要訣・朝鮮語
I-고 と III-


 日本語の「…して」に当たる朝鮮語の語尾として「I-고」と「III-서」がある。私たち日本語話者にとって、この両者の区別はひじょうに難しい。日本語では「…して」の1つしかないのに、それを朝鮮語では2つに使い分けなければならないのだから、難しくないわけがない。このテのものに遭遇したら、始めから全部完璧にマスターしようなどと考えるのは愚策である。比較的分りやすく明確なものから順に覚えていき、じわじわと外堀を埋めていくように制覇するのが最も安全だ。

 1. 理由を表す「…して」は III-서 

 日本語で「忙しくて死にそうです」といったとき、「忙しくて」は「忙しいから」というウラの意味がある。つまり「忙しくて」は理由を表しているわけであるが、このように理由を表す「…して」は朝鮮語では III-서 で表される。最も典型的なものは形容詞の場合である。形容詞の III-서 形は理由を表す場合が多い。
 もちろん、理由の「…して」は形容詞だけでなく動詞の場合もありえるが、その場合にもやはり III-서 形が用いられる。
 2.羅列を表す「…して」は I-고 

 動作や状態を並べ立てる「…して」は I-고 によって表される。  1つめの例文で、もし「산이 높아서 サニ ノパソ」と III-서 を使ってしまうと、(1)の理由の意味になってしまう。
 3.先行を表す「…して」は多くが I-고 

 「ご飯を食べて学校へ行く」というとき、「食べて」は「行く」の前に行なう動作、つまり「先行する動作」である。ウラの意味としては「…し(おわっ)てからそして」という意味を持っている。このような場合の「…して」はふつう I-고 を用いる。  ただし、「行く・来る・追いかける」など移動を表す動詞の「…して」形は、I-고 ではなく III-서 を用いるので注意。
 4.様態を表す「…して」は動詞の種類に注意 

 ウラの意味に「…しながら」・「…している状態で」という意味を持つ「…して」の多くは III-서 が用いられる。例えば「座って(歩いて、立って etc.)行く」などの場合がそれである。  2つめの例文で、もし「친구를 만나고」のように I-고 を使うと、「友達に会ってから、その友達と分れて別の人と話をした」という意味になってしまう。「会って」と「話する」はいわばひとつながりの動作で、そのような場合には III-서 を使わねばならないようである。逆に I-고 はとぎれた動作という意味になるようだ。
 ここで注意すべきは、様態を表す全ての動詞で III-서 を用いるのではないということである。ある種の動詞では様態を表すのに I-고 が用いられるのである。主なものは以下の2つである。
  1) 「持つ・抱く・つかむ」など身体による(再帰的な)動作を表す動詞
  2) 否定形
 概して他動詞の場合は I-고 のほうを多く用いるようである。

 5.こんな場合は? 

 「2つを区別して使い分ける」なんていうときはどちらをつかうのだろう?実は I-고 と III-서 の難しさは、このような何とも微妙な場合にどちらを使えばよいのかというところである。殊に動作が抽象的な場合はどちらか判断に迷うことが多い。「2つを区別して使い分ける」の「区別して」は「先行」ともとれるし「様態」ともとれる。この「区別して」のように「…した上で」というウラの意味があるときは III-서 を用いることが多いようだ。
 このテのものを克服しようとするなら、典型的な動詞ごとにグループ分けをしながら覚えていくとよい。例えば「煮て食べる・焼いて食べる・混ぜて食べる」のように「…して食べる/飲む」というときの「…して」は III-서 を使うといった具合である。


 6.移動動詞の怪 

 「AしてBする」というときに、動詞Aが移動動詞の場合は「…して」は概して III-서 が用いられ、動詞Bが移動動詞の場合は概して I-고 が用いられるという傾向がある。  ただし、(4)のように様態を表すときは動詞Bが移動動詞でも III-서 を用いるので注意が必要である。
 「…して行く」という表現は、私たちにとって実にやっかいである。「歩いて行く」というときは「걸어서 간다 コロ カンダ」と III-서 を使うのに、「汽車に乗って行く」は「기차를 타 간다 キチャル カンダ」と I-고 を使う。かと思えば「来て行く」というときは「왔다가 간다 ワッタガ カンダ」のように、また別の言いかたをするなど、私たちの理解を超えたものがなくもない。これらのものはケース・バイ・ケースで覚えるのが一番だ。


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