1998年度 インターネット講座
メディア・情報・身体 ―― メディア論の射程
第2回・第3回講義
マクルーハンのテーゼの論点
資料04
感覚の変容
- 「ある文化の内部から、もしくは外部から一つの技術が導入され、その結果としてわれわれのもつ五感のうち特定の感覚だけが特に強調され、優位を与えられる場合、五感がそれぞれにつとめる役割比率に変化が生じるのだが、そのときわれわれの感受性はもとのままではありえないのだ。メモ耳も他の感覚も以前とは違ったはたらき方をし始める。感覚の麻痺がない、ごく自然の状態では、われわれの感覚どうしの相互作用は止むことがない。ところが感覚のいずれか一つが増強され、それだけが特に感度を増してしまうと、それが他の感覚への麻痺剤として働く場合がある。「挿入音」を用いて触覚を取り去る歯科医の技術がその一例だ。催眠術にしても特定の感覚を隔離する尾多他の感覚どうしの比率が必然的に狂って自己感覚が失われてしまうのだ。」(『グーテンベルクの銀河系』pp.41)
- <互換の一つが技術によって人間の外部に延長されるとき、その新技術が人間の精神の内部に内化されるのと同じ速度で、文化の新しい翻訳が発生する>(『グーテンベルクの銀河系』pp.66)
- 「ある新技術がわれわれの五感のうちのある特定な感覚をわれわれの外部、そして社会のなかへと延長する。すると五感のなかに新しい比率を作り出すような文化が誕生する、というわけだ。」『グーテンベルクの銀河系』p.67
- 「ここでの唯一の関心はアルファベットがその最初の使用者たちに与えた影響の程度、規模に注目することにある。現実の構成要素のなかに線形的性質や均質性を見いだしたことが、表音文字の新秩序のもとでギリシャ人が行った「発見」であり、また彼らの感覚生活における変化であった。ギリシャ人たちはこうした視覚による認識という新しい知覚形式を芸術に表現したのだった。ローマ人たちは線形生と均質性とを市民生活、および軍事活動の分野にまで押し広げた。そこから生まれたのが[アーチ建築に見られる]自分の視点を中心にしたアーチ系の世界、囲われた空間、もしくは視覚的な空間だった。」『グーテンベルクの銀河系』p.93-94
