ゴビの蜃気楼 日本語訳 上村 明 1 制作会社 モンゴルキノ映画製作所 監督 R.ドルジパラム 脚本 B.バルジンニャム 撮影 B.バルジンニャム 音楽 D.ジャンチブ 美術 B.ボルド エンドテーマ作詞N.ガンホヤク 2 配役 ハシフー T.エルデネトクトホ ノミン Ya.オヨーンツェツェク アルスラン G.ドルジサンボー ダンバ J.ザナバザル ナンザト N.ツェウェーンラブダン 3 こんにちは。 4 こんちわ。 5 あなたたち飛行場まで行く? 6 いや。 7 どうしよう。 8 おい。 9 よせよ。 10 お帰り、ぼうず。 11 ただいま。元気だった? 12 ここだ、ここだ。 13 お父さん、お父さん。 14 お元気ですか? 15 ああ。 16 君の自転車だ。 17 ありがとう。 18 いや。 19 やあ。 20 元気だった? 21 ああ。 22 新しく来た校長だよ。 23 君たち。学校はどこ? 24 あそこ。 25 ああそう。 26 がんばってな。 27 ありがとう。さようなら。 28 さようなら。 29 こんにちは。 30 こんにちは。 31 校長先生? 32 ハシフーです。 33 どうも。校長先生、新居の完成だ。 33b バヤンゴビ郡中学校。 33c バヤンゴビ郡役場。協同組合。 34 誰もいないのか? 35 早く発電機をまわせとアルスランに伝えろ。 36 入っていいですか? 37 かまわん。入れ。 38 こんにちは。 39 ああ、こんにちは。 40 えーと、君は誰のところの息子だったけ。 41 ああ、校長先生?そうでしたか。ようこそいらっしゃいました。 42 ありがとうございます。 43 おすわりください。 44 ところで何の先生です? 45 ロシア語です。 46 希望されてここにですと。 47 ほほお、希望して管理職になれることもあるんですね。 48 いや、冗談、冗談。 49 ロシア語の先生とはまた結構なことです。ゴビでは水ぐらいに必要ですからな。 50 もちろん、ご自分も授業を受け持たれるんでしょうね。 51 校長の仕事はたいへんですよ。でも若さでみんなに活を入れてくれるでしょうな。 52 ハシフー先生、で、ここを選ばれたわけは? 53 ここの生まれでも? 54 いいえ。友だち何人かで、 55 辛くとも、遅れた地方でがんばろうと誓い合ったんです。 56 うちを遅れてるだなんて、どこで聞いたんです? 57 いえ、ただ、 58 これを見て決めたんです。 59 ほほお、うちを誉めてでもいるんですか? 60 やや、私に内諸でこんなものを。 61 やっぱりボルマーだ。どれどれ。 62 協同組合は教育に無関心で、 63 校舎は2年経つが半分も完成していない。 64 子供たちは新学年から新しい校舎で勉強するんだと楽しみにしているのに 65 郡長のソミヤー氏は何の手も打とうとしない。 66 新しい教育制度に彼が無関心なのは残念なことだ。 67 なんだ、これは。ゴビはほかの地方と違うんだ。 68 人は少ないし、同じようには行かんのだ。 69 私の仕事はまず、郡の経済を自分の足で立たせておくことなんだ。 70 学校を見てきましたが、ここに書かれてあるとおりだと思いました。 71 校舎をちゃんと修理しなければいけません。郡長、職員たちはどこですか。 72 先生はみんな草刈りに行ってしまっているよ。 73 家畜の飼料の草刈りは郡全体の仕事ですからな。 74 子供たちの教育も郡全体の仕事でしょう。 75 校舎の建物はまあ何とかしっかりしています。 76 教室をひとつだけ塗り替えるだけの資材もあります。 77 人手も出してあげましょう。 78 前にやったことのある人間もいます。 79 授業にはまだ間がありますしね。 80 教室をひとつだけですって。全部の教室の壁を塗り替えるんです。 81 ですから郡長、先生たちも呼び戻してください。 82 こんにちは。 83 こんにちは。ようこそいらしゃった。あんたのくつかね。 84 そうです。 85 わしの名はダルマーです。新しい校長かね。 86 すみません、おこしいただいて。これから校内を見に行きましょう。 87 ああ、そうしょう。 88 なんでこんなきたない色に塗ったんですか?