外国語教育学会第4回大会
■プログラム
研究発表 (10:00〜12:00, 12:40〜13:25) 104教室
開会の辞 富盛伸夫(東京外国語大学教授、本学会副会長)
午前の部 (司会 萩野博子、田島英治、長谷川淳一、本田勝久)
10:00〜10:20 フランス語と英語の語彙の相関関係を生かした外国語指導
荻野博子(白百合女子大学他非常勤講師)
外国語でのコミュニケーションにおいては、情報を伝達する内容語の意味の把握と活用が大切であるが、フランス語と英語には、綴り、発音、意味が類似している数多くの同族語がある。そこで、二言語間の語彙の相関性を生かし、学習効率を高める外国語指導法を工夫し試みた。発表では、大学のフランス語を第一外国語として学習した学生を対象とした第二外国語の英語のクラスの授業で使用した英仏対照の教材と授業活動の例を提示する。
10:25〜10:45 バイリンガル教育の廃止をめぐる論争―
プロポジション227を中心として
田島英治(東京都立石神井高等学校)
米国、カリフォルニア州では1998年、6月、バイリンガル教育の廃止が、 住民投票プロポジション227により決定した。同国では移民の増加に伴い、英語の能力が限られた(Limited
English Proficiency「LEP」)子供たちの言語教育が問題となっていた。ここでは、バイリンガル教育についての効果など、その賛否を問う激しい論争がなされていた。本発表ではこの論争を中心に述べ、日本の学校における外国語教育についても少し言及したい。
10:50〜11:10 B中学英語における前置詞の指導
長谷川淳一(東京国際大学他非常勤講師)
前回発表の副詞に引き続き、前置詞を図を通してイメージ化することで、生徒にその前置詞の基本的な意味を把握させる指導法を提示する。それにより、生徒が検定教科書の中の前置詞のさまざまな使い方を理解し、他の前置詞の用法との比較ができるようになることを目指す。
11:15〜11:35 Cこれからの外国語教師を育てるために:
日本語教師教育における実践
臼杵美由紀(北陸大学)
教師主導の形態から学習者主体へ、教えることから学ぶことへと重点が移ってきている外国語教育の動きの中で、我々日本人教師は、過去の自分自身の外国語学習経験とどう向き合い、それをどう乗り越えるべきか。そして、これからの外国語教師をどう育てるべきか。発表者は、民間日本語養成講座の一科目である教授法授業を担当する機会を得た。本発表は、その授業において、受講生に、教師。学習者・観察者の3視点から授業を体験させるという試みを行った実践についての報告である。
11:40〜12:00 Dテレビ・新聞のカタカナ外国語分析
伊藤嘉一(東京学芸大学)・本田勝久(静岡大学)・
佐藤正俊(甲府第一高等学校)・藤沢由美子(青梅市立
第一中学校)・葉田野不二美(東京学芸大学大学院)
カタカナ外国語の氾濫が問題になっている。そこで1日のテレビ及び新聞に出てくるカタカナ外国語をすべて抽出し、その数、順位、外国語の種類と割合、ジャンル別(スポーツ欄等)の外国語の出現度などを算出し、現在のカタカナ外国語使用の実態を明確にする。そして日本におけるカタカナ外国語の扱い方、およびその活用法を考察する。
12:00〜12:40 昼食(理事の方は昼食をとりながら理事会を行います)
午後の部 (司会 山内豊、黒澤直俊)
12:40〜13:00 E外国語音声表記のための新カナ開発
齋藤厚見(サイトーメサド創設者)
コトバの中核である発音を視覚言語人と呼ばれる日本語人にいかに示しえるかが英語・外国語教育の核心である。本方法は問題の所在を、500音以上もの日本語発音を最大で136音の平安(時代に完成した、現行の)カナで認識し、その平安カナで350〜400音の外国語発音を理解しようとしている日本語人の現実にみつけ、472音の新カナ日本語発音表記体系により解消しようとする試みである。
13:05〜13:25 FWebインターフェイスを活用した外国語練習問題の可能性
富盛伸夫(東京外国語大学)・吉田一彦(東京外国語大学大学院)
高性能な情報機器が容易に利用できる現代の環境を活用するべく、教材作成ツールを開発しつつある。本発表では、1)オペレーションシステム(OS)からの自由度、2)ニーズに合わせた編集の可能性、3)多様なマルチメディアコンテンツの利用可能性など、外国語教育改善に役立て得るWWWブラウザ・インターフェイスの特徴を紹介し、ツールを使用して作成した具体例となる練習問題のデモンストレーションを行う。
