Deber と deber de の違いについて日本の辞書を見てみると、 deber + inf. は義務または推測を表わし deber de + inf. は 推測を表わすことになっています。 Deber + inf. の推測の用法については、たとえば 白水社の辞書 が deber de + inf. の中で説明しているのに対し、 研究社の方 は語義を一つ立てていますが、 どちらにしてもその存在が確認されています。
義務 | 推測 | |
deber + inf. | ◎ | ◯ |
deber de + inf. | ◎ |
ところが、実際のスペイン語を読んだり聞いたりしていると、 特に聞いていると、 どうも上の表の空欄部分、つまり deber de + inf. で義務を表わす場合がかなりあるような印象を受けます。 つまり deber の後に de があってもなくても同じということに なってしまいます。
スペインの辞書は deber + inf. が義務 deber de + inf. が 推測と決めつけているものが多いのですが、 たとえばMoliner の辞書 (第2版) では語義はその2つだけ挙げておいて、 使用に関する注で「deber de を義務の意味で使うのは、 珍しくない (no raro) が、間違い」としてあります。 これで2つのことが分かりました。 ひとつには deber de + inf. が義務を表わすというのは 私の勘違いではないということ。 もうひとつは、スペインの辞書が一見日本の辞書よりも 記述の精度が低いように見えるのは、 その規範的な態度に原因があるということです。 つまり、上の表の◎の部分に合わせて deber と deber de を使い分けましょうというのが基本姿勢で、 それ以外の用法は実際に存在しても無視するか、 「間違い」ということで使わないよう勧めることになるわけです。
我々学習者は、言ったり書いたりするとき、 この「お勧め」に従っておけば問題なく 過ごすことはできるでしょう。 しかし、聞いたり読んだりするときのために deber de + inf. に義務の用法があることを頭に入れておく必要があります。 実際、ある調査によれば deber de + inf. の中で義務と 推測の用法の割合を見てみると義務の意味で使われることの方が 多いそうです。 しかも、この2つの用法は昔から厳格に区別されてはいませんでした (Alarcos 1994, p.264)。 だいたい de のある無しで2つの意味を厳密に区別しようなんて、 スペイン語のノリを無視した大それた考えなのです。 これから先、エラい先生がいくら頑張っても区別が定着する可能性は 低いと思います。
2001/08/07 (2000/07/19)
KAWAKAMI Shigenobu