外国語教育学会 (JAFLE)
第22回研究報告大会

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研究報告大会について 10/1
プログラム暫定版 11/1
プログラム確定版 12/7

第22回大会は無事終了しました。本年度は延べ72名の参加者があり、 有意義な発表と活発な議論がなされました。

日時  2018年12月15日(土)・16(日)
場所  東京外国語大学 講義棟 226教室、本部事務棟 2F 大会議室・中会議室

研究発表者の留意事項

・発表者は年度会費を納入していることが条件になります。
・以下の機器が利用可能です。PC (Windows), プロジェクター, マイク。
・発表者はハンドアウト40部を持参ください。
・制限時間の30分(発表+質疑応答)を厳守ください。
・発表者はできる限り他の発表者の報告を聞いてください。

お知らせ

受付では会費の徴収を行いません。会費はあらかじめ郵便局で振込ください。

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プログラム(予定)

大会第1日 12月15日(土)
会場 東京外国語大学 
研究講義棟  226室

会場 226室  
8:50 開会の辞
 
午前の部
タイトル 発表内容
  司会 未定  
 9:30-10:00 マレー語学習者を対象にした読解学習支援システムの開発について
野元 裕樹(東京外国語大学)
川村 よし子(東京国際大学)
本発表ではマレー語学習のためのオンライン読解支援システムの開発について報告する。このシステムは日本語読解支援システム「リーディング・チュウ太」に準拠し、入力文中の語の辞書引きを自動で行う。以下の工夫をした。①マレー語学習で鍵となる接辞と語根の切り分けを自動で行う。②語義に加え、語根も明示する。③辞書を簡便に更新できる機能を備える。学習者のフィードバックをもとに辞書を随時更新し、新聞記事では9割以上のカバー率となった。
10:00-10:30 アラビア文字の誤用(誤形)分析、類型化と指導法
長渡 陽一(東京外国語大学特別研究員)
外国語教育、第二言語習得研究の中で、文字習得の研究はあまり進んでいない。本発表では、文字習得の領域の研究の第一歩として、これまでアラビア語の授業で見られた学習者のアラビア文字について、その特徴や誤用(誤形)の分析を通して学習者の文字認識を推定し、誤形の類型化を試みる。各文字の形が持つ弁別特徴や“らしさ”との違い、字形への母語(母字)干渉、文字と音韻との対応関係の誤解などを観察し、それらの違いを踏まえた指導法の改善を考える。
10:30-11:00 韓国語教育用の語彙検索システムの開発
YI Yeong-il(東京大学大学院人文社会系研究科)
本発表では、発表者が作成し、オンラインで利用可能な韓国語教育用の語彙検索システムを取り上げる。教育への活用を考慮する場合、語彙項目から語彙情報を取得するだけでなく、語彙情報から語彙項目を絞り込む機能も必要となるが、従来の学習者向けの語彙目録やWeb辞書では対応が困難だった。このような「教授者の検索需要」も満たすように開発されたのが本システムであり、検索の実演を交えながらその設計および特徴について述べる。
11:00-11:30 日本語学習者のアクセント句形成の特徴ー中国語母語話者の場合ー
布村 猛(東京外国語大学博士後期課程)
本発表の目的は日本語学習者の韻律特徴を句毎のピッチレンジとディフレージングの生起率の2つの観点から明らかにした上で母語話者と比較することである。ディフレージングの生起率が母語話者の生起率と近くなるほど、ピッチレンジの値も母語話者に近づくことを指摘し、適切な区切りを意識して発話することが日本語母語話者らしい発話につながることを教育への示唆として提示する。
11:30-12:00 タイにおける「人称詞/呼びかけ表現」に関するよう使用実態調査
スニサー ウィッタヤーパンヤーノン(齋藤)(東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所)
「人称詞/呼びかけ表現」は、CEFR では位置づけられていないものの、人間関係が表れるという点から、アジア諸言語の教育では必要不可欠な項目であるとともに、外国語学習だけでなく、母語話者同士の円滑なコミュニケーションのためにも重要である。今回、タイ語母国語話者約500名を対象に、書面及び面談を通して、地域、年齢、職業、性別、コミュニケーション対象及び場面ごとの使用実態を調査し、その結果を報告するもの。
  休憩昼食(12:00~13:00)
理事会 語学研究所(419号室)
 