ほかの教室も同じように? 89 もちろん、悪くないでしょうが。 90 こうすれば子供たちがインクをふりまいても目立たんからわざとやったんですよ。 91 ちゃんと実用に裏付けられた色ですんじゃ。 92  93 「実用」「実用」って。ほかに色はないんですか? 94 あるのはこれだけです。何年分も持つだけありますよ。 95 それは家畜の柵にでも使うんですね。 96 壁をみんなうす緑に塗るんです。 97 明日、都市(まち)からペンキを調達して来てください。 98 そうですかー。郡長とも相談されたんでしょうな。 99 あなたの仕事は校長の私が決める。 100 それと、寄宿舎のあのベッドは取り替えるように。 101 とんでもない。子供は子供ですよ。校長先生、上で飛び跳ねていく日ももちません。 102 新しい寄宿舎が出来てからにしようと思っておるんです。 103 わしが大切に保管してきたベッドなんですから。 104 校長先生、水を持ってきましたぞ。 105 都会(まち)の人じゃから水がなければ、さぞ困るじゃろ。これでほこりを洗い流すんじゃ。 106 冷えてきたから、食事を作ってゆっくり休みなされ。 107 もういいです。 108 そうかい。 109 誰だい。 110 やあ君か?こんにちは。 111 こんにちは。 112 ああ泡だらけになっちゃって。 113 ごめん。君の名前は? 114 さあ流してくれ。 115 おーい、校長先生よー。 116 先生に御馳走をお持ちしましたぜ。 117 あんなもの、どうしろって言うんだ。 118 いらないから、持ってってくれ。 119 上からのお達しでさあ。 120 さあ起きて。朝食を食べなされ。 121 田舎で朝寝はいけませんぞ。 122 じいさん、これどうしたの。 123 スープを飲みなされ。山羊の肉は熱いうちに言いますからな。 124 昔は「男の誇りは速い馬と鋭いナイフ」と言ったものじゃが、 125 今の若いもんは軟らかい肉ばかり食って、歯まで悪いときてる。 126 ダンバじいさん、前の校長はどうしたの? 127 気の毒に。物分かりの速いすごい人じゃったが。去年オートバイから落ちて突然。 128 娘さんに何も残してやれなんだ。可愛そうになあ。 129 娘って、今どこに? 130 ほれ、郵便局で働いている。 131 あー。 132 この人? 133 どれ。そうじゃ。お姿のままじゃ。 134 さあさ、スープを飲みなされ。 135 残りの肉は、食堂の貯蔵庫にあずかってもらったから。 136 小食なお前さんには、一年分といったところだわい。 137 ええ、分かりました。はい、分かりました。 138 こんにちは。 139 こんにちは。 140 手紙来てない? 141 まだ着くわけないでしょう。さっき電話で話したんでしょう。 142 まあね。 143 この暑いのに、行ったり来たりじゃ太陽にやられるわよ。 144 電話してから来たら。 145 君この写真見た? 146 どこにあったの? 147 机を整理してたら出てきたんだ。思い出の写真なんだろ。 148 そうよ。 149 よかったら引き伸ばそうか? 150 ありがとう。ノミンよ。 151 ハシフー。 152 知ってるわ。 153 僕も知ってるよ。 154 さようなら。 155 さようなら。 156 じゃあダルマーさん、ペンキが用意できましたから仕事にとりかかりましょう。 157 校舎は今年中に塗り替えれば、それでいいでしょう。 158 でも寄宿舎というやっかいなものが残ってます。 159 そうですか。郡長とも相談されたんでしょうな。 160 郡長とは一触即発の状態でね。 161 校舎は基礎がしっかりしてるから二階建てにしようって言ったら、 162 ソミヤー郡長、金も時間もないと相手にしないんです。 163 どうせ建てるんなら、何年先にも使えるものをと思うでしょう。ええ? 164 そうですかねえ。 165 これだけひろい土地があるんですから、 166 どうしても二階建てにする必要があるんですかね? 167 二階建てにするにはちゃんとした建築士が必要ですが、 168 ここでは見つからんでしょう。 169 いや、やろうとすればやれるはずですよ。 