チューリング・マシン


チューリング・マシンについては、数多くの専門書において説明されており、少なくともコンピュータや数学をやっている人にとっては周知のことでしょうから、そういう人にとっては、以下のようなあまりに概括的な説明は不用かと思われます。本文でとりあげているJ.D.ボルターの『チューリング・マン』の中に、まったくの初心者のためにチューリング・マシンを説明している箇所がありますので、それをそのまま使うことにしたいと思います。



(上の図の説明)「この世界の唯一の住人は論理機械である。この機械は二つの部分からなる。第一の部分は、有限個の操作規則であり、これは何らかの手段で動作部分に組み込まれており、走査中は不変である。第二の部分は、テープであり、この上に可変の情報が書き込まれる。図3-1[著書に組み込まれた、上の図の本来の番号]では、テープは一記号だけを記入できるセルに分割されており、与えられた瞬間にどの箇所が操作されているのかを示すマーカがついている。テープは機械が処理すべき情報を保持している。この例では二進数の情報であり、三つの許容される記号として「0」ち「1」とブランク(何も書かれていない状態)がある。機械が何らかの出力を書くことを選択したときはテープ上のどこかに書き出さねばならない。それは入力情報を消してそのかわりに書かれることもある。また、その右方向に利用できる区画の数は無制限である。さて、操作規則の集合はテープに沿って走るマーカの動作を制御するものであり、チューリング自身は論理用語を用いて書いていたが、図3-1で は英語で書かれている。[もちろん上の図では、「日本語」で] この例では規則は二つしかないが、通常はずっと多く、多分、何十とか何百の単位になる。ただし、その数は常に有限でなければならない。

この機械は順を追って動く。すなわち、一度につき一規則を適用し、規則に書かれている動作を実行し、次に別の規則が適用可能な状況になる。各操作の前後に、機械は限定された数の「状態」のうちのどれ科にあるといわれる。これらの状態は機械を構成した設計者によって定義されるもので、われわれの例ではQ1、Q2と名づけられている。機械はつねに二つの事柄を「知って」いる。すなわち現時点の状態とテープ上で指示されている現時点の区画である。これらに要素が捜査上必要なもののすべてである。というのも、機械は常に現時点の状態と現時点で区画に記入されている記号の二つに対応する規則を見つけることにより、次の動作を選ぶからである。つまり、状態と記号とが機械を動かすのである。

ある規則が適用可能になると次のような動きを引き起こす。すなわち、マーカによって指示された区画に何らかの記号を記入し、マーカを一区画だけ右、または左に動かして現在の状態を変える。チューリング・マシンがデータを取り扱うことのできる手段はこれですべてである。処理過程はこのようにして続き、最後に終了を伝える規則が適用されてそこで仕事が完了する。」(J.D.ボルター『チューリング・マン』67-70頁)


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