午後の部 タイトル 発表内容
  司会 未定  
13:00-13:30 ベトナム語北部方言を母語とする日本語学習者による特殊拍をともなうヤ・ザ・ジャ3音の知覚状況
佐藤 桐子(首都大学東京大学院博士後期課程)
ベトナム人学習者はヤ・ザ・ジャ行音の知覚と産出が困難とされているが、音環境を統制した研究は少ない。そこで本研究では特殊拍をともなうヤ・ザ・ジャの3音の知覚についてベトナム語北部方言話者16名に知覚実験を行った。その結果、アクセント型(頭高型・平板型)は知覚に影響しないこと、ヤでは長音が後続する場合、ザでは3つの特殊拍が後続する場合、ジャは長音と撥音が先行する場合に知覚が容易になることが示唆された。
13:30-14:00

日本語を母語とするトルコ語学習者におけるr音について
川口 裕司(東京外国語大学)

共和国トルコ語において、r音は比較的変異の多い音として知られているが、日本語を母語とする学習者がこの音をどのように習得しているかについては、これまで全く研究がなされていない。本研究では、留学経験者と未経験者の大学2・3年生を被験者として、彼らに単語の朗読と繰り返しの2つのタスクを課し、学習者のr音を発音評価し、日本人母語話者におけるr音の変異とその習得過程について考察する。
14:00-14:30 母音の緊張性の可視化と発音教育における定量的評価の試み
石崎 達也(東北大学大学院文学研究科博士課程)
母音の緊張性については、その定義は明確となっていない。例えば、英語母音/iː/と/ɪ/はそれぞれ緊張・弛緩母音であり両者の違いは持続時間ではなくその音質であることが知られるが、母音の分類における一つの基準である緊張性を定量的に認識及び評価することは困難である。緊張性の考察への時間依存の概念の導入及び、フォルマント角θのようなフォルマント周波数の時間依存を表すパラメータを母音の緊張性の指標として使用することが、緊張性の定量的評価を行うための一つの手がかりとなる可能性を提示する。
     
会場 226室  
 

シンポジウム
CEFR と言語教育の現在(仮題)

 
  司会 佐藤 玲子(明星大学)  
14:30-15:30 基調講演

富盛 伸夫(東京外国語大学名誉教授)
CEFRと言語教育の現在、欧州諸語からアジア諸語への適用妥当性(仮題)
15:30-16:10
阿部 新(東京外国語大学准教授)
CEFRと日本語教育(仮題)
16:10-16:50
黒澤 直俊(東京外国語大学教授)
ポルトガル語におけるCEFRの適用:機能シラバスから文法シラバスへ
16:50-17:00 休憩  
17:00-17:40 総合討議  
17:40-18:10 総会  
  懇親会  

大会第2日 12月16日(日)