特別企画 21世紀における外国語教育(13:40〜17:20) 115教室
学長挨拶 中嶋嶺雄(東京外国語大学学長)(13:40〜14:10)
第1部 基調講演 21世紀における外国語教育のヴィジョン (14:10〜14:50)
外国語教育学会会長 伊藤嘉一(東京学芸大学教授)
2002年より小学校への外国語教育の導入が可能となり、学校での外国語教育が大きく変わろうとしている。しかし本質的な外国語教育への施策は十分なされていない。今回の講演では、「21世紀の外国語教育はどうあるべきか」という視点から、その考え方、理念、理想像などを理論的に、体系的に話したい。
第2部 特別講演 グローバル化と情報化社会における外国語教育―言語コミュニケーション論の観点より― (15:00〜15:40)
鈴木 佑治(慶応義塾大学SFC教授)
情報テクノロジーによるニューメディアの発展は、国民国家の枠を越えたグローバルな情報社会を築きつつある。インフラストラクチャーが整い、書物、新聞、テレビ、ラジオ以外に、インターネットなどのデジタル技術を通して、個人が自由に情報を得たり発信することができるようになった。ニューメディアは「知」の変革をもたらし、学問分野を再編成し、教育を知識伝授型から知識創造型に変えるであろう。言語はあまたあるコミュニケーションの活動の一部であり、言語=コミュニケーションではない。オールドメディアは活字に依存し、他者が書いたものを読んで習うという知識伝授型の教育に帰結し、その過程で書き言葉を偏重する文化を育てた。話し言葉でさえ書き言葉に規制され、書くように話し、読むように聞くことが珍重され、学問分野では、書き言葉で表現できない事象は敬遠されてきたように思う。書き言葉のないサブカルチャーは、学問という「聖域」では語られず、多くの貴重な知が絶滅の危機にさらされている。数年前に高校の英語教科に導入されたた「オーラル・コミュニケーション」は、そのような活字偏重への反発であるが、活字から音声に移行しただけで、言語=コミュニケーションの図式はそのままであり、話し言葉で表現できないものを除外する。オールドメディアの内紛であって革新ではない。
ニューメディアはマルチメディアであり、音声や文字に加えて映像による伝達を可能にし、いつでもどこでも受信し発信することを可能にする。映像を駆使することにより、筆舌に尽くしがたい多くの事象が表現可能になる。オールドメディアにおける言語は、言語で描き言語で説明するメタ言語的機能を謳歌したが、ニューメディアによる言語は、マルチメディアで描かれるもののどこを強調したいかを指示する、状況アクセント的、いわば、supra-mediaの機能をもつ。私達の内部で派生する意味の世界はもともとマルチメディアであるが、その意味の世界を言語で抽象化することなく即物的になり、例えば、主語や目的語は視覚的非言語で表現され、動詞のみが言語で表現されるという事態は日常茶飯事になる。個人差は拡大し、社会全体に通ずるラングは後退し、パロールが勢いづく。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の英語の授業は、ニューメディアへの挑戦である。言語にのみ依存せず、マルチメディアを駆使して学生個人のメッセージを発信することを主眼とする。発信したいという願望は、他が発信する情報への関心を生む。メッセージとは関心であり、関心は鋭い洞察力と創造性を育む。映像、音声、活字等々を組み合わせてどのようにメッセージを伝達するか、自らが、企画編集し、アドバイザーとしての教員や他の学生に意見を求める。英語の授業では英語で行い、言語コミュニケーション論の授業では日本語で行うだけの違いである。リサーチをして内容を深めると、押さえがたいメッセージが湧出される。未「知」は既「知」と違い、教室空間や教科書を越えたグローバルな時空に存在する。
