要訣・朝鮮語
合成語での濃音化


 合成語での濃音化の話をする前に、まず濃音の字を考えてみたい。今の正書法では、「ㄲ,ㄸ,ㅃ,ㅆ,ㅉ」のように、濃音を表す子音字は平音の字を横に2つ並べて表す。ところが、今の正書法が行なわれる以前は、濃音は平音の字の左横に「ㅅ」をそえて、左のように書いていた。この表記法を頭の片隅に置いておくと、合成語での濃音化が実に明快に理解できるのである。で、下のハングルを見てもらいたい。
 「찻집 チャッチ」(茶屋)は、今の正書法では「차」の下に 사이시옷 を書き足して「찻」と表記するが、昔の表記法では矢印の右側のように、「차」と「집」の間に1文字として「ㅅ」を書いた。まさに「間のㅅ」である。それで、その間に書かれた「ㅅ」を2つめの単語の頭の子音の横にちょいと移動させると、カッコの中のように表記される。つまり「집」の最初の音が濃音化するわけである。下の例「냉면집 ネンミョンチ」(冷麺屋)は、今の正書法では 사이시옷 を表記しないが、昔の表記法では「찻집」の場合と同じように間に「ㅅ」を書いた。これもやはり「ㅅ」を次の単語「집」の子音の隣にちょいと移動させると、はやりカッコの中のように濃音となる。はやい話が、「冷麺屋」の場合も、今の正書法では書き表されてはいないが、実は 사이시옷 が潜んでいたのである。