(J)000127

専修専門課程へのオリエンテーション

 

地域・国際コース(欧米第二課程)に進み、スペインを対象地域として卒論を執筆しようとする諸君へのアドヴァイス

(個々の質問には、メールで答えます。)

 

○このコースでは、対象地域に対して政治学・経済学・法律学といった社会科学的アプローチ、歴史学といった人文科学的アプローチが要求されます。一言でいえば、事実立脚性と論理整合性に立って自らの仮説を検証していく作業を不可欠とするといえるでしょう。

すでに、12年次において高い語学力を身につけ、ディシプリン(専門性)(ついでに規律も)をある程度明確にしている方は、それぞれの専門ゼミに属して勉強をされるのが良いでしょう。

スペインを対象地域として歴史学を勉強したい、という方は私のゼミに来てください。また、このコースを選択し、対象地域はスペインに定めたが、語学力が不十分である、または明確なディシプリンがない、という方も私のゼミに来てくださって結構です。卒論ゼミは地域研究(スペインの歴史と社会)というかたちで開放しており、私が具体的に指導できない分野(美術や経済)は、非常勤の方や他大学の先生の協力を得ています。

しかし、いずれにしろ絞られる覚悟で来てください。

 

○具体的イメージをつかんでいただくために、昨年度と本年度の卒論執筆者のテーマを記しておきます。

1998年度の卒論提出者のテーマ)

「スペイン領アメリカへの布教と本国の関係──王権介入と布教組織の関係」

16世紀スペインの財政構造──スペイン王室の公信用とカスティーリャ財政」

「スペイン近代史における宗教問題──1876年憲法の宗教条項に関して」

「バスク・ナショナリズム──1918年の国会議員選挙」

「スペインにおける近代建築とその社会的背景──GATEPACに関する一考察」

「スペイン現代史における国家とジェンダーの関係──ドイツ・日本の場合と比較して」

「現代バスク自治問題とバスク・ナショナリズムの意義」

1999年度の卒論提出者のテーマ)

「スペインのイスラム建築」

17世紀スペイン・セビーリャにおける《無原罪の御宿り》を巡って――ムリーリョ

の存在意義に関する一考察――」

「フランコ体制下の検閲」

「スペインとEUの言語問題」

「スペイン社会とフラメンコ」

 

 このように、いろいろですが、美術の場合にもその歴史的・社会的コンテクストを重視した分析を行なうということをこのコースの前提にしてください。美学というような場合には、総合文化コースに進んでください。

 

なお、3年次になるまえに、以下の科目ををなるべく履修しておいてください。

−欧米第二地域基礎I「スペイン史概説」(スペインの基本的な歴史過程を把握し、各時代の主要な諸問題に関する理解を得る。)

−欧米第二地域社会論「スペイン史の諸問題」(文献・史料の講読によって、スペインの歴史・社会に関する知識を深めるとともにスペイン語読解力を培う。)  

 

3年次からは、いわゆる3点セットである専修専門科目(講義、3年演習、卒論演習)の他に、スペイン関連の講義を広く受講してください。もちろん、それぞれの関心に応じてディシプリン科目(経済学、法学、等々)は合わせて受講してください。

【関連諸科目】

Calderón La España contemporánea

−長岡顕「現代スペイン経済事情」

−木下亮「スペイン美術」(隔年開講)

−芳賀正明「スペインの文化人類学」(隔年開講)

−佐々木孝「現代スペイン思想」(半期開講)

−金七紀男「ポルトガル近世史」

 

また、この他に余裕があれば、フランスやドイツの地域研究の科目も受講してください。

 

論文作成のための手引き:

  • 斉藤孝『学術論文の技法』(日本エディタースクール出版部、1977年)
  • 中村健一『論文執筆ルールブック』(日本エディタースクール出版部、1988年)
  • 歴史科学協議会編『卒業論文を書く──テーマ設定と史料の扱い方』(山川出版社、1997年)

 

西洋史研究入門(基本文献):

  • 西川正雄・小谷汪之編『現代歴史学入門』(東京大学出版会、1987年)
  • ゲオルク G. イッガース『ヨーロッパ歴史学の新潮流』(晃洋書房、1986年)
  • ピーター・バーク編(谷川稔ほか訳)『ニュー・ヒストリーの現在──歴史叙述の新しい展望 』(人文書院、1996年)
  • 大下尚一/西川正雄/服部春彦/望田幸男編『西洋の歴史〔近現代編〕』(ミネルヴァ書房、増補版、1998年)
  • 望田幸男ほか編『西洋近現代史研究入門』(名古屋大学出版会、増補版、1999年)
  • 成瀬治監修『カラー世界史百科』(平凡社、増補版、1985年)
  • マルク・ブロック(讃井鉄男訳)『歴史のための弁明──歴史家の仕事』(岩波書店、1956年)

