「ㅂ+ㄲ」が「ㄱ+ㄲ」に、さらには終声が聞こえずに初声「ㄲ」だけのようになる現象は、話し言葉の発音では非常によく聞かれるものです。これらは同化現象の一種ですが、標準発音法では認められていないため、学習書でも扱われないことが多いようです。
私の知るところでは、菅野裕臣著,浜之上幸・権容璟改訂『朝鮮語の入門 改訂版』(白水社)の115ページで「話し言葉での速い発音」としてこれらの現象について言及しています。
口音の終声(ㅂ,ㄷ,ㄱ)については、[ㅂ+ㅃ]、[ㄱ+ㄲ]、[ㄷ+ㄸ]、[ㄷ+ㅉ]、[ㄷ+ㄲ]などにおいて終声が発音されないこと(학교[학교→하꾜]‘学校’など)、また[ㅂ+ㄲ]は[ㄱ+ㄱ]→[ㄲ]となり終声ㅂが発音されないことについて触れています。
鼻音の終声については、(1)ㄴ+ㅁ、ㄴ+ㅂ、ㄴ+ㅃ、ㄴ+ㅍでの終声ㄴがㅁになる(신문[심문]‘新聞’)、ㄴ+ㄱ、ㄴ+ㄲ、ㄴ+ㅋでの終声ㄴがㅇになる(존경[종경]‘尊敬’)、ㅁ+ㄱ、ㅁ+ㄲ、ㅁ+ㅋでの終声ㅁがㅇになる(감기[강기]‘風邪’)という現象についての言及があります。
『朝鮮語の入門』はとっつきにくい印象がありますが、詳細な記述がなされているので級が上がっても参照するにたえる学習書です。同様にして菅野裕臣他著『コスモス朝和辞典』(白水社)の発音の記述も、他の辞書には見られないほど細かい現象について触れています。学習が深まっていくと、このようなマニアックな(職人的な)記述が楽しいですね。
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