170 平たい建物ばかり無造作に建てていったら 171 しまいには電話や水道を敷くのも大変になってしまいます。 172 節約しようとばかり考えるから、あなたたちはこんなことも分からなくなるんですよ。 173 県の教育局と話をつけるよ。 174 そうですか。これも郡長と相談されたほうが。 175 じゃ、わしは積荷を降ろします。 176 なんてのんきな連中なんだ。 177 さあ狩猟免許証を出せ。 178 狩猟免許証って? 179 狩猟協会の会員証のことだ。 180 さあさあ早く早く。 181 そんなもの持っていないよ。 182 じゃあ銃を出せ。 183 銃って?銃なんか撃たないよ。 184 じゃ君はなんで猟をするんだ。 185 僕は今までネズミを傷つけたこともないよ。 186 ナンザトだ。 187 ハシフー。 188 狩猟監察官だ。すまんすまん。 189 新しく来た人間は取り調べることになってるんでね。 190 3つの郡を受け持ってるんだ。 191 たいへんだね。 192 まあたいしたことないさ。晩うかがうよ。 193 ちょっとちょっとスピード出し過ぎよ。 194 ごめん、ノミン。でもこの道が悪いんだから。 195 都市(まち)も恋しいさ。 196 でも田舎もいいもんだ。特にここのひとたちは。 197 はじめは話も合わないで大変だが、 198 親しくなると本当に親身にしてくれる。 199 僕がここに来たのは、 200 いくつも大事件を解決して警察学校に入り、 201 シャーロック=ホームズのようになろうと思ったからなんだ。 202 でも一年経っても、 203 かもしかの密猟が2件あっただけで大事件なんてない。 204 これは事件と思ったこともあったんだが。 205 よかったら聞かせてくれないか? 206 秘密でもないからな。 207 去年の春、前の校長がバイクで遠出して事故にあったんだ。 208 現場につくとバイクはあるが本人がいない。 209 捜しまわったあげく、100メートルも離れたところで見つけた。 210 これは事件だとピンと来たわけさ。 211 そこにトラクターの轍があったんで、あの電気工のアルスランを疑ったんだ。 212 アルスランだって? 213 そう。アルスランが時々ガゼルを密猟しているって耳にしていたからね。 214 ちょうどそこに校長が出くわして殺されたと推理したんだ。 215 そこで県から検事を呼んで 216 アルスランを取り調べ、自白させ、 217 これで一件落着と思ったんだが、 218 あいつ検事に言うには、 219 自分はうその証言をしました。 220 あそこを通ったのは事件の前日ですって。 221 証人も出てきて、 222 しまいには無実の人間を訴えたと、僕の方がこってりしぼられる始末さ。 223 人間だれだって間違いはあるさ。 224 音楽でも聞けよ。 225 おい、これ見な。なんていかすんだ。 226 馬力もあるんだろうな。 227 かなりのもんさ。レース用だ。 228 時速250キロ、34馬力だって。 229 だろうな。こんなのに乗ってぶっ飛ばしてみたいな。 230 君、都会(まち)から来たんだから、新しい雑誌か本持ってきただろう。 231 ロシア語なら何冊かあるけど。 232 じゃ、それを貸してくれ。 233 僕にもシャーロク=ホームズがあるけど、暗記するほど読んだからな。 234 じゃ、本持ってくるよ。 235 さあ、しっかりつかまって。 236 ちょっと待って。 236a じゃあ。 236b さあさ。 237 じゃ、ふたりとも降りなさい。 238 ありがとう。 239 どういたしまして。 240 久しぶりじゃなあ。 241 ただいま。おとうさん、元気? 242 元気じゃとも。おまえは? 243 元気よ。あかあさん、元気でいた? 244 元気だよ。 245 やあ、飛行士さんたち、ごきげんよう。 246 やあ先生、文化の種とやらは撒けてますかい? 247 やあ、ノミン、こっちに来な。 248 お前にいいもの持って来たから。 249 元気かい? 250 よう。 250a それで。 251 やあ。 252 どうだい調子は? 253 あの校長、怒っちゃったみたいだな。行っちゃったよ。 254 ほんとだ。 