文化構造論演習 II
2000年度 第1部 後期・木曜2限
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講義概要
(この部分は履修概要に掲載したものと同じ)
- ベンヤミンの『複製技術時代の芸術作品』を読む。テクストは基本的に日本語を用いるが、適宜ドイツ語ないしは英訳を参照する。
この「複製技術論」は、単にベンヤミンやドイツ思想の研究者にとどまらず、二〇世紀の芸術・映像・メディアの理論に取り組む人にとって必読のものといってよい。このテクストを最初から単純に精読していくかたちではなく、はじめから各自、全体の構造・論点の図式化に取り組んでもらう。その上で、次のような論点から、テクストへのアプローチを行う。
- ベンヤミンの思想とその中での「複製技術論」の位置
- マルクス主義/唯物論的美学の基本的な考え方の枠組み
(その連関で:「伝統的美学」との対比、「アウラ」論、ファシズム批判、他のアヴァンギャルド芸術)
- メディアの転換と知覚の変容
- 映画論――とりわけ初期のロシア映画 (できるだけ実際の映画を取り上げたい)
- テクストは基本的に晶文社のベンヤミン著作集2『複製技術時代の芸術作品』に入っている第三稿を用いる。
テキスト
ベンヤミン著作集2『複製技術時代の芸術作品』晶文社
(第3稿テクストの翻訳)
現在、「著作集2」としてではなく、「晶文社クラシックス」シリーズの一冊として単独に『複製技術時代の芸術作品』(晶文社
1999, \1,900)というかたちで売られている模様。かつての「ベンヤミン著作集2」がまだあるかどうかは不明。いずれにしても、晶文社から出されているこの題名の本です。
ドイツ語と英語のテクストは授業の時配布する。
(ちなみに、現在入手可能な邦訳としては、他に岩波文庫の『ボードレール』(赤463-2)と、ちくま学芸文庫の『ベンヤミン・コレクションT 近代の意味』があるが、両方とも第二稿の翻訳である。)
参考文献
(1) ベンヤミン全般について書かれた本としてとりわけ奨めるのは、
三島憲一『ベンヤミン』(現代思想の冒険者たち9)講談社
1998 \2,816
その他、日本語で読めるベンヤミンについての概説的な文献としては以下のものがあるが、とりあえず上にあげたものを参照のこと。
ベンヤミンの〈問い〉 今村 仁司 著 1995 \1,456
講談社
ベンヤミンの生涯 野村 修 著 1993 \1,165
平凡社
ベンヤミン 村上 隆夫 著 1990 \700 清水書院
ベンヤミン解読 道籏 泰三 著 1997 \2,600
白水社
ヴァルター・ベンヤミン : 近代の星座 / 高橋順一著
講談社現代新書 1071
ベンヤミンの使命 三原 弟平 著 1995 \2,913
河出書房新社
(2) 『複製技術時代の芸術作品』について日本語で書かれた論文
『情報社会の文化2 イメージの中の社会』東京大学出版会1998、中村秀之「飛び散った瓦礫の中を――「複製技術時代の芸術作品」再考」(pp.183-225)
(3) マルクス主義/唯物論的美学の基本的な考え方の枠組みについて
エンゲルス『空想より科学へ 社会主義の発展』大内兵衛訳、岩波文庫
テリー・イーグルトン『マルクス主義と文芸批評』有泉学宙[ほか]訳
国書刊行会 1987
(4) メディアの転換と知覚の変容について
山口裕之 '98インターネット講座「メディア・情報・身体――メディア論の射程」 http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/~yamaguci/inet_lec/inhalt.htm
(5) 映画論・映画史に関して
ベンヤミン「ロシア映画芸術の現状」、同じ『複製芸術時代の芸術作品』晶文社
のなかに収録
山田和夫『ロシア・ソビエト映画史 : エイゼンシュテインからソクーロフへ』
キネマ旬報社 1997
ジェイムズ・モナコ『映画の教科書』フィルムアート社
1983
ダニエル・アリホン『映画の文法』紀伊国屋書店
1980
表現文化コースの催しの一つとして、2000年度にサイレント映画の重要作品を一月に一本見ていきます。できれば、これにも参加して実際の映画にふれることをおすすめします。詳細については、「表現文化コース」の「催し」のページ参照。
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