A会場 東京外国語大学
事務棟2F  大会議室
B会場 
東京外国語大学事務棟2F  中会議室

 
午前の部 タイトル 発表内容
  A会場(大会議室)  
  司会 未定  
10:00-10:30 高大連携・産学連携・ICTによる高校英語ライティング・スピーキング遠隔教育
望月 圭子(東京外国語大学)
星澤 美衣((株)産経ヒューマンラーニング)
今井 薫(東京外国語大学国際社会学部)
張 正(東京外国語大学博士後期課程)
本発表では、高大連携・産学連携により、遠隔地の高校英語を支援する取り組みの実践例を報告する。具体的には、長野県上田高等学校及び徳島県立城東高等学校に対して、東京外国語大学の教員・英語母語大学院生が高校向け発信型オンライン英会話教材を作成し、英語母語留学生と両高等学校出身の東外大生を中心に、高校教員・生徒・オンライン英会話企業とともに、遠隔会議システムやe-ポートフォリオを通して、交流と英語学習を深める実践と課題を発表する。
10:30-11:00 大学生の語彙と読解力の関係を継続的に見る
小西 瑛子(帝京科学大学非常勤講師)
先行研究では語彙とReadingの間に関係を認めるものが多いが、外国語として学んでいる学生でも「語彙とreadingの間に関係があるのか」という点に疑問を持ち、2017年に調査を行った。さらに、英語力が上がるにつれ、この関係が強固になるか否かという疑問を持ち、2018年に前回と同じ学生を対象に同様のテストを行った。彼らの実力は前回テストを行ったときよりもTOEICで平均90点ほど上昇している。今回はこの調査の結果を発表するものである。
11:00-11:30 英語教科書における出現状況から見るディスコースマーカーの習得しやすさ/しにくさについて
佐藤 選(東京学芸大学大学院博士課程)
ディスコースマーカーはリーディング指導に有用であると言われているものの、日本人英語学習者がその意味を正しく認識できていないディスコースマーカーが存在する(佐藤, 2018)。本発表は、中高の英語教科書における各ディスコースマーカーの登場傾向を調査し、その傾向が学習者の習得しやすさ/しにくさに与える影響を考察するものである。本結果より、順接関係やそれに類する関係性を表すディスコースマーカーの指導が不足していることが示唆される。
11:30-12:00 タンデム学習に対するビリーフ-日露集中タンデム学習の参加者の視点-
ラーソン・ベンジャミン・フィリップ(東京外国語大学大学院博士後期課程
本研究では、筆者は東京外国語大学のロシア語科のビジネスサマースクールの一環として行われた集中的な、Bi-nationalのタンデム学習の参加者のタンデム学習に対するビリーフを質的インタビューで調べた。ロシア人の協力者は①タンデム学習の環境が学習意欲に影響を与え、②やり取りによる即時にフィードバックを受け、③日本人と社会的な場でコミュニケーションをとり、④日本人の本質を観察することをタンデム学習の重要特徴として見なしていたと分かった。
  B会場(中会議室)  
  司会 未定  
10:00-10:30 ケベック州で出版されたフランス語教科書にみられる社会言語学的特徴の反映の方法
近藤 野里(名古屋外国語大学)
本発表では、ケベック州で出版されたフランス語教科書の特に音声教材を分析することで、外国語学習教材への社会言語学的特徴の反映の仕方について考察する。従来、教科書は伝統的文法に基づいた標準的な慣用が提示されてるという認識が強いだろう。しかし、本発表でコーパスとして使用する教科書には、意図的に地域的変異が組み込まれるほかにも、特に教科書付属の音声教材に収録された発音においてスタイルの違いによってあらわれる、否定辞のneの脱落、/l/の脱落など様々な変異が観察される。
10:30-11:00 フランス語学習者における受容語彙知識の経年変化
杉山 香織(西南学院大学)
本研究は、日本語を母語とするフランス語学習者を対象とし、読解タスクにおける受容語彙知識の経年変化を多角的に分析するものである。2017年度に半期以上フランス語圏へ留学することが決定していた学習者に対して、留学前と留学後にそれぞれテキスト理解と語彙知識を問う読解タスクを行った。留学経験によってもたらされた進歩について、読解スコア、既知語の割合、既知語の頻度層などから量的に説明するとともに、留学を経ても変わらない側面をインタビューを通して質的に分析していく。