1990年に創設されるや、SFCにはインターネットが敷かれ、教職員も学生も他の世界と情報を交換し、自ずとグローバル化に足を踏み入れた。政治、経済、文学、テクノロジー、スポーツ、映画、音楽、ゲーム等など、夥しい量の情報を受信し発信している。いかなるテーマであれ、追求すれば文化の価値観に行き着く、そこに比較が生まれディベートが始まる。ゲームに関心を持つ学生と国際紛争に関心を持つ学生が、「戦争におけるゲーム性」について映像を交えて英語で発表し討論する。英語の授業は、グローバルに情報を交換する「場」の延長であり、過去10年間多くの成果を産んだ。筆者は、千葉商科大学の政策情報学部でも同じことを始め、学生達はすばらしい成果が上げている。また、藤沢市の公立中学校の数名の先生方も発信型の授業を始めた。分けても3名の生徒による、壊れやすい友情を映画タイタニックななぞらえて製作した自作自演の英語劇は、英語もさることながらカメラワークの素晴らしさにプロの報道関係者をもうならせた。現在、日本語教育のインターンとして英国で活躍する筆者の学生が中心になり、これら藤沢市の中学生と英国の中学生の交流ネットワークを立ち上げつつある。
外国語教育にAV機器やコンピュータを利用しようとする試みは,これまで数多くなされてきた。これらの教育は,視聴覚教育やCAI(Computer Assisted Instruction),CALL(Computer
Assisted Language Learning)などと呼ばれ,一定程度利用されてきたが,広範なカリキュラムへの組み込みなど,本格的な利用にはいたらなかった。
こうした状況に,近年急激な変化が訪れてきている。特に,IT革命と呼ばれるものが教育の現場に変革を迫りつつある。
ここでは,こうした変化を情報技術分野の中での教育技術の位置付け,教材作成面での変化,学習者環境の変化,教育制度の中での変化を通して,外国語教育におけるIT活用の今後について検討してみよう。そして,最後の東京外国語大学での情報基盤整備の方向性について述べよう。
従来,
CAIやCALLは,情報技術分野では基幹技術としては位置付けられず,末端応用分野としてだけ位置付けられてきた。しかし,こうした位置付けに大きな変化が始まっている。
変化の発端は,インターネットとその間連技術の進歩による地球規模での対話型マルチメディア環境の出現である。
インターネットの急速な普及とe-businessとも呼ばれるインターネットの商用利用の急速な拡大は,技術開発を促進させるとともに,情報ネットワーク基盤の充実を実現した。そして,この基盤上にWBT(Web Based Training)と呼ばれる新しい教育の形態を出現させた。WBTでは,WWWを基盤とし,WWW上で可能となったさまざまなマルチメディア応用を取り込み,対話型の遠隔教育を実現する。
また,WBTは,言語教育で必要とされる個別学習者への対応や音声,動画を活用することが可能であり,電子メールや掲示板,会議室の利用によって,効率的な対話が可能となる。この面で,WBTの外国語教育への適用には大きな可能性があると思われる。
WBTを用いたインターネット教育は,IBMなどの主要企業が採用しただけではなく,スタンフォード大学などの主要な大学でも本格利用が始まり,大学や大学院レベルでの実際の教育への利用が急速に拡大しつつある。また,大学審議会の答申の中でインターネットを利用した教育を正式単位として認めることが謳われている。
こうした変化に対応して,日本の電子情報通信学会にあたるアメリカのIEEEや国際標準化機構(ISO)で情報技術の標準化の一分野として,教育技術の標準化が開始された。このことは,教育技術が末端応用分野ではなく,情報技術の標準化が必要とされるほど重要な基幹分野として位置付けられたことを意味する。
前述のようにインターネットを中心とするIT革命は,教育面ではWBTという技術を生み出した。一方,教材作成面でも大きな変化が生まれている。
すなわち,インターネットでのWWWでは,世界中の情報が即時に入手可能であり,結果として,外国語教育に利用可能な豊富な素材がデスクトップ上に即座に呼び出すことが可能となった。こうした外国語素材には,政治や経済情報だけではなく,多くの文学作品や古典も存在する。
また,インターネットテレビ局やインターネットラジオ局を通じて,生でリアルタイムの外国語素材の利用も可能となった。
こうしたことから,従来とは比べ物にならないほど容易に大量の情報を入手し,教材を簡単に作成することが可能となった。
インターネットと携帯電話の技術革新によって,Iモードなどの携帯電話からインターネットにアクセスすることが可能となっている。また,WBT環境は,距離や時間の制約から学習者を解放し,いつでもどこでも学習が可能な環境が整いつつある。
社会的にも労働者の能力と市場で必要とされる労働者の能力のミスマッチによる問題が指摘されているが,就労中にもリカレント教育を実施することが要請されており,この点でも距離や時間の制約がないWBTは,有効であると思われる。