255 アルスラン、お前が頼んだ例のもの持ってきたよ。 256 そうかあ。 257 ほら。じゃ、行こうか。ノミン。 258 君君、ここにすわっちゃいかん。降りなさい。 259 これも持って。 260 ハシフー。あなたに手紙よ。 261 おかあさんから。 262 パイロットのくれたプレゼントか。 263 ごめん、ノミン。手紙来てない? 264 さっき渡したばかりでしょ。 264a 営業時間。昼休み。 265 ノミン、今晩パーティーがあるっていうけど、君行く? 266 こんにちは。 267 ああ。校長先生、こんにちは。 268 ウランバートルに長距離頼む。 269 もしもし、もしもし。 270 校長先生、こんばんわ。 271 こんばんわ。 272 教養のある人間はちがいますねえ。時間ピッタリですよ。 273 どうぞ、どうぞ。 274 このクラブの主任です。映写技師もパーティーの運営もやります。シャーリーです。 275 これから私の作った映画をお見せします。 276 自分の郷土のことを知っておいて損はないでしょう。 277 そのとおりです。 278 ゴビからどれだけ多くの有名人が出たか分かりますよ。 279 さあさ、ここでおしゃべりしていても始まりません。席の方にどうぞ。 279a ええ。 280 ここの人たちは見飽きてしまいましたから。 281 押し寄す国民党の軍勢を    先回りして撃滅し 282 悪逆無道のダンビージャーを    岩のとりでに葬り去り 283 勇猛果敢で鳴り響く    勇士ナンザト、ゴビの人。 284 人民大衆生かさんと    あたら命を投げうちし 285 反革命の手に落ちて    なおも誓いを守りぬき 286 永遠(とわ)の別れを民に告ぐ    列女ボルもゴビの人。 287 潅木しげる暑きゴビ    愛するらくだを放牧したる 288 組合員われらの    名を世に知らしめたる 289 その名も高き労働英雄    らくだ飼いフレート、ゴビの人。 290 生まれ育ちし、わが故郷    うるわしきゴビの地よ。 291 かくも古き    かくも奇しきわが故郷。 292 調子はどうだい? 293 やあ、元気か? 294 ああ。踊りたくてウズウズしてるんだ、田舎まわりばかりしててね。 295 そうかい。 296 さあ、踊るぞ。 297 こうしてすわっててもしょうがないな。踊るか。 298 おっと 気をつけろよ。 299 何だと。 300 コンチクショー。(キーワードとなる言葉なのでカタカナで表記のこと422,487) 301 もしもし。 302 よく眠れた? 303 君たちのお陰でぐっすりさ。 304 こんなに眠ったの生まれてはじめてだよ。 305 何いってるの。分からないわ。 306 じゃ来てみたら。 307 なんで私が行かなくちゃいけないの? 308 僕は外に出られないんでね。なにしろ来なよ。 309 おはよう。 310 おはよう。 311 いったい、それどうしたの? 312 こんなに男前にしてもらったというわけさ。 313 杭に縛られたまま一晩すごしてね。 314 英雄は立ったまま眠るというのは本当らしいよ。 315 どうしましょう。だれがやったの? 316 僕に分かりっこないだろ。 317 ははあ、だれか見当がついたわ。 318 誰だよ? 319 待ってて、私が確かめるから。 320 足もと手もとに気をつけてな。 321 どれ、言わんこっちゃない。簡単なことにもコツというものがあるんじゃ。 322 こんにちは。 323 やあ。 324 火をくれ。 325 さあ暑くなる前にちょっと手をつけようか。 326 なあ、ダンバじいさん。 327 校長はきのう寝てないんじゃ。休んでもらおう。 328 2人で終わらせてしまおう、アルスラン。 329 そうしよう。そうしよう。おーい、校長、もういいよ。 330 やめて休みな。おれがやるからさ。 331 わしにこれを読んで聞かせてくれ。 332 薬の説明書きじゃよ。 333 間接痛などに塗布する。 334 医師の指示にしたがって使用のことって書いてある。 335 ソミヤー郡長の言ったのとぴったり同じじゃ。たいしたもんだ。 336 僕を試験したの?それともソミヤー郡長を? 