11:00-11:30 大学に在籍する中国語学習者の語彙学習ストラテジー
小川 典子(立命館大学言語教育センター)
本研究では、まず大学で中国語を学ぶ学生の中から、2年生と3年生の成績上位者と成績下位者、計15名を抽出して半構造化インタビューを行い、学習者がどのような語彙学習ストラテジーを使用しているのかを調査した。次に、インタビュー結果をもとにストラテジー調査票を作成し、同学年に在籍する79名の学生に量的調査を行い、学習者が使用するストラテジーが学習期間に応じてどのように変化していくのか、そして成績上位者と下位者で使用するストラテジーに違いはあるのかを調査した。
日本と中国語はともに漢字を使用し、日中同形語も少なくないが、調査結果より、より良い中国語の語彙学習には何が求められるのかを考察した。
11:30-12:00 韓国語学習者の発話に対する韓国人大学生の評価―「わかりやすさ」に注目して―
崔 文姫(熊本県立大学)
本発表では、日本人韓国語学習者の発話に対する韓国人大学生の評価について報告する。文系理系別の2グループの韓国人大学生が同年代の韓国語学習者のストーリーテリング発話に対して、発話がわかりやすい否かを判断する際、どのような点に注目するかを調査・分析した。その結果、2グループでは異なった評価観点が働き、各グループにおいてそれぞれの評価観点が相互に影響し合い「わかりやすさ」評価につながることが明らかになった。
  休憩昼食(12:00~13:00)  
午後の部 タイトル 発表内容
  A会場(大会議室)  
  司会 未定  
13:00-13:30 トルコ人日本語学習者の日本語のコミュニケーション上の問題 —中級・上級・超級日本語学習者の横断的な会話データを用いて—
デデオール セダー(名古屋外国語大学大学院博士後期課程)
第二言語学習者は、目標言語で話をする際に、コミュニケーション上の問題(以下、C問題)が起こり、様々な方法でその問題に対処している。従来、主に焦点が置かれたのは学習者がどのように問題に対処するのかであり、C問題自体に関する分析は少ない。本研究は、日本語会話能力が異なる15名(中級、上級、超級格5名ずつ)のトルコ人日本語学習者の日本語での会話に見られるC問題とその要因を再生刺激法を用いて明らかにするものである。
13:30-14:00 中国における日本語オンライン授業の現状と学習効果 学習者の取り組み態度と自己評価を通して
余 文龍(京都大学大学院博士後期課程)
馬 雲霏(京都大学大学院博士前期課程)
中国では、学習者のニーズに応じた様々な外国語オンライン授業が開発され、「各自の需要によって自由に学べる」などの点において一定な成果を上げている。一方、授業の内容は、受験対策のための文法や語彙の説明がほとんどであり、言語運用の面においてはあまり触れられていない。このように、オンライン授業の利用者の学習効果についてはあまり注目されていない。
本発表は、オンライン授業を利用している日本語学習者44名の取り組み態度と自己評価を通じて、観察記録、アンケート、インタビューによって、オンライン授業の現状と学習効果、また改善点を明らかにするものである。
14:00-14:30 日本語音声教育におけるアクセント指導法に関する調査報告―新たなシャドーイング訓練方法の提案―
王 凰翔(広島大学大学院総合科学研究科)
本稿は日本語学習者35名を対象に、アンケート調査を行い、アクセントの指導法の普及状況と応用状況を明らかにした。その結果、アクセント指導法をまったく知らない学習者が非常に多く、4つの指導法のうち、シャドーイング指導法は最も学習者に知られていると同時に、最も学習者によって実践的に応用できる指導法であることが分かった。また、調査の結果を踏まえて、言及したアクセント指導法の利点と欠点を分析した上で、その中でのシャドーイング指導法に基づき、発表者は「誰でも使える」、「どこでも使える」、「いつでも使える」という3つの理念を持ち、「Adobe Audition」というソフトウェアを利用し、新たなシャドーイング訓練方法を提案した。
14:30-15:00 外国語科目の授業における主体的学修方略分類を用いた学修行動分析
結城 健太郎(東海大学)
白澤 秀剛(東海大学)
発表者らは学生の主体的学修行動を、成長や獲得を目的とした学修方略の使用頻度と不利益回避を目的とした学修方略の使用頻度の2要因により分類し、授業への取り組み状況や課題の提出状況、出席状況と比較して妥当性を検証している。本発表では、レベル・目的等の異なるスペイン語科目における学習者の授業への参加や課題への取り組みといった学習行動と、学修方略分類の相関を分析し、言語学習における主体性について考察する。
