外国語教育学会 第6回大会 本ページの内容を引用される場合は、『外国語教育研究6』 外国語教育学会編、2003年、pp.69-101の出典を明記してください。 © 2003 外国語教育学会 (JAFLE)。 |
はじめに 在間 進 (東京外国語大学副学長) |
基調講演 外国語教育と評価 伊藤 嘉一 (東京学芸大学名誉教授) |
TUFS言語モジュール* 川口 裕司 はじめに この拠点形成においては、情報工学を基盤として言語教育学と言語学の統合がはかられる。こうして生み出される新たな学問領域は言語情報学と呼ばれる。たとえばコーパス言語学のように、コンピュータ科学と言語学が協働する分野や、近年注目されるe-learningなどは言語情報学の典型的な研究領域と言えよう。もちろん、このCOEプログラムからは、従来の言語学や言語教育学の研究成果も生み出される。しかし拠点形成の主たる目的は、言語情報学の創成によって、IT技術を駆使した外国語教育の先端化、シラバス論や談話分析の研究成果を活かした教育の効率化、言語理論を背景にした教育内容の高度化を実現することにある。そして、その成果が最も明確な形で現れるのがTUFS言語モジュールと呼ばれるWeb教材である。 モジュール的言語観 従来の言語学では、音韻・形態・語彙・統語という構成レベルは、いわば積み重なった階層を成し、言語構造は音韻から統語へ、あるいは逆に統語から音韻へと段階的に捉えられ、それぞれの構成レベルに規則ないしは文法があると考えられてきた。このような言語観を統合的言語観と呼ぶことにする。それに対してモジュール的言語観では状況が少し異なる。モジュール的言語観においては、音韻・語彙・文法・統語といった言語の構成要素は、それぞれがある程度自己完結的であり、互いに独立した構造をもちながらも、ハイパーリンクによって相互に緊密に関連づけられる。両者の違いをあえてイメージ化するならば前のページの図のようになるかもしれない。 TUFS言語モジュール TUFS言語モジュールは発音・語彙・文法・会話の四モジュールから構成され、英語以外の言語は外国語を初めて学ぼうとする大学生を対象としている。このWeb教材には二つの特色がある。 学術的貢献と問題提起 モジュール開発は基本的にそれまでの学術的研究をもとに行われる。たとえば会話モジュールは機能シラバスを土台にして作成され、発音モジュールは音声学や音韻論の成果を取り入れつつモジュールが製作されている。 モジュール開発の現状 実を言うと、TUFS言語モジュールの開発計画は、21世紀COEプログラムの採択と同時に始まったわけではない。すでに2002年の春から文部科学省の科学研究費補助金の交付を受けて基礎研究が行われていた。21世紀COEの採択がなくとも、モジュール開発は粛々と進んでいた筈である。それがCOEの採択によって、教員と大学院生による総勢150余名からなる大きなプロジェクトに変身したのである。 (東京外国語大学) |
TUFS言語モジュールにおける評価法の可能性について 和田 朋子 東京外国語大学大学院の「言語運用を基盤とする言語情報学拠点」は、2002年11月に文部科学省の「21世紀COEプログラム」に採択されたプロジェクトの1つである。本プロジェクトでは主に、「TUFS言語モジュール」を基盤とする17言語汎用シラバスの作成が進んでいるが、本報告では、この「TUFS言語モジュール」における評価法について、その可能性を探るべく、いくつかの論点を挙げたいと思う。 「TUFS言語モジュール」の特徴 「TUFS言語モジュール」における評価を考える際にポイントになることとして、本モジュールの特徴が2つ挙げられる。一つは、本モジュールが「モジュールシラバス」の形式をとっているということと、もう一つは、本モジュールは「WBT(Web-based
