2009年度前期 開講講座  

主専攻語U  ドイツ語U 文献講読と実践的読解 水1(通年)

arendt


授業の目標
一年次で習得している基礎力を前提とし、その段階を、リライトされた学習用の文章ではなく、実際の思想的な論文を読めるレベルにまで橋渡しするための授業です。
授業の概要
ハンナ・アーレントの思想について論じたKarl-Heinz Breierの小著を、文字どおり精読します。
授業の計画
例年Junius の思想家シリーズを使っていますが、今年も、亡命ユダヤ知識人のひとりであり、ヤースパースとハイデガーから強い影響を受けながら、「政治的なるもの」の本来的な意味を思索した思想家ハンナ・アーレントの巻をとりあげます。彼女は、『全体主義の起原』『人間の条件』『過去と未来のあいだ』などの著作群を通じて、二十世紀後半の政治と文化についてラディカルに考えようとする多くの知識人に決定的な影響を与え、現代思想のもっとも刺激的な参照点となりつつあります。この授業は、これをペースメーカーとして、みなさんが思想的な問題を論じた文章にこつこつと取り組む機会である、と理解してください。文法的にも、意味論的にも、分かるまで説明するというやり方をとっています。
成績の評価
出席と各回の小テスト、教場で訳読を担当したときの達成度、それに休み明けに提出する二回の課題で厳密に評価します。採点方法の詳細は、第一回目に説明します。
受講上の注意
かならず予習が必要です。ちゃんとした準備をしてきていることを前提にして、ランダムに指名した学生に長い箇所の訳読を担当してもらいます。そのときの出来不出来の評価が、他の授業などでの学年末試験の点数にあたると思ってください。また、毎回冒頭で、前の回に扱った語彙や文法などについて小テストをします。ともかく、学期末の試験を一夜漬けで乗り切ればなんとかなる、という性格の授業ではありません。
テキスト・教材
Karl Heinz Breier, Hannah Arendt, Junius Verlag 2001. あらかじめamazon.deなどで購入しておいても構いませんが、希望者がいれば、年度初めに共同購入を試みます。価格は、本体が14ユーロほどです。

 
専修基礎  哲学基礎 哲学を学び始める人のためにT 金2

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授業の目標
近現代哲学の歴史と哲学的思考の基礎を学びます。
授業の概要
「懐疑する」「批判する」という営みに焦点をあわせて、哲学や思想のひとつの流れを、わたしたちの身近な感覚に即して浮かび上がらせます。
授業の計画
知識の多寡ではなく、できるかぎりみなさんが哲学することそのものを追体験できるように努めています。たしかに問題が問題なだけに、けっして平易にスラスラ分かるということにはならないでしょうけれど、これまで考えてもみなかったようなことについて、あえて立ち止まって思惟する場なのだと了解していただければ幸いです。細かい予定表は教場で配布します。
第1回 漠然とした不安と哲学すること
第2回 デカルトについてのABC
第3回 『方法叙説』を読んでみる
第4回 「方法的懐疑」の応用問題
第5回 カントについてのABC
第6回 『純粋理性批判』「超越論的感性論」を読んでみる
第7回 「批判」という企て
第8回 啓蒙とは何か
第9回 ヘーゲルについてのABC
第10回 『精神現象学』「序論」を読む
第11回 「自己意識」の悲劇と「承認をめぐる闘争」
第12回 『法の哲学』と市民社会論
第13回 「ヘーゲル以後」の哲学と講壇の外部
第14回 まとめにかえて
成績の評価
コンスタントに出席することが前提です。成績は、講義の内容に関連して、指定された課題についてのレポートを最終回に提出してもらい、それによって評価します。
受講上の注意
この講義は、後期の「専修基礎科目 哲学基礎 哲学を学び始めるひとのためにU」に連続しています。TとUを連続して履修することで、はじめて全体の意味が分かるという形で組み立てられています。ですから、後期からの留学など、特別な事情のある学生以外は、ふたつの講義を続けて受講することを強く求めます。
テキスト・教材
講義のなかで随時紹介します。
 