同時に,インターネット教育の普及は,大学教育を国際競争の場にさらし,大学教育の国際競争力を問われることともなっている。
東京外国語大学でも全国の大学の中でももっとも先端的で高度な情報処理センター設備の導入を2001年に行ったが,設備導入だけではなく,WBTを可能とするソフトウェア環境及びサービス環境の確立を目指している。今後は,こうした情報基盤を実際の教育の現場での利用へと転換させていくことが必要である。
英語教育におけるインターネットの役割と効果 東京国際大学 山内 豊
インターネットの2つの役割
インターネットで使われる言語の8割以上は英語なので、教育面から,インターネットは「生きた英語教材の宝庫」と言える。また,インターネットは、世界中のコンピュータを結んで情報をやりとりする統合的な通信網なので,「英語による国際的なコミュニケーションの場を提供する基盤」とも言える。インターネットを英語教育に効果的に活用すれば、学習者の学習意欲や英語力を高める指導ができる。
「生きた英語教材の宝庫」としての活用
インターネット上には、『イソップ物語』、『不思議な国のアリス』、『シャーロック・ホームズの冒険』をはじめとする古典的名作や雑誌が、電子図書館の中に保存されている。各々の学習者の興味・関心に応じて、これらの作品をインターネットから無料で転送・入手し、副読本的として使用できる。教師ではなく、学習者自身が選択した作品を読めるので、学習者の読む意欲が高まり、効果的に多読指導を実施できる。
ホームページ(ウエッブページ)は、インターネット上の情報源であり、グラフィックや写真、さらには音声や音楽などを取り入れ、視覚的にも聴覚的にも魅力的なものになっている。White
HouseやNASAなど、さまざまな有名な機関が開設している。
これらに接続して、英語の説明文を読ませたり、インターネット版のThe
New York TimesやThe
Japan Timesなどの電子英字新聞を読ませて、記事の概要・要点をまとめる学習(skimming)を行わせることができる。
ホームページは音声、音楽も扱えるので、音声ニュースを提供するVOA(Voice
of America)やABCニュースや、スターたちのインタビューを聞けるHollywoodのページ、英語の歌が聞けるページなどに接続して、自然の速さで話される英語の聞き取り練習を行える。
インターネットの検索機能を使うと、学習者に「現在の環境破壊の実態」とか「自分の好きな映画(俳優)」というような課題を与えて、それに関連した情報を検索・入手しながら問題解決していく「課題学習(調べ学習)」を英語で行わせることができる。学習者は検索作業を通して、情報活用能力を磨くとともに、多くのホームページを渡っていき、多量の英語の情報の中から必要な情報に着目して理解していく速読(scanning)技能も高められる。
「国際的なコミュニケーションの場」としての活用
コンピュータを介して、世界中の人々とやりとりできる電子メール(E-mail)やメーリングリストを使って、国際文通を通して、「読み・書く」技能を高められる。現実の文通相手がいるため、本来のコミュニケーションが実現される。相手から手紙の返事がもらえるという前提で作文するので、学習者の書く意欲も高められる。
インターネット上に学校のホームページを開き、学校紹介、学校行事紹介、クラブ紹介、自己紹介などを学習者に英語で書かせ、世界に向けて情報発信させることができる。適宜、写真やイラストや音楽や学習者自身の音声なども組合わせると、魅力的なホームページが出来上がる。先の課題学習で調べた結果を英文レポートにまとめ、自分の学校のホームページに掲載することもできる。相手校がある場合、そのレポートに対する意見や感想を電子メールで交換させ、学習者間の情報交換の場として活かすこともできる。
電子メールなどによる意見交換で、話題が盛り上がったところで、国際テレビ会議をインターネット上で開くこともできる。これは、最大世界中8カ所から会議に参加できる。文化が異なり、さまざまな意見をもつ海外の人々とリアルタイムで直接話し合えるので、「聞く・話す」技能を高められるだけでなく、学習者の国際理解・異文化理解を深めることも期待できる。
テレビ会議システムを使うと、1つの学校の授業を他の学校に中継して合同授業を実施できる。筆者の前任校である東京学芸大学附属高校では、国立天文台との遠隔授業やAmerican