Training)教材」として、具体的な教材化がなされるということである。 評価をマクロにとらえて:モジュールシラバスの観点から 「TUFS言語モジュール」の評価方法の可能性を探るために、まずはモジュールシラバスという観点から考えてみたいと思う。「TUFS言語モジュール」では、そのモジュールシラバスの持つ柔軟性という特質により、学習する内容は学習者によって異なっている。つまり、学習者は「TUFS言語モジュール」で学習するにあたり、一人一人異なった通り道を経て、最終的な「評価」を迎えるのである。このように、学習者によって学習のプロセスが異なるということは、その一方で、「TUFS言語モジュール」という一つの学習プログラムとして、統一的な「出口」としての評価も必要であるということが言える。 評価をマクロにとらえて:WBT教材の観点から 「学習」と「評価」の結びつきを考える際に、「TUFS言語モジュール」がWBT教材であるという観点が非常に重要になる。一つは学習者の学習ログの管理である。学習者が学習した内容を評価に結びつけるためには、学習者が何を学習したのかの履歴が必要となる。これは、WBT教材では「学習ログ」という形で管理され、個々の学習者の学習プロセスに適合した評価を行う際には、この学習ログをもとに評価が行われる。モジュールシラバスであるからこそ、その多様な学習プロセスに適合した評価が必要であり、それはWBT教材だからこそ、学習ログという形で可能になるのである。 評価をミクロにとらえて:テストアイテムについて 「評価」を行う際に重要なことは、学習者の言語使用を引き出すことである。学習者がある場面に直面した際に、言語を用いて、どのくらいその場面に対応することができるのかという、学習者の言語的反応(performance)を引き出すための刺激が「テストアイテム(問題)」である。そして、「評価」に用いられる「テスト」は、いくつかの「テストアイテム(問題)」から成り立っている。 「TUFS言語モジュール」における評価法の可能性 「TUFS言語モジュール」における評価法について考える出発点は、その「モジュールシラバス」という特性と「WBT教材」という特性にある。特に、評価において重要とされる「学習と評価の結びつき」については、モジュールシラバスの持つ柔軟性とWBT教材の持つ体系性が、大きな役割を持つことになる。また、評価が「何ができるようになったのか」「何ができるようになればいいのか」を示すステップであることから、個々のテストアイテムが、求められている言語使用を具現化することになるという可能性も見えてきた。コミュニケーションを中心とした、学習者中心の言語学習プログラムである「TUFS言語モジュール」が確立するなかで、その評価方法は、さまざまな可能性を秘めていると言ってよいだろう。 (東京外国語大学大学院博士後期課程) 参考文献 |
TUFS言語モジュールにおける評価法の課題 根岸 雅史 1.評価法の確立の必要性 TUFS言語モジュールというユニークなWBT教材が開発された。およそあらゆる学習教材には、その学習結果の評価が必要であり、その意味では、学習教材としてのTUFS言語モジュールも何らかの評価法が求められる。TUFS言語モジュールの大きな特徴は、そこで提供される言語の多様さであるが、このことは確立した言語テストを持たない言語の能力評価法の開発も意味する。これらの言語を含むTUFS言語モジュールの評価システムには、どのような課題が予想されるのであろうか。 2.評価法決定における選択肢 TUFS言語モジュールは、ネット上での言語学習を想定している、いわゆるCALL(コンピュータによる学習支援システム)である。現在はこのシステムの設計は「どこからでも始められ、いつでもやめられる」ようになっている。このような自由な設計は、多様な学習者に対して適したものであり、それぞれの学習者のネット環境を考えると必須ですらある。 3.評価法の問題点の整理 TUFS言語モジュールにおける評価法では、いつ誰にどのような結果のフィードバックを行うかが問題となる。学習プログラムの途中段階にある場合は、学習者に対して、学習結果の診断的な情報が必要になり、TUFS言語モジュールでは、フィードバックは必然的に言語のユニットに基づく情報となると考えられる。それに対して、学習プログラム終了時では、学習を終了した学習者自身への学習結果に関するフィードバックと同時に、学習結果に関するいわば「外」向きの情報も必要である。つまり、TUFS言語モジュールを終えた学習者が、その言語を使ってどのようなことができるのかに関する、社会に向けた説明である。この説明は、TUFS言語モジュールのうちのどの部分を修了したかというようなものは、「外」のものには意味不明であろうし、言語のユニットに基づく記述もその言語に精通していないものにとっては、理解が困難である。おそらく、「外」のものが求める能力記述の形は、実際のコミュニケーション場面で何ができて何ができないかに関する記述ではないだろうか。 4.