は統合しないのかという質問をよく受けるが、当初から一つになることを前提とはしていない。 |
※AA研究所について |
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● | AA研究所のことでは、研究所の外部評価委員会で「外大から出て大きな場で活躍をすべきである」との意見が出て、AA研究所の教授会でそれを前向きに受け止めることを決定した。統合再編の話が出て以降、共同利用研究所を一つにまとめて法人化するという動きがあって、10月には研究所長が学術機関課長のヒヤリングを受けた。受け皿ができつつあるので、希望すればその中に組み込んでいけるのではないかという示唆を受けている。 |