専修専門  哲学=思想文化論=政治学(講義) 戦後日本の精神史T 月4 


授業の目標
授業の目標は、1945年以後の日本語圏の思想史を検討し、戦後史におけるさまざまな批判的営みを理解するだけでなく、それらが現代の状況とどのように結びついているのかについて、明確なイメージを獲得することにあります。
授業の概要
Tでは、敗戦直後から60年安保闘争期までを扱います。それぞれの時代状況のなかで、よりよき世界を内在的に実現しようとしたひとびとの格闘などをとりあげ、戦後日本の精神史像を講義していきます。
授業の計画
各回ごとに明確に論点を設定し、特徴的な事件や論争的テキストを手がかりにして論じます。また、随時映像作品なども利用します。
第1回 なぜ戦後思想をいま主題化するのか 視角と問題の設定
第2回 ある《喪の仕事》の形から−柳田圀男の『先祖の話』
第3回 戦後啓蒙と「戦後革命」の原型−大塚久雄と丸山真男
第4回 知識人の「主体性」と「戦後主体性論争」−梅本克己
第5回 複数の占領−済州島蜂起と阪神教育闘争−『朝鮮の子』を観る
第6回 戦後詩にみるふたつの戦後− 『荒地』と『列島』?
第7回 引き揚げ、帰還、被害の経験−『流れる星は生きている』
第8回 国民的歴史学運動と「反米愛国」
第9回 民衆文化とサークル詩の世界から
第10回 『昭和史』論争と反復される対立−日本浪漫派/講座派マルクス主義
第11回 党と大衆と知識人と−「政治のなかの死」と『原点が存在する』
第12回 『日本の夜と霧』を観る
第13回 六○年安保闘争と『民主主義の神話』
第14回 『キューボラのある街』を観る
第15回 まとめにかえて
成績の評価
コンスタントに出席することが大前提です。授業の内容に即して、指定された課題に関する4000字程度のレポートを最終回に提出してください。それによって成績を評価します。
受講上の注意
この講義は、後期の同じ時間帯に開講される「専修専門科目 哲学 戦後日本の精神史U」に接続しています。授業は、この二つをまとめて履修することで、はじめて統一した像が提示されるように組み立てられていますから、留学などの特別の事情がないかぎり、二つを連続して受講してください。
テキスト・教材
岩崎稔、上野千鶴子、成田龍一、北田暁大、小森陽一『戦後思想スタディーズ@〜B』紀伊国屋書店、2008。
岩崎稔、上野千鶴子、成田龍一編『戦後思想の名著 50』平凡社、2006。
岩崎稔、本橋哲也編『21世紀を生き抜くためのブックガイド』河出書房新社、2009。
それ以外にも適宜文献を指示します。
 
専修専門  哲学=思想文化論=政治学(演習) 戦後思想の古典を読むT 金4


授業の目標
哲学的、思想的テキストの詳細な読解を試み、またそれをもとにした発表や討論のトレーニングをします。
授業の概要
戦後日本の精神史に関連する重要なテキストを読み、この主題の深度と広がりをさぐります。
授業の計画
このゼミでは、敗戦期からおおむね60年安保期までの戦後思想を振り返り、それぞれの時代状況のなかで論争となったテキストや、その時代を照らしだす役割を果たしたと考えられるテキストを毎回一点ずつ読んでいきます。毎週の課題の量は、最低でもひとつの論文、多い場合には新書ないし文庫本一冊ほどになりますから、このゼミに参加するためにはしっかりとした予習時間が必要です。指摘されたテキストを読んでこないまま、適当にゼミに参加するという受動的な姿勢の学生には、参加を断っています。
ゼミの進め方としては、指定テキストを全員であらかじめ読んできたうえで、担当者がレジュメを準備して問題提起を行い、それに基づいて全体で議論するという形式をとります。授業の第一回目に、授業計画案に基づいて受講者各自が担当するテキストの分担を確定します。自分が分担したテキストに関わる問題や背景知識、関連文献についても、できるかぎり念入りに調べてください。ゼミというものは、課題文の意味をただ理解するだけでなく、そこから新しい問題を発見したり、自分の疑問や意見を表現したりする技法や作法を身に着ける場でもあります。
なお、このゼミは、講義「専修専門科目 哲学 戦後日本の精神史T」とリンクしています。並行して受講することを推奨します。
成績の評価
演習での討議に果敢かつ積極的に参加してください。成績は、その貢献度をもって評価します。
受講上の注意
留学にかかわる特別な事情のないかぎり、後期のゼミ「哲学(演習) 戦後思想の古典を読むU」も連続して受講してください。また、例年の恒例行事ですが、岩崎ゼミとして、夏休み期間中に二泊三日で合宿を行っています。
テキスト・教材
テキストについては、適宜コピーを準備することもありますが、直接購入してもらうものも出てきます。かなりの点数がありますから、教場で指示します。
 