School In Japanとの合同ホームルームなどを実践してきた。大学レベルでは、大学の授業をインターネット上で公開し、ある大学の授業を他の大学の学生が遠隔参加し、質疑応答も行えるプロジェクトが進められている。オンラインでの授業参加、課題提出、試験実施、単位認定などができる仮想大学(Virtual
University)もアメリカを中心に実現されている。
英語教育におけるマルチメディア活用の効果
マルチメディアを英語教育に活用すると,生きた英語の教材の宝庫と国際的なコミュニケーションの場が提供される。この結果,次のような教育的効果が生まれる。
最新ニュースや洋画やヒット・ソングなどの学習者の興味・関心の高いauthenticな英語を教材にできるために,学習意欲を高められる。電子辞書や自動的に英文を翻訳してくれるホームページを利用したり,問題に解答すると自動的に採点してフィードバックしてくれるホームページを利用することで,個々の学習者の理解度や英語力に合わせたオンライン学習が展開できる。文法訳読や和文英訳(writing)に代表されるような「質」的側面重視の教育から,インターネットを活用することにより,速読や多読,内容中心の作文(composition)のような「量」的側面にも対応できる語学教育が可能となる。
このように,マルチメディアの英語教育への導入は,従来の知識偏重の英語教育から、国際理解も視野に入れたコミュニケーション重視のダイナミックな教育の実現へ向けて限りない可能性をもっていると考えられる。
【参考文献】山内 豊.
(1996). 『インターネットを活用した英語授業』東京:
NTT出版.
中等教育におけるフランス語について 白百合学園中学高等学校 水野 美恵子
1.現状
(1)
概観としては、フランス語については第2外国語としては像かしているが、第1外国語としては減少傾向。(参照「日本の中等教育における英語以外の外国語教育」臼山俊信編:東京大学大学院人文社会系研究科 米重文樹研究室 平成11年9月)
(2)
白百合学園中学高校の場合は、設立母体がフランスの修道会であり1881年の学校設立以来フランス語教育が行われている。又国際的視野を持った人間を育成するという教育方針を持つことから、生徒全員が英語,フランス語の2カ国語を第1,第2外国語として履修している。
*教員数:専任3名 非常勤講師5名(内フランス人講師2名)
*生徒数(第1フランス語):中1〜高3まで各学年平均30名前後(全て2クラス編成)
(第2フランス語):中3:183名(4クラス編成) 高1:45名(2クラス編成)
*週当り時間数(第1フランス語):中1:5h 中2:5h 中3:5h 高1:6h
高2:4h+2h(選択)高3:5h+4h(選択)
(第2フランス語):中3:1h 高1:2h(選択)
・第1フランス語の生徒のためには第2英語として
中3:1h 高1:2h 高2:1hが必修選択
<第1フランス語について>
* 1外国語の選択については,中学入学時までに第1外国語選択を決定してもらう。(参照「第1外国フランス語のご案内」白百合学園フランス語科作成)
*
教材については、中1〜高1まで“Diabolo Menthe”(Hachette社)使用(日本人向けに、白百合学園仏語科教員が手作りした、オーラルを中心とした補助教材)を使用し、中学校から高校1年まではフランス語に親しみながら基礎を学ばせる方針を採っている。(参照「中等教育における第1外国語としてのフランス語教育」水野美恵子・伊賀山かおる・内藤真千子:フランス語教育25 日本フランス語教育学会1996-1997) その後高校2,3年では講読や作文が授業の中心になり、大学入試を視野に入れた教育を行っている。
*
フランス語検定試験については、多くの生徒が高1までに3級を取得している。最近は高2、高3で2級を取得する者も増加している。
*
様々な発表の場
1)学園祭ではフランス語選択者プログラムがあり、中1から高3までの全員が参加している。
2)中高フランス語教育連絡協議会が毎年6月末に催すフランス語フェスティバルで、高1生が仏語劇、高2生がスピーチを発表している。
3)クラブ活動の中にCCF(フランス文化部)というクラブがあり、年2回のフランス語劇公演を中心に活動している。
4)毎火曜の朝礼で、お祈り、聖書朗読、聖歌をフランス語で行っている。
*進学状況は毎年100%近い。私立理系についてはフランス語で受験できる大学は少ないが、近年センター試験で受験可能な大学も増えている。
1.