337 「可愛い背をした黄毛の馬よ、 338 こちらに戻る姿でお前と分かる。 339 妙なる音色の立琴よ、 340 その形を見れば...」 341 ノミン、ごめん、許してくれ。 342 ノミン、怒るなよ。なー。 343 出てって。 344 ノミーン。 345 君がいないんでみんな困ってるんだ。 346 君を捜してテンヤワンヤさ。早く行って発電機をまわしてくれよ。 347 暗くなったんでオレを思い出したってわけか?えー? 348 手を出しな。 349 きのうのこと許してくれ。少しやりすぎた。 350 ちょっと怖い目にあわせて、すぐに縄をほどいてやろうと思ったんだが、目が覚めなくてね。 351 お前も男だ。忘れて水に流してくれ。いいだろ。 352 いいよ。そんなもんさ。 353 それから、ノミンにもう怒らないでくれって、言ってくれないか? 354 カンカンで口も聞いてくれないんだ。 355 ああ、そうそう、忘れてた。 356 ノミンが君にまきを運んでくれって言ってたよ。 357 本当か? 358 本当だよ? 359 男というもの、こう来なくっちゃあ。 360 校長、お茶はどこ? 361 ちょっと待って。 362 この教室でノミンは勉強したんだ。 363 そうなんだ。 364 この校舎、建ててから何年になるんだい? 365 さあ知らないなあ。 366 オレが学校に上がったころにはあったからなあ。ダンバじいさんに聞けよ。 367 かれこれ30年以上にはなるじゃろなあ。 368 新しい校舎になるんだ。 369 子供たちが喜んで来たくなるような、そんな校舎にするんだ。 370 一階建てかい? 371 何階建てでもいいさ。 372 一番上の階には校長室がございます、か。 373 いや冗談じゃない。みんなで力を合せれば出来るさ。 374 やあやあナンザト様のおでましだ。 375 やあ、みんな。どれ、のどが渇いたな。 376 これはこれはナンザト殿、いつもとお乗物が違いますが、どこに行かれる? 377 えーい、うるさい。 378 どうしたんだい? 379 「テーギーン・エヘ」で車が一台ガゼルを追いまわしてたんだ。 380 すっ飛んで行くと、車は逃げる。 381 ところがあのポンコツ、エンストしたまま動いてくれないのさ。 382 オートバイを新しいのにしてくれって言ったのに、聞いてくれないからこんなザマさ。 383 それでおきざりにして来たってわけか? 384 取りに行っても、狼が乗って行っちゃってるぞ。 385 ヒマだったら取りに行ってくれるとありがたいんだが。 386 お前にはずいぶん世話になってるからな。 387 トラクターはお前個人の物じゃないぞ。 388 いいさ、おエラ方と話をつけるから。 389 2人とも頭を冷やせ。 390 アルスラン、君はやくとって来てやれよ。 391 やや、2人ともいったいどうしたんじゃ。 392 いや、ちょっとしたこコソドロがいるんでね。 393 いいさ、お前のしっぽは必ずつかんでやるから。 394 冗談だよ。 395 どれ、アルスランたばこ一本くれ。 396 ダンバじいさんに、たかれよ。 397 さあ、ゆっくり一服としよう。 398 もしもし、もしもし、ドラーン村聞こえますか? 399 もしもし、ドラーン村聞こえますか? 400 もしもし、もしもし、気象警報を伝えます。 401 気象警報を伝えます。 402 今夜のそちらの天気、 403 強風と豪雨あり。 404 強風と豪雨あり。 405 洪水に注意。 406 フルムン、聞こえますか?フルムン、聞こえますか? 407 気象警報を伝えます。 408 気象警報を伝えます。 409 今夜、第一、第二村に強風豪雨あり。 410 洪水に注意。 411 降って湧いたように緊急の仕事が来るんだから。 412 北部の2つの村はオゴルズになるようよ。 413 オゴルズってなんだい? 414 オゴルズって今まで聞いたことないの? 415 ああ。 416 ものすごい砂嵐のことよ。 417 ゲルを丸ごと吹き飛ばしてしまうこともあるんですって。 418 ノミン、これ誰のオートバイだい? 419 死んだお父さんの。 