平成12年度第2回東京外国語大学運営
諮問会議議事要旨
1.日 時:平成13年2月23日(金) 13:00〜
16 :302.場 所:如水会館 富士の間
3.議 事:【発言内容の記録中、委員の発言には〇印を、大学側の発言には●を付した。】
(1)四大学連合について
●四大学(東京医科歯科大学、東京工業大学、一橋大学、本学)はそれぞれ独立したまま教育・研究の内容に応じて連携し,学生の選択の幅を広げ,また,共同研究プロジェクトや学際的な領域での協力により,国際的教育水準の維持を図るというものである。 平成12年12月に評議会の了承,3月15日に四大学連合憲章を調印する。連携プログラムを現在,作成しているが,本学は参加が他大学より1歩遅れたので,キャッチアップすべく努力をしている。
●本学は,地域研究ということを言語とともに主軸の一つとして研究・教授を行っているが,何を3大学に対し提案できるかという討議をしているところである。
〇多摩地区の五大学連合(電気通信大学,東京農工大学,東京学芸大学,一橋大学,本学)で単位互換を行っているが、今後,四大学連合が多摩五大学連合の大学も増やしていく可能性があるかどうか。
●多摩五大学の連合は既に成果が出てきている。多摩五大学は単位互換を行っているが,四大学連合は,将来的な編入学や共同の複合領域の教育研究を進めていこうとするもので,多摩五大学連合とはちょっと違った次元で考えている。
3月22日に本学と中央大学とで大学院レベルの協定の調印式が行われる。中央大学と東京都立大学が連携していることから,多摩地区の国公私のトライアングルということで面白い。さらに近隣のICU(国際基督教大学)との連携も考えていきたい。
〇四大学連合憲章の目的が「真の国際競争に耐え得る体制を確立することを基本的理念とし」ということは,本当にそういうものが基本的と言えるかどうか非常に心配だ。
●国際的に耐え得る実体を備えなければいけないが,それを目標にすることは,大学自身が指標を競い合うことになる危険もある。貴重なご指摘である。
〇最近,国立大学のラーニングシステムをどう見直すかが重要になってきている。四大学連合では,研究面・教育面で単位互換を超えて何ができるか,学生の側に立ったときのラーニングシステムをどうやっていけばいいのかを引き続き検討願いたい。
〇デュアルディグリーは非常にアイデアとして面白いが,ある大学が四大学連合に冷ややかであったりすると,他の大学が浮いてしまい,逆に不幸なことになるような気がする。きちんと対等な条件でやらないと多分つぶれてしまう。他大学との話し合い及び学内の合意形成での問題点と,それをどのように克服したかを伺いたい。
●既に本学を除く3大学でプランをかなり練っていることが分かり,本学としてこれを受けとめていく方向で進んできた。反対などかなり激しい議論もあったが全体としては賛成多数で,11月に学部教授会として参加を決めた。
本学を含めたプランを立てているところであり,今後3大学と交渉し,四大学連合の中に入っていけるように努力したいと考えている。
(2)大学改革の現状と自己点検について
*アジア・アフリカ言語文化研究所(以下「AA研究所」という)について
●AA研究所は非常に誇るべき成果を蓄積してきたが,設立から長い年月を経ており,国際社会や研究対象地域の大きな変動の中で,当初の設立目的と現状との間にかい離ができてきた。大学に附置しながら,同時に全国共同利用機関であるという,人文社会科学系では唯一の設置形態であり,国立民族学博物館などとの関連も出てくるので,ネイションワイドな視野で,石井米雄先生を長とする外部評価委員会に集中的に議論していただき,評価報告書を作成いただいた。
〇大学の附置施設の枠組みを離れ,独立した共同利用機関として新たな1歩を踏み出すべきである。相補的な関係を構築できる他の大学共同利用機関と機構を組むことも一つの可能性である。
〇アジア・アフリカ諸国に対する知識は日本の教育体系の中になかった。そういう中で国家的要請がAA研究所にはあり,現在,世界のトップクラスに伍した研究成果が出ている。日本の各地域研究所やAA研究所が持つこれだけのリソースをもう一度組み替えるという発想があってもいい。AA研究所と相補的な関係にある研究機関が全国にあるので,AA研究所だけが変わるという発想は無理がある。
〇全国的規模の大きな地域研究組織は,単一のものではなくてもいいが,全体として巨大な研究組織をつくるべきだ。
既存の組織というものは非常に保守的であるが,各大学から共通する地域研究機関を出して,それが大同団結して大きな世界研究所を樹立していくのが本筋だと思う。
*情報環境について
●「朝日新聞のランキング」や「リクルートの学生調査」で情報環境が一番劣悪な大学であるとされ,それがここ数年間続いていて深刻に受け止めていたが,現時点では学生当たりのパソコンの数が日本で一番多いというところまでこぎ着けた。
情報環境が整い,学生も積極的に利用してくれているし,教官も研究に生かしてくれている。今後は発信できる大学ということを重点的な使命として,何を生み出せるかということで取り組んでいるところである。
