復帰35年--この数字に特別の意味はないが、日本復帰の齢を数えるそのたびに、本土と沖縄の捩れた縫合線は活断層のように鳴動する。何がその縫合線を剥離させ、軋みを立てさせるのか。古くは琉球処分、皇民化教育、そして沖縄戦、集団死、米軍占領、軍事基地化、さらに日本復帰、経済開発と島の改造、そこに被さるグローバル経済と世界的軍事再編…。制度化された暴力とアナーキーな暴力の交錯する“われわれの”歴史的特異点沖縄、そこに注目することから、防衛庁の“省”昇格の年、〈暴力論〉を軸に日本とグローバル世界の現在を照射する。
日時:2007年11月10日(土)、11日(日)
場所:東京外国語大学 研究講義棟2階226教室
[プログラム]
特別シンポジウム《沖縄・暴力論 2007》
第Ⅰ部 集団死の特異性(11/10)
11:00-11:10 企画趣旨説明
11:10-12:50 映画『レベル5』(クリス・マルケル監督)
-昼休み-
14:00-15:25 映画『それは島』(間宮則夫監督)
-休憩-
15:35-17:40 シンポジウム:「集団死」の特異性
パネリスト:間宮則夫、仲里効、
米谷匡史、西谷修
司会: 中山智香子
第Ⅱ部 暴力とその表出(11/11)
11:00-12:00 映画『沖縄』(間宮則夫監督)
+トークショー(間宮則夫・中山智香子)
-昼休み-
13:00-14:35 映画『沖縄やくざ戦争』(中島貞夫監督)
-休憩-
14:45-17:00 シンポジウム:暴力とその表出
パネリスト:目取真俊、仲里効
真島一郎、米谷匡史
司会: 西谷修
[概要]
論議の軸として二つのテーマを立てました。ひとつは沖縄戦の特異性を集約する「集団死」にまつわる諸問題、もうひとつは、非武装で知られたこの島々が日本への帰属以降に蓄積することになった〈暴力〉の諸相とその表出です。その二つの軸を通して、提題に込められたさまざまなテーマを論じてゆきます。
議論への入口として今回も映像作品を活用します。まず全体への導入として、フランスの映画作家クリス・マルケルが、沖縄戦へのアプローチを試みて製作した『レベル5』(1996)、ついで、日本復帰の前年に「集団死の島」渡嘉敷に取材した間宮則夫の『それは島』(1971)、さらに間宮が59年に八重山群島と沖縄本島の日常を撮影した『沖縄』(1959)、そして復帰前後の社会的諸力の再編統合のプロセスを暴力団の抗争を素材に雛型のように描き出した中島貞夫の『沖縄やくざ戦争』(1974)。三作目以外は、いずれも仲里氏がその著書で取上げ論述の素材とした作品ですが、資料としてDVDで上映いたします。
ゲストは、沖縄からの思想を世界性へと開きつつ熟成した論議を展開している仲里効氏、『水滴』『魂込め』以来、瑞々しい命の柔らかさとひりつくような暴力性とを印象的なひとつの筆致で描き出す、現代でもっともラジカルな作家目取真俊氏、そしてそれぞれの節目の時期に沖縄に関する二つの得がたい映像作品を撮った間宮則夫氏。その三氏を迎えて、企画メンバーの西谷修(現代思想)、米谷匡史(日本近代思想史)、真島一郎(アフリカ地域研究)、中山智香子(経済思想)が、それぞれの観点から議論を交わします。
(文責 研究代表 西谷 修)
科学研究費補助研究「戦争・経済・メディアから見るグローバル世界秩序の複合的研究」