要訣・朝鮮語
不完全名詞 수 の用法


 1.不完全名詞とは何か? 

 単独では用いられず、必ず別の単語を前に従えてのみ用いることのできる名詞を不完全名詞という。韓国では「依存名詞」と呼ばれ、日本語文法で「形式名詞」と呼ばれるものに相当する。
 不完全名詞の多くは、それ自体が明確な意味を持っておらず、前後に来る形と合わさって全体として何らかの意味を持つ。例えば、日本語の「わけ」は「…するわけがない」「…するわけだ」などのように、前後の形と合わさって全体で1つの意味になるが、これと同じ理屈である。
 不完全名詞「수」を用いた表現は、お互いに形が似ているため、非常に混同しやすい。それらをまとめてみることにする。


 2.可能/不可能の表現 

 おそらく「수」を用いた表現の中で、最もよく使われるのが「II-ㄹ⌒수[가] 있다/없다 (…することができる/できない)」という可能/不可能の表現だろう。この場合「수」は「すべ」といった意味で、直訳すれば「…すべきすべがある/ない」となる。なお、「II-ㄹ」連体形の後では平音は無条件に濃音化するので、「수」は[쑤]と濃音で発音される。  可能/不可能の表現は、やはり不完全名詞である「줄 チュ」を用いた「II-ㄹ⌒줄[을] 알다/모르다 (…することができる/できない)」がある。こちらは直訳すると「…すべきすべを知っている/知らない」となるので、若干のニュアンスの差がある。  また、不可能形として「I-지 못하다」とその短い形「못⌒用言」もある。  注意すべきは、「II-ㄹ⌒수[가] 있다/없다」が可能性を表すことがありうることである。この場合「…しうる(するかもしれない)/しえない(するはずない)」という可能性を表す。日本語の「…しうる」が可能・可能性の両方を表すのと似ている。
 3.場合の表現 

 「수」の前に連体形「II-ㄹ」でなく現在連体形「I-는(動詞・存在詞)」が来て「I-는⌒수가 있다」となると、「…することがある」という意味になる。ここでの「수」は「場合」という意味になる。反対表現の「I-는⌒수가 없다」は、反語などの特殊な場合を除いてはふつう用いられない。「있다」以外にも「많다 マーンタ(多い)」などの語も来ることがある。  場合を表すものは、「場合」という意味の「경우 キョーンウ」を用いても表すことができる。
 4.否定形と絡んだ表現 

 前に否定形を従えた「I-지 않을⌒수[가] 없다」およびその短い形「안⌒用言II-ㄹ⌒수[가] 없다」は、二重否定形になるので「…せざるをえない、…しないわけにはいかない」という強い肯定になる。
 5.밖에 と絡んだ表現 

 後ろに「밖에 없다 (他にない)」がくっついた「II-ㄹ⌒수밖에 없다」は「…するしかない」という意味になる。話し言葉では最後の「없다」は省かれることがある。  この表現は「수」自体を取っ払って「II-ㄹ⌒밖에 없다」「II-ㄹ⌒밖에」とも言う。このとき「밖」は「II-ㄹ」連体形の直後にあるので、濃音化して[빡]と発音されることに注意。  この表現は否定形と組み合わさることができる。かなり複雑な構成になるので、意味を取り違えないように注意しなければならない。上の「I-지 않을⌒수[가] 없다」との混同に注意。  この場合、直訳すると「行かないしかない」となる。

 6.수 がらみの慣用句的表現 

 「수」を用いた慣用句的表現には、以下のようなものがある。どれも上のそれぞれの表現から来ているものである。

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