*図書館について
●図書館が整備されて,五十数万冊の図書が開架になり,情報関係の機材として228台のパソコンが入った。また,グループ学習室などができて,学生が生き生きと使うようになり、大変,いい雰囲気になってきた。利用者は1日に2600名ぐらいまでに上る。
今後は,発信する素材を整備するとともに,本学で作られたものを全国的なレベルにキャッチアップして発信していかなくてはならない。
*FDについて
〇まもなく大学評価・学位授与機構の動きも出てくるが,どういう評価がどこから出てきても,絶えずそれに応え得る積み上げを各大学は持たないといけないし、それは持っているものを発展させることにつながる。その意味でFDとの関係を是非お考えいただきたい。
*留学生について
〇かつての学生は留学生の面倒を非常によくみたが,最近の若者は日本人の学生の中だけでもあまり付き合いをしないという傾向にある。そういう若者の変化に伴って,留学生の対応システムも変えていかなければならないと痛感している。貴学ではその点で対応策があるのか伺いたい。
〇私どもの大学では,ビッグシスターという制度があり,留学生には全部日本人の学生を張り付けて,それで常時相談相手になる。個人によって,うまくいくところと,いかないところがあるが,お考えを伺いたい。
●本学では,今年度から留学生全部が卒業研究を作ることを必修とした。ゼミを単位に交流できるようになり,これが一番よい方法であると思う。もう一つはチューター制度で,今後,整備する宿舎は留学生と日本人の混住にする方向で考えていて,これも一つの拠点になると思う。さらに,同窓会の協力で集めていただいた募金で留学生のケアを行うことにしている。
*入試等について
○18歳人口の減少で,入学試験は大きな問題である。貴学では入学試験をどう展開していこうとしているか伺いたい。
●大学院では,既存のカリキュラムが十分な役割を果たしていないことを深く反省して,新しいカリキュラムを作り,三つのコースを立てて来年度の入試から開始したい。
一つ目は,国際機関や国際企業で働けるような国際協力コース。
二つ目は,同時通訳や翻訳などを柱とする国際コミュニケーションコース。
三つ目は,社会人を対象とする日本語教育及び英語教育のコース。
国際協力コースは,昨年から日本銀行金融研究所との連携講座を行っているが,今年は国際協力事業団と連携講座を行う。今後は,毎日新聞のアジア調査会やアジア経済研究所との連携の可能性を探りたい。
博士の学位授与率が低いことには反省しなくてはならない。指導教官はドクター号に対して必ずしも意識の変革ができていないし、文化系ではドクター号を持っている人を遇するという体制がないことから学生たちの取得意欲をそいでいる。しかし,大学院の発展を考えると現状に甘んじることはできないので,あらゆる手段を講じたい。
(3)大学の国際貢献について
●大学の国際貢献については,当面の課題として、次の点をあげた。1)我が国の大学の国際化・グローバル化を担うために,言語教育とくに英語教育と日本語教育の分野の積極的な推進をはかる。2)アジア諸言語の教育と地域研究を重点的に推進する。3)外国語(とくに英語)による授業を増やし、本学学生の外国語運用能力を高める。外国人教官数も,現状の15%から20%に高める。4)当面,全学生数の20%まで留学生比率を高め、本学のキャンパスが居ながらにして異文化交流の場になるように努力する。
委員の先生方のお知恵をいただいた上で学内討議にかけたい。
○「グローバル化」,「情報化」,「国際化」という言葉がよく出てくるが,アカデミック・インスティチューションの憲章や理念では,中身を詰めて使ってほしい。
〇大学の場合グローバル化とは、どういうことを考えて使っているのか知っておきたい。
●国際化とは,本来,外圧によって開くということであるが,今,日本に迫られているのは内なる国際化である。日本の大学は非常に閉鎖的であり,自分たち自身を開いていかなければならないという問題がある。また,従来のスティツ・トゥー・スティツ・リレイションズとしての国際関係では律しきれない社会がくるであろうから,21世紀には言語研究や言語教育の意味が非常に重要になる。そういう含みもあってグローバル化という言葉を使っている。
〇
私どもの大学でも国際性を非常に強調しているが、国際という場でキャリアを積んだり就職する人は少数である。貴学の場合は卒業生の活躍の場がどうなっているのか。常時国際的な活動を行わない学生に対し,この理念・目標・課題が適切であるかを伺いたい。●全員が国際次元で活躍するわけではなく,また,本学は26言語を教育・研究しているが,卒業生が26言語を使って仕事に就いているかということには疑問を持っている。
(4)その他
●百周年記念募金のおかげで,地下鉄本郷三丁目からすぐ近くにビルを一つご寄附いただき,本学のサテライトが確保できた。社会人を対象とした事業とか,いろいろな試みが出来ると思う。