資料2
九一 どうらくハンス
むかし昔、あるところに一人の男がありました。その男は、カルタどうらくにうき身をやっしていたので、世間の人は、「どうらくハンス」とばかりいっていました。どうらくハンスは、いつまでたってもカルタあそびをやめなかったものですから、じぶんの家でもなんでもかでも、おかねのかたに取られてしまいました。いよいよ期限のいちばんおしまいの日になると、借金とりの連中が家をさしおさえるまえに、神さまと、それから聖ペドルスさまがおいでになって、今夜ひと晩だけこの家をおまえのものにしておいてあげようと、おっしゃいました。すると、どうらくハンスは、
「おいらの子どもたちのために、今夜はここにいる。だが、寝台もなし、食わせるものなんかなんにもありゃしない」と言いました。
そこで、神さまが、なんでもいいから、おまえは家をもっていなさい、子どもたちにはわたしどもが何かたべるものを買ってやると、おおせになりました。どうらくハンスには、ほんとうにねがってもないことです。聖ペドルスさまは、どうらくハンスにグロッシェン(五銭貨幣)を三つわたして、パンやへ行ってパンを買っておいでと、いいつけました。
どうらくハンスは、行くには行きましたが、...