420 売ってしまえばって言われるけど、物を食べるわけでもないから、そのままにしてあるの。 421 ごめんよ、ノミン。 422 コンチクショー。 423 この借りはちゃんと返してもらうからな。さあ、急いだ。 424 おい、こっちに来な。さあ、これをよく見て乗るんだ。 425 ああ。 426 あれ君たち、抱き合って乗っちゃって、驚いたなあ。 427 こいつ、メカにかけちゃ、本当にアルスラン(横綱)だからな。 428 いや、メカの奴隷にもなれないさ。 429 仕事は、はかどってるかい? 430 かなりじゃな。 431 君たち休むってこと知らないのかい?今日は日曜日だぜ。 432 それがどうした? 433 ダンバじいさん、たばこくれ。 434 たばこならあるよ。 435 おいおい、箱ごとなんて、えらく豪勢じゃないか。 436 人からもらったんだ。地質調査の人から...ほら、どうだい。 437 いいよ、僕は吸わないから。 438 さあさ、そろそろ仕事に戻るとしようか、ダンバじいさん。 438a 黄色のペンキ持って来るって言ってたけど、持ってきたかね。 439 ナンザト、君、ドラーン村まで、ひとっ走り乗せて行ってくれないか? 440 ちょっと用事があるんだ。 441 いいよ。僕もむこうに用があるし。 442 だけど少し遅くなるかもしれないよ。 443 あの山は、北岳って言うんだ。 444 あそこで少し休もう。 445 岳だって?うちの方じゃ、あれは丘だよ。 446 まあ、黙ってな。他ではお目にかかれない野性動物を見せてやるからさ。 447 おいその水を飲むんじゃない。飲めない水なんだ。 448 そんな水もあるんだ。 449 もちろんさ。さっき言った北岳はここだよ。 450 さあ、あそこに出て来たぞ。昼の暑さで水を目指して走ってるんだ。 451 どれどれ、見せてくれ。 452 あれさ。 453 どこだい?ちっとも見えないじゃないか。 454 何言ってるんだ。あそこに、肉眼でも見えるよ。 455 よしよし、1頭、2頭、3頭、4頭、 456 5頭、6頭、7頭、8頭...やや。 457 8頭しかいない。 458 そうだ、アルスランの奴に決まってる。 459 二三日前にここに来たんだ。 460 待て待て、もう1頭出て来たぞ。 461 9頭だ、9頭。 462 やった、全部いるぞ。 463 坊主憎けりゃケサまで憎いというが、アルスランをちょっと疑い過ぎたな。 464 僕はこいつらを自分の命と同じくらい思ってるんだ。 465 去年から、ここにやって来るようになったのさ。 466 アルスランと僕の他は誰も知らない。 467 ナンザト、君ジェット機に乗ったことある? 468 あそこに寄って、何か飲んで行こうか? 469 そうしよう。 470 こんにちは。 471 こんにちは。 472 どうも。 473 こんにちは。 474 こんにちは。 475 おすわりなさい。 475A おい。 476 やあ。 477 おや、ナンザトか。 478 新しい校長を連れて遠出かい? 479 調子はどうです? 480 まあまあです。 481 お茶をどうぞ。 482 今日だんなは羊の番かい? 483 そうですよ。 484 これを召し上がれ。 485 ええ。 486 君ここで仕事なの?それともなんだ,.. 487 コンチクショー。ここの引っ越しを頼まれたのさ。 488 ははあ。 489 どこに引っ越すんです? 490 近くですよ。すぐ北の「シャル・トゥフム」に。 491 そうですか。 492 ナンザト。 493 ああ。 494 今の運転手知っているの? 495 知ってるよ。地質調査の運転手だ。 496 快活な好青年さ。 497 一緒にいて退屈しないよ。   そう。 498 おい、眠っちゃったのかい?どうしたんだ? 499 ナンザト、さっきの男だけど、きのうの夜アルスランと鹿を運び込んでたよ。 500 なんだって?どうして分かったんだ? 501 きのうの夜、アルスランと鹿を運び入れる時、「コンチクショー」と毒づいたあの声に間違いないよ。 502 みてろよ。 503 おや、お前は。 504 さあ、僕のオートバイを積むんだ。 505 ナンザト待て。冗談よせ。 506 さあさあ、だまって積むんだ。 507 荷台に乗れ。 