[[コーパス言語学集中講義]]

*研究計画 [#c844c214]

**目的 [#h91eff32]
-小さめのタイトル。
・ESL環境で使用される英語の教科書とEFL環境で使用される教科書を比較し、語彙的・表現的側面での差異を明らかにする。~
・EFL環境の国や地域の文化面などでの差異や特性が、どのように英語の教科書、特にその本文に反映されているかを語彙的・表現的側面から明らかにする。


**仮説 [#mf4559c1]
1. EFL環境では授業時間の制約から新出語彙を短い文章の中で多く扱わなければならないため、EFL環境での教科書はあるメッセージを伝えるためにESL環境での教科書と比較して難易度の高い語を用いる傾向にあるのではないか。~
2. 上記と関連し、学校教育で扱われる英文の総量が多ければ多いほど、英文の密度は薄くなり、ある語彙が熟語表現などで複数回教科書に現れる確率が高くなるのではないか。~
3. 自国文化の表現も英語教育の一つの目的であろうから、英語圏の文化と異なる文化を有する国々であればあるほど、その国々固有の語彙等が教科書に占める割合が高くなるのではないか。

**コーパス [#tadbe73e]
基本的には各国の教科書の本文を集めたDIYコーパスとなる。教科書コーパスはほかにも多数作成されているようなので、それらが手に入るようであればそれらも活用したい。

**研究方法 [#x17bb155]
1. 各国の英語の教科書を集め、その本文を電子化する。その際に各国の英語教科書本文の総語数をカウントし、国単位でランク付けする。~
2. AntConcのKeyword List機能やそれに準ずるコンコーダンサーを用い、~
(a) 一般的なESLvs一般的なEFLでそれぞれに高頻度な語を調べる。その際に特定のESLやEFLの地域の色が強くならないように、各国から抽出する英文の量は一定に決めておく。~
(b) 一般的なESL+一般的なEFLvs個別のEFLでそれぞれに高頻度な語を調べる。前者ではやはり各国から抽出する英文の量は一定に決めておく。~
3. 高頻度語の理由を調べる。AntConcのCluster機能等を用いて、それらの語が特定の表現内で高頻度に用いられているのかどうかを調べる。

**データ分析 [#u2e6b748]
上記の3において、もしある語が特定の表現の中で高頻度に用いられているようであれば、その表現は当該国の文化等に関係することか否かを検討する。もしある語が高頻度で現れているものの特定の表現の中ではない場合や、上記で当該国の文化等とは関係がない表現である場合は、当該国と総語数ランキングとの関係性を見る。

**予想される結果 [#qc32df1c]
(仮説1に関して)~
「仮説」に記したことと重なるが、ESL環境では基礎的語彙の頻度が高いのではないだろうか。一方、EFL環境の総語数が少ない国や地域では他の国や地域と比較して高頻度と呼べる語は少ないのではないだろうか。ESL環境でのEFL環境と比較した時の高頻度語とその逆では、前者の方がAntConcで言うところのkeynessの値が大きいのではないだろうか。

(仮説2に関して)~
やはり「仮説」と重なるが、EFL環境の教科書は総語数が多ければ多いほど、ESL環境の教科書と語彙的特徴が似てくるのではないか。

(仮説3に関して)~
イスラム圏など英語圏とは大きく異なる文化を持つ国々の教科書は、それらの文化を反映するような語句が多く含まれているのではないか。

**教育的示唆 [#e11b17a4]
以上を通して日本の英語教科書を見た場合、教科書という面からの世界の中での位置がわかる。典型的なEFL環境での教科書ではないかと予想するが、そこから他国の英語教科書と比較することにより、日本の英語の教科書に何が足らないか、どうすれば改善出来るかが見えてくる可能性が高いのではないだろうか。


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