15:00-15:15 休憩  
  司会 未定  
15:15-15:45 言語学習におけるポジティブな感情―台湾の大学で学ぶ学習者のケーススタディ―
鈴木 綾乃(横浜市立大学)
伊藤 奈津美(早稲田大学)
本発表では,日本語学習者が日本語学習を開始し,続ける中で,どのようなときにポジティブな感情(好き,楽しい,など)を抱くのか,明らかにする。言語学習と感情の関連は,不安などネガティブな感情に関する分析はあるものの,ポジティブな感情についてはあまり分析が行われていない。しかし学習が楽しい・好きという感情は,内発的動機づけと非常に関連が深く,ポジティブな感情は自律的・能動的な学習に結び付きやすいと考えられる。そこで本発表では,7人の台湾人学習者のインタビューから,言語学習におけるポジティブな感情について分析し、外国語環境における言語教育への示唆を得る。
15:45-16:15 学習者はグループワークで何を学んだか-学習者の振り返りから-
伊藤 奈津美(早稲田大学日本語教育研究センター)
藤田 百子(早稲田大学日本語教育研究センター)
本発表はグループワークが、学習者に及ぼす影響を学習者自身の振り返りから明らかにしようとするものである。教育実践の中で頻繁に実施されているグループワークを経験した学習者は、その経験から何を学び、どのような影響を受けたと感じてるのか。そして、それを自身の学びにどう還元できているのか。日本語学習者9名に対し、1学期中3回のアンケート調査および学期末にインタビュー調査を行った結果について述べる。
16:15-16:45 インドネシア人日本語学習者の動機づけの変化―大学生1年生から4年生を対象に―
ニ ワヤン プリリヤシンタ(名古屋外国語大学大学院博士後期課程 )
学習者の外国語学習に対する動機づけは不安定なもので、常に変化している。本研究は、インドネシアの大学で日本語を専攻しているインドネシア人日本語学習者の動機づけが1学期(4か月)で数量的にどのように変化したのかを調べた。これを明らかにするために、アンケート調査2回(学期の始まりと終わり)を実施した。有効回答は235名である。調査の結果、全学年の1学期の間日本語学習動機づけの変化が見られた(低下してしまった)ことが分かった。
  司会 未定  
16:45-17:15 日本語の発音指導における視覚情報の効果
赤木 浩文(専修大学国際交流センター)
中級日本語学習者に対する日本語の発音指導において、学習者の意識化を促進するためのインプット強化として、学習項目の視覚化、記号化を活用した指導を行い、その結果を考察した。本研究では、どのような視覚情報や記号をどのように活用し、どのような効果がどのような学習項目に現れたのかを学習者のアウトプットを用い、具体的な例を示しながら意識的側面、学習的側面、指導的側面からその有効性を検証する。
17:15-17:45 電子メールによる依頼行動の展開から見る中間言語の発達―中国人日本語学習者と母語話者の相違を中心に―
王 冠亮(南山大学大学院研修生)
史 琨茹(南山大学大学院)
本研究は中国人日本語学習者65名と日本語母語話者28名の電子メール上での依頼行動を対象に、ミクロな観点から各文における言語ストラテジーを分析し、学習者と母語話者の言語使用の傾向を明らかにした。その結果、「共感喚起」「感謝の表明」「名乗り」という3つのストラテジーにおける両者間の相違がχ2検定で統計的に判明し、学習者には言語能力と語用論的能力の間に発達上の差があること、また学習者の母文化が中間言語に影響を与える可能性があることが示唆された。
17:45-18:15 授業外日本語多読活動経験者の自律的教室外多読
高橋 亘(神田外語大学)
本発表では、国内の高等教育機関で授業外に日本語多読活動を経験した日本語学習者が、進学や帰国により学習環境が変化した後、どのように自律的に多読を実施していたのかについて報告する。活動に参加していた4名に対して、3度の縦断的インタビューを行った結果、環境が変わっても、すき間時間を有効に活用していたことや、活動で学んだ読み方を学習者自身で応用して読んでいたことが明らかになった。これらをもとにし、活動終了後の学習者への支援方法や、今後の課題についても触れる。
     