508 しょうのない物を乗せて、こんどまたこんな物持ち込んだら承知しませんからね。 509 こっち、こっち。 510 やあ、飛行士さん、ごきげんよう。 511 やあ。君たちすっかりくっついちゃったみたいだね。 512 アルスラン見なかったかい? 513 あいつかい?町にでも行ったのかな? 514 校長先生、ご所望の品お持ちしましたよ。 515 全部教科書ということで。 516 おいおい、乱暴に扱うなよ。 517 いいよ、僕が自分でやるから。 518 ノミン、冗談だよ。ごめん。 519 さあ。 520 なんだいらないのか? 521 それで君何て言ってやったんだい? 522 なんでもいいでしょ。それより2人で行きましょ。 523 すまない、アルスラン。僕が言ったんだ。 524 あやまることないさ。正しいことしたんだから。 525 ノミンの父親はオレの先生だったんだ。 526 オレにとてもよくしてくれた。 527 思い出すよ。ノミンなんかこんなに小さくてさ、いつもオレについて歩いた。 528 オレたち兄弟みたいに育ったんだ。 529 弟たちとも家族同然さ。 530 オレは子供がそのまま年を取ったようなもんさ。 531 アルスラン、君どうして結婚しないの? 532 「かくも麗し、ますらおならば 533 恋する乙女もまた多し。」 533a ノミンに 誕生日おめでとう。云々。 ハシフー 1980.8.30 ? (誕生日のプレゼントの本の裏表紙) 534 アルスラン、2人で踊りましょう。 535 オレうまくないから。 536 いいじゃない。踊りましょうよ。 537 踊りなよ。 538 それじゃ、3人で。 539 踊れよ、踊りな。 540 さあ、ノミン、誕生日おめでとう。 541 ノミン、おめでとう。 542 ありがとう。 543 飲みな、飲みな。 544 自分も飲みなよ。 545 さあ、踊りだ。 546 踊りだ。 546a アルスランよりノミンに。 547 お早ようございます。 548 おはよう。 549 お早ようございます、校長。休みはいかがでした? 550 ゆっくりしたよ。 551 お早ようございます。 552 お早よう。 553 校長どうしたんです?戸が開かないんですか?どれ。 554 ははあ、ペンキでくっついてしまったようですな。 555 ありがとう。ところで君は誰です? 556 国語担当のダムディンです。 557 君、服を着替えてネクタイをして来たまえ。もっと教育者らしく。 558 着替えてくるまで校内に入っては行けません。 559 ダルマーさん、あなたどうしてもっと大きく作るらなっかたの? 559A 「新年度の学習と労働に大きな成果を出そう。」 560 しょうがないだろ、他になかったんだから。 561 おーい、みんな、こっちこっち。 562 大切にな。 563 さあ。 564 君はこれを。 565 アルスラン、どこに行くんだ? 566 これはお前のトラクターじゃないぞ。 567 アルスラン、どうしたんだ? 568 オレはなあ、生まれて初めて地面とオサラバするんだ。 569 郡の上をぐるぐる飛んでくれよ。いいだろ? 570 分かった。機長に言うよ。 571 何人乗った? 572 大勢ですよ。 573 電気工に、発電技師、 574 修理工に、トラクター運転手。 575 おーい、ここで止めろ。降りるぞ。 576 おーい、ここで止めろ。降りるぞー。 577 おい、降りるぞ。 578 後ろで、何言ってるんだ? 579 気でも違ったか? 580 じゃ、自分で降りる。 581 おい、アルスラン待て待て。 582 これに吐け。 583 そうじゃない。降りたいんだ。 584 待ってろ。なんて馬鹿な奴なんだ、お前は。 585  晴れ渡る天の日とたわむれ はるかなる野に育ち 馬の尻に鞭ふり 大人(ひと)となったからには 身内なる暑きゴビは 母の愛でつながる アイ ホー ゼー ホー 黄金のわがゴビよ 一歩も離れがたき わが生まれし故郷 蜃気楼の長く燃え立つ 夢のゴビに名を響かせ 家畜の群とともに生き 男を上げたからには 身内なる暑きゴビは 母の愛でつながる アイ ホー ゼー ホー 黄金のわがゴビよ 一歩も離れがたき わが生まれし故郷 完