問題解決に向けて TUFS言語モジュールにおける評価方法を確立するにあたり、私たちは様々なジレンマに直面している。このジレンマから抜け出すためには、おそらく「内向け」の評価と「外向け」の評価を分ける必要があるのではないだろうか。「内向け」の評価では、いくつかのセクションごとに学習プログラムの区切りをつけ、それぞれのセクションの終了時に、プログラムの構成に基づいた(つまり、言語モジュールに基づいた)診断的な評価を下すことである。それに対して、「外向け」の評価では、すべてのプログラムの学習が終了した時点で、総括的に評価を行うのである。そして、この「外向け」の評価では、一般人にもわかりやすい形での、現実的な生活場面に基づいた能力記述を目指すべきであろう。ただし、どのような生活場面が現実的なものと認識されるかを知るためには、TUFS言語モジュールの学習者のニーズ分析が必要である。つまり、なぜその言語を学習し、どのような場面でどのようなことにそれを利用しようとしているのかがわからなければならない。 (東京外国語大学) 参考文献 |
外国語教育における評価とは? 馬場 哲生 1. 言語能力の客観的測定は可能か 1.1. 言語能力を「測定」することの意味 1.1.1.「測定」と「評価」の一般的意味 1.1.2. 言語能力の「測定」の特質 1.1.2.1. 測定対象 1.1.2.2. タスクと採点基準 1.1.2.3. 採点者の主観 1.1.2.4. 要素の重み付け 1.1.3. 言語能力の「測定」は可能か 言語能力の指標において、比較的高い客観性が確保されているものは、語彙サイズや読解速度などのように限定的なものである。言語能力の「測定」は、長さ・時間・速度・重量・温度などの測定とは性質を異にするものであり、@測定対象の設定、Aタスク・採点基準の設定、B産出技能の採点、C要素の重み付け、という様々な局面で測定者の主観的判断が不可避であるという性格を持っている。言語能力の「測定」においては、客観的・唯一的に同定されうる真の値というものは存在しない。測定者の価値観から自由でありえないという意味では、言語能力は、「測定」の対象としてではなく、むしろ「評価」の対象としてとらえるべきものであると言えるだろう。言語能力の「測定値」とは、「評価」の対象である言語能力に対して「測定」の手続きを援用して得た値である。 2. 外国語習得における発達段階の特定化は可能か 言語発達の過程で、すべての下位能力が比例して向上していくとは言えないし、その割合がすべての学習者において同じであるとも言えない。その意味で、少なくとも単一尺度で発達段階を特定化するのは困難である。 第1段階 第2段階 第3段階 第4段階 第5段階 第6段階 Pienemannの仮説が外国語教育に与える重要な示唆は、それが単に普遍的な発達段階を示しているだけでなく、@発達的素性の産出技能 (production)
の指導においては、学習者がその項目を習得するための準備段階 (readiness) が整っているときに限って、習得が促進されること、A発達段階を超えた指導は使用回避
(avoidance) などの悪影響を及ぼすこと、を示している点にある。 (東京学芸大学) 参考文献 |
ベトナム語―教授頻度の低い言語―の教育と評価 田原 洋樹 1.はじめに 英語やフランス語、ドイツ語など外国語としての教授頻度の高い言語には、学習者の能力を測定する試験システムが整っている。他方で、昨今の「アジアブーム」を反映しているのか、学習者の増加を見ている(とはいえ、依然として教授頻度が低い)アジア系諸語には、能力測定試験が未整備である言語も多い。 2.ベトナム語−能力測定試験がない言語−の教育と評価 筆者が勤務する大学では日本語・英語の他に、アジア太平洋地域の言語教育科目として中国語、インドネシア・マレーシア語、韓国語、スペイン語、タイ語、ベトナム語が開講されている。この7言語6科目は、3ないし4(中国語・韓国語)のレベルに分けられ、初習者はレベルTから学習を開始し、既習者についてはその能力に応じ、下位レベルを履修免除にしている。履修免除の目安として、能力測定試験の結果を利用し、担当者による面接も合わせて実施している。 (1)講義目標と計画の明示 振り返ると、これは非常に「贅沢な」教育で、「贅沢な」評価方法である。評価は、個別学習者の成長をつぶさに観察し、「何が」「どこまで」出来るのかを具体的に示している。