問題点としては大学受験に関して、英語受験者に比べて受験できる大学が限られていること。又、フランス語受験可能な大学でも突然フランス語入試がなくなることがある。
2.
将来的には英語に加えてもうひとつ別の外国語を習得することによって、より広い世界を知ることができるということを強調したい。世界語としてのフランス語という考え方が重要になる。
東京外国語大学における日本人学生・留学生間の相互活性化 東京外国語大学 望月 圭子
1.急激な留学生の増加:
本学の留学生数は、平成8年までは、日本語学科学部生(一学年30名)及び大学院の留学生等が大半を占め、300名前後であった。しかし、平成8年を境として、毎年60名ほどの増加を重ね、平成12年5月には612名、総学生数に占める留学生の割合としては、17%と日本一高い比率となった。
留学生急増の要因は、文部科学省が推進している短期留学プログラム(学部短期留学生のための、30単位程度取得可能な、英語による、一年間のプログラム)であるInternational
Student Exchange Program of Tokyo University of Foreign Studies略称ISEPTUFSの設置及び大学院留学生の増加にある。
2.日本人学生と留学生の共学:
短期留学生の増大にともない、大学が直面する問題は、「いかに日本人と留学生の共学をはかるか」という点である。東外大における従来の留学生は、日本語学科留学生がほとんどを占めていた。彼らの日本語能力は大変高く、日本語能力試験1級が実質上入学の最低条件で、さらに日本語学科独自に作成した高い水準の日本語試験もクリアしなければならない。結果として、御三家といわれる中国、韓国、台湾という漢字文化圏の留学生が多数を占めていた。こうした、日本語能力も高い、漢字文化圏からの留学生の場合、日本人学生と一緒に授業を受けること、いわゆる「日外共学」はスムーズであった。しかし、短期留学生の場合、日本語既習歴ゼロから学習歴1、2年の学生や、また欧米の学生も多いことから、日本語による「日外共学」は望めなくなった。そこで、新たな試みとして生まれたのが、ISEPTUFSの英語によるプログラムに、日本人学生も受け入れ、卒業単位として認める、という新しいタイプの共学である。
例えば、私の学部の講義Comparative
Linguistics and Pedagogy of Language Teachingは、ISEPTUFSのプログラムの一部でもあるために、平成10年度からは、英語による授業となった。テキストは、An
Introduction to Japanese Linguistics(1996,Tsujimura,N.
Blackwell)という英文書を用いているが、配布するハンドアウトは、振り仮名付の日本語と英語の二言語使用である。このハンドアウトは、日本人学生にも留学生にも、好評である。
3.日本人学生と学生の相互活性化
英語を共通言語とした日外共学において、歴然とする対比は、留学生は活発な発言、質問をするのに対して、日本人学生は、こちらが個人的に指名しても、下を向いて沈黙したままであることが多い、という対比である。留学生といっても、英語圏のイギリス・カナダ・ニュージーランド・香港・シンガポール・マレーシア等の学生もいるが、中国・韓国・台湾・タイ等の英語を母語としない留学生でも、英語でものおじせずに発言する。
高い水準で英語の入学試験をクリアしてきているはずの東外大生が、授業では、英語ではなかなか発言しないのである。一方、学期末試験では、彼らの書く英語の答案はかなり高い水準にある。
ここで、重要視されなければならないのは、日本人学生の英語による発信力の養成である。ISEPTUFSの授業は、平成13年度から日本語の授業を除き、日本人学生にも開放され卒業単位として認められるようになるが、これは、日本人学生の英語による発信力養成、短期留学生との交流に効果的である。
また、課外授業としても、英語補講を企画し、英語による発信力養成を試みている。これは、主に英語母語話者である留学生を講師として、英会話中心の補講を行うものである。平成12年度は、毎週水曜日午後に2コマ(1コマ90分)ずつ、3名の留学生がレベル別に英語補講を行った。春季休暇中は、14日間にわたり、TOEFL/IELTS講座を行った。