午後の部 タイトル 発表内容
  B会場(中会議室)  
  司会 未定  
13:00-13:30 学習適性に注目した英語指導に関する検証
―デジタル教科書の活用を通してー
渡辺 芳朗(愛知教育大学大学院博士課程)
本研究はデジタル教科書を活用した授業の効果が生徒の学習適性とどのような関連があるのかを明らかにするものである。教研式・新学年別知能検査に基づき,中学1年の対象者を抽象言語型、感覚運動型、バランス型の学習タイプに分けた。事前事後のテスト結果と生徒による自己評価の差を取り、群分け(デジタル教科書使用群と非使用群)と学習適性タイプの違いによる2元配置分散分析の結果,群分けと学習適性の交互作用が有意となった。
13:30-14:00 日本人フランス語学習者の自由会話におけるonの一考察
伊藤 玲子(東京外国語大学博士後期課程)
清宮 貴雅(東京外国語大学博士前期課程)
川口 裕司(東京外国語大学)
本研究では、日本語を母語とするフランス語学習者が発話したonの諸用法を分類し、学習者の学習歴、フランス語圏滞在経験、他の語学レベル、その他の学習者特性等が、onの用法の使用とどのように関連しているのかを考察する。具体的には、2015年度に実施した「現代フランス語中間音韻論 (IPFC)」の調査のうち、中上級フランス語学習者 (CEFR B2~C1相当) 6名の自由会話タスクをコーパスとし、Flottum et al. (2008) 等によるonの5つの用法を前提として分析を行う。
14:00-14:30 日本人フランス語学習者の書き言葉における名詞修飾使用
山口 奈美(西南学院大学フランス文学専攻博士前期課程)
フランス語学習者の書き言葉を対象とした研究は、文法のエラーに目を向けたものが多い。その一方で、文法的誤用ではないが日本語母語話者が頼りがちな表現に焦点を当てた研究は未だ乏しい。本研究は、学習者が生産する名詞修飾方法の傾向を量的・質的両観点から明らかにすることを目的としている。まず学習者が用いる形容詞的表現を分類して量的に概観したのち、特徴的な使用に関して質的分析を行うことで、学習者の傾向把握を試みる。なお、日本人フランス語学習者の作文データはIPFC (InterPhonologie du Francais Contemporain) コーパスによるものとする。
14:30-15:00 語彙連想による検索トレーニングとフランス語語彙学習-連想の種類とその語彙学習への効果に関する分析-
松川 雄哉(南山大学)
本発表では、語彙連想による検索が及ぼす外国語学習への効果に関する調査結果を報告する。実験では、20名の日本人フランス語学習者が、新語を彼ら自身の連想語で検索しながら覚えるタスクを行い、記憶確認の事後テストと語彙サイズテストを受けた。一週間後、遅延テストとインタビューを受けた。結果として、学習者は、新語の形式ではなく意味に関連した連想をする傾向があるが、新語の意味と直接関係のない連想語でも語彙学習に効果的であることが明らかになった。
15:00-15:15 休憩  
  司会 未定  
15:15-15:45 異文化間コミュニケーション能力を育てるための外国語授業デザイン
呉 恵卿(国際基督教大学)
従来、異文化間コミュニケーション能力は外国語学習を通して自然に身につけるものであるというふうに認識されていた。しかし一方では、外国語を習うだけで異文化間コミュニケーション能力が自動的に身につくのではないという認識もある。本研究では、社会的・相互行為的プロセスに積極的・能動的に参加するプロセス中心アプローチが学習者の異文化間コミュニケーション能力にどのように影響するのかを考察するために、このアプローチを援用した形の日韓交流授業をアクションリサーチとして行い、授業後作成したコメントなどを中心にこの授業が学習者の異文化間コミュニケーション能力に及ぼした影響について評価する。
