
「に」と「で」と「から」
体言につく語尾は日本語と用法が似ていてかなり分りやすいが、それでもところどころ区別しにくいものがある。そのうちの1つが場所を表す「に」と「で」、起点を表す「から」の使い分けである。
実は、この2つはあまり難しく考えなくてもよい。おおよそ日本語の「に」は朝鮮語の「-에」に対応し、「で」は「-에서」に対応する。だから、判断に迷ったときは、まず日本語を思い出してみれば自ずから解決する。
「-에」と「-에서」の使い分けは、日本語の「に」と「で」と非常によく似ている。例えば、同じ「ある」という動詞を使っている場合でも、物があるときには「講堂にピアノがある」のように「に」を使い、集まりや催し物などがあるときは「講堂で公演会がある」のように「で」を使うが、このような使い分けは朝鮮語でも全く同じだ。
- 강당에 피아노가 있다. カーンダンエ ピアノガ イッタ 「講堂にピアノがある」
- 강당에서 강연회가 있다. カーンダンエソ カーンヨヌェガ イッタ 「講堂で講演会がある」
また「泊まる」や「暮らす」など滞在を表す動詞の場合、「ホテルに/で泊まる」のように「に」も「で」も両方使えるが、朝鮮語でもやはり両方使える。
- 호텔에/에서 묵습니다. ホテレ/ホテレソ ムクスムニダ 「ホテルに/で泊まります」
なお、同じ「で」でも場所ではなく手段・道具を表す「で」のときは「-(으)로」が用いられる。
- 나무로 만든 의자 ナムロ マンドゥン ウイジャ 「木で作った椅子」
「に=-에」、「で=-에서」と100%対応してくれるなら実にありがたいのだが、いかんせん、朝鮮語は似ていても外国語である。そこにはどうしても違いが存在するのである。
特に誤りやすいのが、時間を表す「で」である。「後で会いましょう」・「最近では珍しい現象だ」のように時間を表す単語につく「で」は「-에서」ではなく「-에」が用いられる。
- 나중에 만납시다. ナージュンエ マンナプシダ 「後で会いましょう」
- 최근에는 드문 현상이다. チュェーグネヌン トゥムン ヒョーンサンイダ 「最近では珍しい現象だ」
また、時間を表す「-에」のうち、日本語では「に」をつけないのに朝鮮語では必ず「-에」をつける場合がある。例えば1日の時間帯を表す「朝・昼・夜」などは日本語の場合、「明日の朝うかがいます」のようにふつう「朝に」とは言わないが、朝鮮語では下のように「-에」を必ずつけなくてはならない。
- △내일 아침에 찾아∧가겠습니다. ネイラチメ チャジャガゲッスムニダ 「明日の朝うかがいます」
同様のものとしては「先週・今週・来週」など週を表す場合、「先月・今月・来月」など月を表す場合がある。「午前・午後」や「去年・今年・来年」などは日本語では「に」をつけてもつけなくてもよいが、朝鮮語の場合は必ず「-에」がつくことも注意しておこう。
「に」を無条件に「-에」としてはいけないものがある。それは、動詞が「変わる・変化する・転換する・翻訳する・交代する」など、「変化」に関わる動詞の場合である。つまり、「~が~に(カワル)」や「~が~を~に(カエル)」というときの「に」は「-에」でなく「-(으)로」を用いなければならないのである。これも日本語話者にはピンと来づらく、間違えやすいものの1つである。
- 신호등이 파란불로 바뀌었다. シノドゥンイ パランブルロ パックィオッタ 「信号が青に変わった」
- 영어를 한국어로 번역한다. ヨンオルル ハングゴロ ポニョッカンダ 「英語を朝鮮語に翻訳する」
場所を表す「で」と出発の場所を表す「から」は朝鮮語では同じ「-에서」で表す。私たち日本語話者から見ると、よく混乱しないなと思われるが、不都合なく言葉が通じているのを見ると、全く問題ないようだ。
しかしながら、日本語で「から」と表されるものは、朝鮮語のほうでいくつかの表現がある。おおざっぱに言うと、場所の起点(出発の場所)は「-에서」で表され、時間の起点は「-부터」で表される。また、やりもらいの場合に、「誰々から」というときは「-에게서」が用いられる。いわば人間の起点である。この「意味の住み分け」はかなり厳密に守られているので、間違えるとトンチンカンな表現になってしまう。
- 대구에서 친구가 왔다. テグエソ チングガ ワッタ 「大邱から友達が来た」
- 세⌒시부터 회의가 있다. セーシブト フェーイガ イッタ 「3時から会議がある」
- 아이에게서 질문을 받았다. アイエゲソ チルムヌル パダッタ 「子供から質問を受けた」
ところが、後ろに「~まで」や「~にかけて」が続いて「から」が範囲の起点を表すようなときは、この「意味の住み分け」とは全く関係なしに、「から」は「-에서」で表されるようになる。
- 대구에서 부산에 걸쳐 テグエソ プサネ コルチョ 「大邱から釜山にかけて(被害が広がる、など)」
- 세⌒시에서 다섯⌒시까지 セーシエソ タソッシッカジ 「3時から5時まで(会議をする、など)」
- 아이에서 어른까지 アイエソ オールンカジ 「子供から大人まで(楽しめる、など)」
この場合、「-에서」の代わりに「-부터」も使えるが、一般的には「-에서」が好んで用いられるようである。
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