接続法と直説法の使い分けについて
川俣幸彦
1.目的
名詞を限定する節においての、接続法と直説法が用いられる統辞的条件について、動詞の性質と話者の発話意図に注目して考察するうえでの、分析の方法についてBrigitte
Kamper-Manheの論文を参考にしてまとめる。
2.方法と対象
a)例文の整理
まずはじめに、統辞的観点および意味的観点から例文をわける。分別の項目としては、限定関係節・譲歩・非存在・最上級およびそれに類似する表現・le
fait queなど特定の言い回し、などがあげられる。
b)分析
a)で分類した項目ごとに、
1.接続法と直説法の置き換えが可能な文
2.接続法と直説法を置き換えた場合にどちらか一方が非文になる文
3.接続法か直説法どちらかの用法しか見当たらない文
4.接続法と直接法の区別が難しい文
にわけ、直説法と接続法を可能な限り最小の範囲内で対立させて、その統辞構造・意味構造について分析を行う。1.と2.のなかで類似するものについても関連づけ、接続法の使用が問題になっている動詞だけでなく、主動詞や挿入などについても対立させ、その意味の違いを分析する。3.については、例文の叙法を入れ替えた文を作成し、その可否をネイティヴチェックしてもらう。可能であれば、その条件と意味についてコメントしてもらう。4.については問題の動詞が接続法であるか直説法であるか、解釈不可能かについてネイティヴチェックする。
接続法と直説法が両方成立しているものについては、2つの文の意味の違いについてアンケートをとる。
3.Brigitte
Kamper-Manheの調査
1)
a) *J’aiune
maison qui soit jolie
b) Je
veux une maison quisoit jolie
2)
a) *Jevois
une maison qui ait des vlets rouges
b)
Je
cherche une maisonqui ait des volets rouges
3) a) *Jepossède
une voiture qui soit rapide
b) J’ai
besoin d’unevoiture qui soit rapide
4) a) *Ilexiste
une voiture qui ait de la reprise
b) Il
me faut une voiturequi ait de la reprise
5) a) *Ellesent
un parfum qui soit frais
b) Elle
réclame unparfum qui soit frais
a)
とb)の違いは主動詞の違いで、b)の主動詞は要求、要望のみをあらわして
いる。したがって、vouloir, chercher,
avoir besoin de, falloir, réclamerのあとの修飾節は接続法をとると言える。a)の動詞は願望をあらわすものではなく、知覚動詞であり、この場合は直接法のみ可能。
願望をあらわす動詞の目的語の修飾節が接続法と直接法のどちらをとるか
統辞を変えないで直接法と接続法を入れ替える
6) Je
veux une maison qui est jolie
7) Je
cherche une maison qui a des voletsrouges
8) J’ai
besoin d’une voiture qui est rapide
9) Il
me faut une voiture qui a de la reprise
10) Elle
réclame un parfum qui est frais
接続法使用の統辞的条件
直接法は接続法に置き換えられる。二つの違いについては主動詞には意志/願望という性質があり、接続法が義務的ではない用法も含め、ここでの選択は動機があるものである。
4.問題点
・アンケートをとる場合、データがわれた場合に結論を導き出すのが難しい。また、言語感覚の個人差が大きいと思われ、話者の主観を分析対象とする面をもつので、科学的に証明する事が難しい。
5.参考文献
Kampers-Manhe, Brigitte:L’oppositionsubjonctif/indicatif
dans les relatives.―Amsterdam,1991|BL
1991,8070|ZFSL 105/1,1995, 90 Gerhard Boysen.