外国語教育学会 (JAFLE)
2012年度 シンポジウム
第2言語教育における言語規範
What's New
2012.11.12  HP開設
2013.2.26  内容追加
日時 2013年3月2日 (土) 14:00-18:00
 東京外国語大学事務棟 2F 大会議室

参加費 無料(会員、学生) 1000円(一般)
場所 東京外国語大学

教育対象言語の変異・多様性の重要性を背景として、教室で、ある変種、あるいは擬似的規範を教えることが問題になる。本シンポジウムでは、英語、ポルトガル語、ベトナム語、インドネシア語、日本語について、それぞれの言語的多様性を解説し、各言語において教育対象となる言語(変種)に注目しつつ、実際の言語教育がどのように行われているかを報告する。最後に報告内容について自由討論を行う。
14:00-14:10  開会の辞
 
司会: 中島 裕昭 (東京学芸大学教授)

14:10-14:40
 英語教育における言語規範
   吉冨 朝子 (東京外国語大学大学院教授)

グローバル化が進む現在、コミュニケーションのツールとして、共通語としての英語の重要性は高まっている。国際社会で交渉していくために目指すべき英語能力の規範を、World Englishesの視点から捉え、日本のような外国語学習環境においては、指導上の模範(model)・母語話者標準(norm)・学習目標(goal)を区別して考えるべきであることを提言する。英語教育現場・教材・入試の実情を踏まえ、言語理解と産出で目標とすべき「規範」が異なることについても述べる。
14:40-15:10
 スペイン語教育における言語規範
   川上 茂信 (東京外国語大学大学院准教授)

スペイン語は、現在話者人口が4億5000万人を超えると言われ、20カ国の公用語となっている。当然、地域差による多くの変種が存在するが、規範という観点からは、その差は比較的小さいといえる。伝統的には、スペインのスペイン語に対して中南米のスペイン語を対比させることが多いが、もちろん後者が一様なわけではない。
スペイン語の規範の維持に携わっているのはスペイン王立アカデミーと各国の言語アカデミーで、20世紀後半以降、中南米の諸変種を規範として認める傾向が強まり、2009年に出版された文法書では、規範の複中心性が明記された。
日本においても、スペインと中南米の対比が意識されてきたが、中南米の変種に特化した教材はまれで、スペインの変種をベースに中南米にも配慮するというものが多い。
15:10-15:40
 ベトナム語教育における言語規範
   川口 健一 (東京外国語大学大学院教授)

ベトナム語は全人口の9割近く(約7,130万人、2005年)を占めるキン族(ベト族)の言葉であり、事実上公用語として機能しているが、法的な規定はない。ベトナム語は大きく3つの方言区域に分けられ、北部方言が書記言語として支配的であるが、話し言葉としての標準語は存在しない。
日本では一昔前に比べ、ベトナムへの関心が高まり、大学などの公的教育機関に加え、民間の語学学校におけるベトナム語学習者の増加が見られる。
ベトナムの中等教育におけるベトナム語文法教育を視野に入れながら、日本におけるベトナム語教育の実情を報告する。

     休憩
16:00-16:30
 インドネシア語教育における言語規範
   降幡 正志 (東京外国語大学大学院准教授)

インドネシアでは、憲法においてインドネシア語が国語と定められており、公用語として国内全域で用いられる。いわば国定の文法書や辞書を整備するなど規範的なインドネシア語の整備がなされているが、その一方で口語体や地方語の影響など、規範とはそぐわない言語現実が少なからず見られる。報告者はいわゆる規範的なインドネシア語を中心に教えつつ、しばしば口語体についても言及しているが、本報告ではその必要性や問題点について考える。
16:30-17:00
 日本語教育における言語規範
   阿部 新 (名古屋外国語大学准教授)

日本国内外の日本語教育の現状を見ると、特に国外の日本語学習者の学習目的はその半数以上がアニメやマンガをより知るために日本語を学習しているということが明らかになっている。そのような学習者は教科書の規範的な日本語だけではなく,アニメやマンガの日本語に多く接し、その理解を望んでいるということになる。
アニメやマンガのキャラクターが使うことばは「役割語」と呼ばれて研究が行われている。「役割語」とはどのようなものか、どのように日本語教育の中に取り込まれているのか、といったことを紹介し、「役割語」と対比させると、規範としての「標準語」はどのようなものと捉えられるのか、「規範」とはどのようなものなのか、考えたい。
17:00-17:50
 自由討論 
17:50-18:00  閉会の辞


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