手間がかかるが、教育が人間による人間のための営みであることを考えると、決して軽視できない教育と評価の本質が、ここにある。 3.「評価」は師弟双方の努力で 「外国語教育における評価」に関して、「評価」とは教師が学習者を評価する一面だけでなく、学習者が教師を評価する、いわゆる授業評価や教員評価についても考察を巡らせなければならない。 「良く評価されたい」から「正しく評価されたい」という流れの中、TUFS言語モジュールは正しい評価のあり方に対する大きな学問的挑戦である。学習目標・内容を洗いざらいにして、モジュールとして再構築している点と外国語能力の評価問題を切り離さずに、表裏一体の関係で捉えて議論しているのが優れている。この2つの研究が相互補完的に進展し、外国語運用能力の評価の通言語的な「スタンダード」が生まれることになれば、外国語教育に携わる者として、非常に心強いのである。 (立命館アジア太平洋大学) |
自由討論
黒澤: 報告者の皆さん、ありがとうございました。では引き続き自由討論に入りたいと思います。本日の報告には外国語教育における評価という問題の他に大学教育と評価をめぐる他の様々な問題が含まれていたと思いますが、まず、ご質問やご意見等ありましたらお願いいたします。 萩野: 幾つかの点についてコメントと質問を兼ねてお尋ねします。まず、語彙についてです。他の言語にもあると思いますが、いわゆる英語でいうチャンク(chunk)のような、単語レベルではなく、成句的な表現や、決まり文句や連語のような、例を挙げますと、hold a party、take a medicine、take a bathのような表現がありますが、TUFS言語モジュールではこれらは語彙モジュールで扱われるのか、会話モジュールで扱われるのか、どちらなのでしょうか。 川口: それは大変興味深いご質問です。コーパス言語学の分野でもチャンク(chunk)の研究というのは注目されていることは知っていますが、その問題をTUFS言語モジュールの中で、どのように扱うかはまだ決めていません。ただ、おそらく語彙モジュールの中では単語が主になるため、会話モジュールの中のリンク等で一部の成句を説明するか、あるいは熟語を語彙モジュールに取り込むかという選択肢があると思います。また、本日の報告では触れませんでしたが、COE計画の発展的な可能性の一つとして別の計画があります。それは教養教育科目の教材の構築です。たとえば言語学、教育学、経済学のような内容が含まれるサイトをインターネット上でロボットを使って自動的に収集します。次にそのサイトに現れる各分野の用語を頻度順に並べ替えて、最終的には各分野の基本的用語を網羅した教材を作り上げるという計画です。おそらく、この計画ではチャンクの問題が重要な意味をもつように思います。ある単語が非常に頻度が高いのは、単語として高いのか、あるいはチャンクとして高いのか。もしそれがチャンクとして高ければ、その分野の用語を学ぶ際にはチャンクとして学習する必要があります。ただ今申しました計画は、TUFS言語モジュールが一段落してから取りかかるつもりですし、まだまだ構想の段階に留まっています。ただ、いずれにせよご指摘のチャンクの重要性はよく理解できます。 萩野: 第二の点ですが、私はいろいろな国で語学の集中コースを受講したことがあります。それらはすべて成人のためのコースでした。そうして様々な言語をかじって気がついたのですが、TUFS言語モジュールのように機能シラバスに基づく以外に、英語の助動詞のような、いわゆる法動詞を共通の骨組みとして、それを学習方略に関連づけながら学ぶこともできるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。語順や文法構造などはそれぞれ違っていても、canのような法動詞はどの言語にもあるように思います。 川口: 実際にはその点も考慮しています。市販されている日本語の教材は、法動詞と書いていないかもしれませんが、文法シラバスにせよ、機能・概念シラバスにせよ、その中にかなり法的な表現が組み込まれているものが多いと思います。ところが、ヨーロッパ系言語の教材のほとんどは、ギリシャ・ラテン文法を基礎としており、品詞論から出発するシラバスが圧倒的に多いのです。そこでこの二つの教材の流れをどのようにうまく組み合わせるかというところで、今まさにおっしゃられた法動詞や時制やアスペクト等が問題になってきます。