古仏語及び中仏語の代名動詞について 横山 大

 

本稿では、古仏語及び中仏語の代名動詞について、現代語との比較を中心に述べてきた。中世フランス語の代名動詞には再帰・相互・受動・中動の4種類の用法があった。中動的用法とは主辞による事態への積極的参加を表わし、再帰代名詞を伴わない場合の動詞の意味と若干異なる用法である。古仏語や中仏語では、さまざまな動詞に比較的自由に再帰代名詞を伴うことによって、生産的に代名動詞が中動的用法として作られていった。また、受動的用法は非常に稀であった。

15世紀の文献 « Journal d’un bourgeois de Paris de 1405 à 1449 »を用いて、代名動詞を収集した。現代語では見つからないような代名動詞がいくつか見つかったり、動作主を伴った受動的用法を発見した。

最後に、中世フランス語の代名動詞は中動、すなわち、主辞による事態への積極的参加がそれぞれの用法に共通する特徴であるということを述べた。