■■ 文字と表記について ■■


文字についてもっと教えてほしかった。
ムラユ語にも固有の文字は無かったのでしょうか?
インドネシア地方には文字はあるのですか?ずっとアルファベットを使っていたのでしょうか?宗教はイスラムが主流であるにも関わらず、アラビア語、アラビア文字が輸入されることはなかったのでしょうか?
アルファベットを使っているのが意外だった。

 文字に関する質問やコメントが非常に多く、正直なところ驚きました。
 逆に、東南アジア(それともアジア全体?)の言語はいずれも特有の文字を持っているという固定観念が結構あるのかもしれません。

 インドネシア語、あるいはその前身のムラユ語には固有の文字はありませんでした。ムラユ語最古の碑文はパッラワ文字で書かれているそうです。イスラムが入った後にはアラビア文字表記もなされました。
 ラテン文字が用いられるようになったのは、やはりオランダの影響でしょう。1900年頃に、教育を目的としたラテン文字表記が導入され、その後数度の改訂がなされて現行の正書法が1972年に制定されました。

 ラテン文字による表記が定着しやすかったのは、文字と音韻が対応しやすかったからだと思います。現正書法では、2つの音に対応している文字は1つ( e )、2文字で1音を表すものは4つ( ng, ny, kh, sy )で、それ以外は1文字で1音を表します(ただし x と q はほとんど用いられない)。つまり、ラテン文字でかなり合理的に表せるのです。

 ちなみに、以下のようなコメントもありました。確かにその通りかもしれません。

■けっこう文字から音を想像することができるかなと感じました。

 なおインドネシア地域には、ジャワ語をはじめとして固有の文字を持つ言語もかなりあります。いずれもサンスクリットと同じ音節文字のシステムのようです。もっとも、現在ではラテン文字表記を用いますが。

文字もベトナム語などのようなミミズみたいな文字を使っているというイメージがありましたが......

 これは大きな誤解です。ベトナム語もラテン文字を用いています。ただ、声調を表す補助記号をいろいろと使うようです。詳しくは『ベトナム語』の回を楽しみにしていて下さい。

文の基本構造でよく見る // 線、普段何かで文を区切る時とかによく使っていて、ただの線にしか思っていなかったのだが、インドネシア語では重要な役割を持っているのが不思議と感じました。
イントネーションによってS−V関係が分かるなら、文にしたものを読む時、大変ではないでしょうか。それとも // があるから、きちんと分かるのでしょうか?

 これも誤解を解くために付け加えておきますが、文の基本構造を示す際に用いた // の線は、あくまでも文の構造を説明するのに便宜上使ったに過ぎず、実際の正書法では用いません。
 ビデオのインドネシア語を書いたプリントには一切使っていなかったことを思い出してください。

 また、「主部−述部」構造を説明する際にイントネーションを強調しすぎてしまったようですが、実際には文あるいはフレーズの語順、あるいはそれらを構成している語の素性で「主部」や「述部」がかなりはっきりとわかります。曖昧な文も結構ありますが、それは日本語や英語にもあることです。

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