これらは教材の中での提示が大変難しい事項だと思います。来年度開発する予定の文法モジュールの基礎研究を通じて、ご意見を頂戴しました点について、さらに汎用文法シラバスについて考えてゆきたいと思います。 萩野: 汎用性に関して言えば、ヨーロッパの諸言語の間では、ある程度の共通性があると思いますが、日本語などは確かにかけ離れていると思います。最後のコメントです。それは言語モジュールの出口評価についてです。TUFS言語モジュールの評価はどのようなものでしょうか。会話モジュールということは、読み書きは入っていないということですか。 川口: ええ、そうです。とりあえずreadingやwritingはもう少し後で考えます。ただ初級レベルから読み書きが必要だということは十分に認識していますし、多数の方々からそういうコメントをいただいています。今、萩野先生が言われたcan do statementのようなものは必要だと思います。基礎研究の段階でEuropean common frameworkやACTFLについての報告を受けました。海外の例を参照しつつ、レベルを考えるときに、何ができるようになるかを明確にしておくことは絶対必要だと思います。 黒澤: ありがとうございました。他にありますでしょうか。 黒澤: どうもありがとうございました。いろいろと貴重なご指摘があったのではないかと思います。少し話が飛躍しますが、たとえば、言語学の分野では、いろいろな現象を説明するのに抽象的な概念を使って、それをかなり精密に演算して説明するというようなことが行われています。しかし、プラクティカルな観点から、つぼを押さえたような簡単な説明でピタッといくときもあるし、いかないのもあります。主観的に、また印象として理解できる部分とそれを解明することを総合的に組み合わせていけば、学問的にも実践的にも進歩があるのだと思います。 男性: 本日の報告ですが、入口と出口、そこに至る経路が報告者の間で必ずしも一致していないような印象を受けました。たとえば入口ですが、日本語から英語に行くときと、日本語からスペイン語に行くときでは全然違うと思います。途中の経路については、馬場先生がおっしゃられたように、文法から入ってネイティヴとは違う言語になっていいのか、それともできるだけネイティヴに近づけるのか、それによっても対応の仕方が違ってくると思います。小学校英語も日本における英語教育をどうするかということが明確にされないまま、単に総合学習で安易に英語を取り上げる。そういう状況下で英語をどういうふうに教えるかということを考えても、結論は出ないと思います。 黒澤: 言語間の類型的な違いや多様性というのはもちろんありますし、どういう人を対象に教育するのか、学習者の動機は何なのかなど外国語教育を取り巻く環境は多様です。それらは単純な一つのパターンや方式には還元できないと思います。ただ、外国語教育ではプラクティカルな側面というものは厳然とあって、それを進めなければならない必要性はアプリオーリにあると思います。小学校の英語教育にしても、日本の外国語教育にしても、方法論と目的が完全に明確になる前に、どうしても見切り発車しながら行わざるを得ないというのが我々のおかれている現実なのだと思います。 田口: 私は先ほど発言された方とはまったく逆で、報告者の方々は皆さんまとまりを持ちながら話されていたと思いますし、かなり刺激を受けました。 川口: TUFS言語モジュールですが、これだけで完結するような何かとは考えておりません。たとえば言語モジュールがそのまま外語大の教材になるのかさえ現時点では明確ではありません。たぶん大部分の方は、これを副教材として利用されるのではないでしょうか。評価について他に類似する教材のない言語では、これが利用されるかもしれません。それはそれで望ましいことだと思います。第二外国語として学ぶときも有効な手段ではないでしょうか。たとえば鹿児島にいてもトルコ語を学べるようになりますし、北海道にいてもカンボジア語を学ぶことができるようになります。 黒澤: 外国語教育における評価法、とりわけe-learning環境に関わる問題点がいくつか指摘されました。また、英語以外の言語を外国語として教えている大学の実情なども報告されました。話題の尽きないテーマでありますが、予定の時間になりました。報告者の皆さん、出席者の皆さん、本日はありがとうございました。 (原稿作成 倉嶋 典子、校正 黒澤 直俊、川口 裕司) |