 

スペイン史研究入門(基本文献):

  • 立石博高/関哲行/中川功/中塚次郎編『スペインの歴史』(昭和堂、1998年)
  • 立石博高・若松隆編『概説スペイン史』(有斐閣、1987年)
  • 立石博高編『スペイン・ポルトガル史』(山川出版社、20005月刊行予定)
  • ピエール・ヴィラール(立石博高・中塚次郎訳)『スペイン内戦』(白水社、クセジュ文庫、1993年)
  • Smith, Angel, Historical Dictionary of Spain, Scarecrow Press, 1996 (European Historical Dictionaries, No. 11).
  • Kern, Robert W., Historical Dictionary of Modern Spain, 1700-1988, Greenwood, 1990.
  • Shields, Graham J., compiler, Spain, Oxford, Clio Press, 1985 (World Bibliographical Series, Vol. 60).
  • P. E. Russell, Spain. A Companion to Spanish Studies, London, Methuen & Co. Ltd., 1973.

 

NACSIS Webcat  http://webcat.nacsis.ac.jp/

  • スペイン史学会HP http://wwwbase.nacsis.ac.jp/sjhe/index.html
  • ヒロタテHP http://village.infoweb.ne.jp/~hirotate/index.htm

 

"En la bandera de la Libertad

bordé el amor más grande de mi vida." (Federico García Lorca)

 

○最後に、来年度の私の講義題目の3点セットの部分を記しておきます。

 

☆[授業科目名]ヨーロッパ地域研究II(講義)(金/1)

[授業題目名]スペイン近代史

[授業の目標]中世末から近代にかけて国家、地域、教会、社会のあり方を中心に検討して、スペインの歴史過程についての理解を深める。

[授業の内容・計画]基本的には講義形式で進める。まず、近現代史の諸問題についての研究動向を数回の講義で紹介する。次に本年度は、諸地域と国家との関わりに焦点を当てて講義するが、とくに多言語社会であるスペインの歴史過程を、カタルーニャという地域の眼を通してみる。

[教材・参考書等]立石・若松編『概説スペイン史』(有斐閣)

          樺山紘一『カタロニアへの眼』(中公文庫)

[成績評価の方法] 講義に関する小論文試験、指定参考文献の書評レポートにより総合評価する。

[受講上の注意]地域基礎I(スペイン史概説)が履修済みであることが望ましい。演習を履修しようとする学生は、できるだけ受講すること。

 

☆[授業科目名]ヨーロッパ地域研究II(演習)(木/4)

[授業題目名]スペイン史研究入門

[授業の目標]卒業論文が執筆できるような専門論文読解力を培う。あわせて、各人がその執筆テーマへの理解を深める。

[授業の内容・計画]受講者の関心に応じて、できるだけ数多くの専門論文を輪読する。

同時に、各人が卒業論文(スペイン地域研究)で執筆しようとしているテーマに関する邦語文献を読んでもらい、それを随時、発表してもらう。

[教材・参考書等]『卒業論文を書く』(山川出版社)。プリント配布。

[成績評価の方法]授業と学年末レポートにより総合評価する。

[受講上の注意]絞られることを覚悟してください。適当な時期に、3年・4年ゼミの合同合宿を行ないます。

 

☆[授業科目名]ヨーロッパ地域研究II(卒演)(木/5)

[授業題目名]スペイン史研究

[授業の目標]各人の問題関心に応じて、卒業論文(スペイン地域研究)執筆のための指導を行い、その完成を目指す。

[授業の内容・計画]次のような手順で卒業論文執筆を指導する。

      (1)各人が、設定したテーマに関する邦語文献リストを提出し、その内容を発表。

      (2)テーマに応じて、各人が欧文文献を精読し、その内容を発表。

      (3)卒業論文の大体の構想を夏休み前に発表。

      (4)更に各人が関連文献を読み進め、その内容を発表。

      (5)10月に論文執筆の具体的構想を発表、批評をうける。

      (6)適宜、発表を繰り返し、論文執筆に着手。

[教材・参考書等]各人の執筆テーマに応じて決定

[成績評価の方法]ゼミでの発表と提出卒業論文による

[受講上の注意] 絞られることを覚悟して下さい。適当な時期に、3年・4年ゼミの合同合宿を行ないます。

 


 

トップメニュー