『<小林よしのり『台湾論』>を超えて』出版記念 日台共同シンポジウム

<小林よしのり『台湾論』>を超えて


●日時:5月12日(土)14:00〜17:00

●場所:東京大学本郷キャンパス、法文2号館2番大教室(安田講堂に向かって右側の建物、「文学部」教務の上)

●資料コピー代:500円

●主催:東アジア文史哲ネットワークEast Asian Network of Cultural Studies 
(ENCS)

●連絡先:bunshitetsu@hotmail.com

●プログラム
 全体司会:坂元ひろ子(一橋大学教員)
1 問題提起――『台湾論』が持つ意味、『台湾論』のもたらした社会的影響について
 日本側から:丸川哲史(学習院大学東洋文化研究所助手)
 台湾側から:陳光興(台湾・清華大学教員)
2 植民地近代性(コロニアル・モダニティ)と民族アイデンティティ
 森宣雄(日本学術振興会特別研究員)
 夏鑄九(台湾大学教員)
3 日本のネオナショナリズムを考える
 上杉聰(日本の戦争責任資料センター事務局長。著書:『脱戦争論』)
 渡辺信夫(台湾の元「慰安婦」裁判を支援する会)
4 パネルディスカッション
 講評:姜尚中(東京大学教員)

●私たちはなぜシンポジウムを行うのか?

 2000年10月に出版された小林よしのりの漫画『新ゴーマニズム宣言 台湾論』は、過去の日本による植民地支配を正当化し、従軍慰安婦問題などの戦時犯罪の否認をするなどの内容を持っています。小林『台湾論』はそのために、台湾内部の親日派を利用することによって、つまり台湾人の証言によって自説を裏づけているという特色があります。台湾人の証言を悪用しているがゆえに、さる2月、台湾で翻訳版が出版されると、婦女救援基金会など様々なポジションからの批判が起き、台湾では、連日新聞の第一面を飾るような大騒動が起きました。
 近年、従軍慰安婦への国家補償を求める運動や、植民地支配を正当化する歴史教科書に対する批判が高まっていますが、私たちはその闘いを引き継ぎ、さらに国境を越えた『台湾論』現象を読み解くことで、日本と台湾の国内的な文脈にとどまらず、東アジア・間での様々な文脈との対話に向けた論争の新しいステージを開いていこうと考えています。
 『台湾論』がベストセラーとなった東京大学で、台湾から2人のゲストを招いて行われるこのシンポジウムが、そのきっかけとなることを願っています。
(轡田竜蔵・日本学術振興会特別研究員/東京大学――シンポジウム運営責任者)

●台湾からのメッセージ

 ……ひょっとすると、このこと(小林よしのり『台湾論』への批判)は、東アジアの反省的な能力をもった批判的な知識圏が相互に動き始めた時なのかもしれない。共同して改めて歴史と人民の記憶、そして感情の構造の問題について活発に考え、比較を通してお互いに過去の苦難を見つめること。そこから出発することによってはじめて、一歩一歩と冷戦と植民地主義の影を抜け出し、東アジア地区において平和を求める和解の起点に向かうことができる。
(陳光興・台湾清華大学教授――シンポジウム発表予定原稿より抜粋)