専修専門  哲学=思想文化論=政治学 卒業論文演習T 金5


授業の目標
広く政治思想、思想文化にかかわるテーマで卒業論文を執筆するための演習です。
授業の概要
とにかくやりがいのある卒業論文を書くための過程です。
授業の計画
政治思想の領域に関連して、参加者がそれぞれ卒業論文の主題として設定したテーマについて、毎回順繰りに報告し、それを全体で討論しながら、卒業論文を仕上げていきます。直接思想家や理論家を取り上げるだけでなく、現代世界の課題や文化的現象を正面から考えてみるような問題設定でも構いません。要は、いかに自分自身で思考することで、見えないものが見えてくるようになるのか、自明のものを疑うようになるのか、という過程が大切です。
成績の評価
演習の過程を見て、公正に評価します。
受講上の注意
これまでこのゼミで執筆された卒業論文は、かなり広範囲に及んでいます。それでも自分が想定している主題が受け入れられるかどうか心配なひとは、事前に相談に来てください。
できるだけ、早い段階で自分のテーマを見つけることをすすめます。なお、例年のことですが夏休みの時期に、哲学・思想文化論ゼミと合同で合宿を行います。
テキスト・教材
演習の性格からして、ありません。
 
院前期共通  超域文化研究=メディア文化研究 ジュディス・バトラーを読むU 金3

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授業の目標
ジェンダー論の新しい地平を前提にして、9/11以後の状況のなかでの「生」の危うさについて考えます。前年度に開講したものをTとして、前期は「ジュディス・バトラーを読むU」、後期は「ジュディス・バトラーを読むV」としています。
授業の概要
ジュディス・バトラーのPrecarious Lifeを英語で読みます。
授業の計画
必要とあれば、バトラーの他の著作や、「生」や「喪の仕事」に関する他の思想家の論文も参考にしながら、各章ごとに読解していきます。毎週の議論のために、一定のリーディング・アサインメントを課すことになりますから、それをこなすということが受講の前提条件です。
成績の評価
授業の出席と、そこでの議論への貢献度を見て、公正に評価します。
受講上の注意
学部の岩崎ゼミと合同で、夏季に二泊三日の合宿を行います。
テキスト・教材
Judith Butler, Precarious Life: The Powers of Mourning and Violence, London and New York: Verso 2004を使います。邦訳は本橋哲也訳『生のあやうさ』(以文社、2007)があります。

 
院後期共通  思想文化論 ヘーゲル『精神現象学』読解

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授業の目標
ヘーゲルのもっとも謎めいた著書『精神現象学』が1807年に公刊されてから、ほぼ二百年がたとうとしています。この授業では、あらためてこのテキストの一部を詳細に検討しながら、ヘーゲルの思考の現場をたしかめ、その息づかいにふれてみます。
授業の概要
ひとりではなかなか読みきれないヘーゲルのテキストを、それこそ、舐めるように少しずつ読んでいきます。
授業の計画
『精神現象学』は日本語でも三つの翻訳があり、フランス語、英語なども存在しています。ですから、ドイツ語の原書を基本のテキストとしますが、ドイツ語が分からない学生は、どの翻訳を使ってもかまいません。予断で近づくのではなく、ひたすらヘーゲルが遂行しているロゴスの運動性を経験するということに眼目をおいていま
す。
成績の評価
各回の出席、予習ぶり、議論への貢献度を勘案して、公正に評価します。
受講上の注意
ありません。
テキスト・教材
すくなくとも一冊、原書(Suhrkamp版の全集第三巻が望ましい)か翻訳(平凡社ライブラリーに入っている樫山欽四郎訳が相対的には廉価)を一冊準備しておくこと。また他の翻訳で参加するひとは、それぞれの言語の翻訳書を自分で探しておいてください。どの言語でも構いません。

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