英語母語話者留学生の活用は、大学院生の場合、英語補講のみならず、正規の授業のTeaching
Assistantとして採用することによっても大きな効果が得られる。例えば、日本語学科日本人学生1年生用の外書講読という私の授業では、
オーストラリアからの博士後期課程学生にTAを依頼している。特に好評なのが、英文で書かれた学生のレポートの英語表現を添削してもらい、学生に返却している点である。
留学生が一番望むことは、「日本人との交流を深めたい」の一言につきる。
一方、26専攻語をかかえる東外大の日本人学生の希望は、「専攻する言語を母語として話す留学生と交流したい」ということである。個人レベルで言語交換も行われているが、大学としては、言語交換を紹介、支援する組織が必要である。こんなに留学生がいるのに、「どうやって留学生と友達になったらよいかわからない」という日本人学生が多い。新たに、国際交流センターのような組織を作り、急増した50もの海外の交流大学との交換留学に関わるサービスや、東外大における言語交換・国際交流の支援を行うことの必要性を痛感する。
講演とシンポジウムをふりかえって 東京外国語大学 川口 裕司
シンポジウムを企画した側としては、当初、このシンポジウムの中に以下の三つの観点が反映されることを期待していた。第一に「情報化社会における外国語教育」、第二に「大学の外国語教育と中高の外国語教育の連関性」、そして最後は「外国語としての日本語」である。
情報化が外国語教育に与えた影響は大きいが、なかでも注目すべきは、情報ツールの進歩とともに旧来の「学ぶ側vs教える側」という構図が変化したことである。文法や訳読中心の外国語教育は、すでにあらゆる教育レベルにおいて、言語伝達を重視した情報交換型の外国語教育へと移行している。新しい構図は、今や、「話し手vs聞き手」なのであり、学ぶ側も教える側も双方向的役割を演じることになる。こうしたタイプの外国語学習では、言語の複雑な文法規則を学び、テクストを日本語として理解する以上に、学ぶ側には与えられた状況下で外国語を使って何ができるのか、すなわち外国語を用いた状況説明能力や問題解決能力が試されることになる。鈴木佑治氏、芝野耕司氏、山内豊氏の提言はこの点で非常に興味深かった。外語大も徐々に情報環境が整いつつあるが、情報環境を生かした教育改善への道程はいまだ遠く、富盛伸夫氏はそうした変革期にある大学の外国語教育の現状を鋭く批判した。
ところで、上述の外国語教育の質的変化は中高の教育にも、すでに大きな影響を与えつつある。双方向型や情報交換型の教育にはメリットが多々ある。実用性に優れ、レベル化が容易であり、年齢に応じたメニューを提供できる。なにより双方向型がうまく機能すれば、学ぶ側にも積極的な参加意識が生まれてくることは教育上きわめて重要である。
伊藤嘉一氏が講演で述べられた「英語は高校までで完成したい」という考えは、学ぶ側の能力に応じた適正な到達度が設定可能であるならば、実現不可能ではないように思えた。他方、水野美恵子氏の報告から明らかなように、中高教育における英語以外の外国語教育はまったく楽観できる状況にない。来年度以降、本当に高校における外国語教育は多様化の道を歩み始めるのであろうか?
私たちはこれまで外国語教育を特別視し、母語との距離を置いた外国語教育に終始してきたような気がする。確かに、日本語と構造が大きく異なる言語を学んでいたせいもあるのだろうが、「外国語としての日本語」という観点は、現状の外国語教育において、ほぼ欠落していると言えるのではないか。外国語教育と母語の関連性、それは本学会顧問の千野栄一氏が常に指摘してきたことでもある。望月圭子氏からは東京外国語大学における留学生教育の現状について報告があったが、学ぶ側が母語と外国語を等距離に置けるような外国語教育の実現に向け、留学生日本語教育に携わる方々の視座は、今後、ますます重要になるに違いない。
最後になるが、一つのシンポジウムの中で、このような多様な視点を一度に扱おうとしたのは少々乱暴であったかもしれない。おかげで討論の時間もとることができず、聴衆の方々はさぞ残念に思われたことであろう。この場をお借りしてお詫びするとともに、これに懲りずに今後とも学会のシンポジウムに足を運んでいただけるよう切にお願いしたい。
17:30〜17:40 総会
閉会の辞 伊藤嘉一(東京学芸大学教授、本学会会長)
18:00〜20:00 懇親会