コーパス言語学集中講義

研究計画

目的

日本の和英辞書の例文(日本語)を語彙、表現側面より分析し、テキストがどのような特徴を帯びているのか調査する。
コーパスを構築する際、どのようなテキストを集めるかによって語彙には大きな差が生まれる。
もしも収録される用例が、日本語の話される環境で使われるAuthenticな用法と異なっているとすれば、日本語から発想する学習者にとって、当然使い勝手は良くないと予想できる。

仮説

1、和英辞書の用例は、書き言葉的語彙、表現に偏り、話し言葉的な表現は少ない傾向にあるのではないか。
2、Politenessの観点から見て、敬語(honorifics)が不自然に多用されているのではないか。

コーパス

和英辞書より用例(日本語)を集めたコーパスを研究のために作成する。
比較対象には、日本語の話し言葉、書き言葉が得られる国立国語研究所の日本語コーパスを用いる。

研究方法

国内の和英辞書を、年代、対象とする学習者レベルで分類する。
用例に現れる表現を国立国語研究所日本語コーパスのデータを用いて、単純頻度、Log-likelihoodによって比較する。

データ分析

まず、コーパスを構築せねばならない。
AntConc?など多言語対応のコンコーダンサーを利用する予定だが、インターフェイスはともかく、自分でプログラムを構成してみるのも面白い。

予想される結果

1、現行の学習者用和英辞書では、用例が書き言葉のものが多い。
  例えば「ていうか」「ウザい」「キモい」など、話し言葉では多用され、それなりの年月使用され続けているものでも、和英辞書には未収録のものがある。
2、不自然に敬語が多用され、その分インフォーマルな表現はかなり少ない。
  例えば仏語辞書で、親疎関係を表すT/V代名詞を意識的に混在させているのと比較すると、特異といえよう。

教育的示唆

以上の仮説通りの結果が得られたとすると、辞書の助けを頻繁に必要とする初級・中級学習者にとって、現行の和英辞書は必ずしも使い勝手が良いとはいえないであろう。
特に、学習指導要領の中でも触れられている「コミュニケーション」の観点から見た場合、自分が能動的に表現しようとする内容と、参考にする和英辞書から得られる情報の間に齟齬が生じてしまう。
著しく内容に偏りがあったとすれば、それは特定の分野・用途向けとした方が、ユーザーフレンドリーである。
徒に細分化すれば良いというものではないが、辞書の側が「汎用的」といえる内容を持たないのに汎用性を謳ったりするのは問題である。
本研究の結果を活かすと、学習者向け和英辞書は、話し言葉からも用例を取り入れることが必要となる。
特に、発信型の英語教育を目指していく上では、早急に開発が望まれる。


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