15:45-16:15 スペイン語教師の資格について-スペイン語教師養成とインスティトゥト・セルバンテスの役割
本廣 田鶴子(大阪大学大学院文学研究科研究生)
保坂 敏子(日本大学大学院)
グローバル化が進む現代、外国語として言語を教える教師には多くの新たな役割が求められている。母語話者数世界第三位ともいわれるスペイン語を教える教師にはどのようなことが求められているのだろうか。スペイン語において、普及の大きな役割はインスティトゥト・セルバンテスが担っていることが分かった。スペイン語教師への調査を基に、スペイン語教師の資格とインスティトゥト・セルバンテスの役割について考察する。
16:15-16:45 教育調査会における学制改革案と外国語教育の方針
下 絵津子(近畿大学総合社会学部/京都大学人間環境学研究科)
文部省の諮問機関である教育調査会(1913~1917)における中学校・高等学校の改革案について、外国語教育が与えた影響とその結果を解明する。教育調査会の議論の分析をした数少ない研究に、高等学校の改革論に着目した渡部(1978)や中学校改革の問題を検討した谷口(1975)がある。しかし、いずれも外国語教育が学制改革の提案に与えた影響を分析したものではない。本考察により、英語以外の外国語を高等学校入学以前から十分に習得させたいと考える関係者の意図が部分的にのみ政策案に反映されたことが明らかになった。
  司会 未定  
16:45-17:15 中等教育における英語以外の外国語教育政策
山崎 吉朗(一般財団法人日本私学教育研究所)
無理矢理の小学校の英語教科化,すでに分裂状態にある大学共通テストの外部検定試験導入,遅々とした歩みの中学高校の英語教育改善等々,現在の様々な英語教育改革は嵐の中を突き進む小舟のように見える.ただ,逆に言うと情報が溢れている.一方,「英語以外の外国語教育」はマスコミにほとんど登場しない.実は,正確に言うと探せば出て来る.本発表では,大学共通テスト,大学入試,外国語教育推進事業,教育振興基本計画について.改善や問題点を述べ,今後を展望する.
17:15-17:45 教員免許状更新講習と外国語教育、その現状と展望
本間 直人(日本大学 非常勤講師)
山崎 吉朗 (一般財団法人日本私学教育研究所主任研究員)
本発表は、平成21、23、24、25、26、27、28、29年度の多言語教員免許状更新講習の調査、研究発表に引き続くものである。今年度(平成30年度)実施された全国の多言語教員免許状更新講習を概観するとともに、過去9年間に実施された講習を振り返る。また、今年度、一般財団法人日本私学教育研究所において実施された講習について紹介する。言語と異文化に関する講習の分析によって、現在、そして、これからの外国語教員に求められる資質とは何かについても考察する。
     
  大会議室  
18:20-18:30 閉会の辞  



お知らせ

昼食

 

懇親会

当日の参加も歓迎です。

年会費 一般会員 5000円,学生会員 3000 円,賛助会員 10000円

183-8534 府中市朝日町 3-11-1
東京外国語大学 外国語教育学会(川口裕司)
振込口座 郵便局 00120-6-33068