初めまして
5年前、「白村江敗戦と上代特殊仮名遣い」という論考を上梓致しました藤井游惟と申します。
拙論の骨子を端的に申し上げますと、 600年代後半~700年代前半に成立した『記紀万葉』に於いて、借音仮名で日本語を表記していた書記官達は、663年の白村江敗戦で日本に大量亡命してきた百済人(朝鮮語話者)一世・二世達であり、そのことは『記紀万葉』から発見された「上代特殊仮名遣い」によって、言語学的(音声学的)に証明できる、 というものです。 (なお、この説は既に、2001年に国語学会(現日本語学会)春期大会、2002年に日本音声学会全国大会、2010年に日本中国語学会関東支部拡大例会、及び朝鮮学会全国大会、と4次に亘って正統なアカデミズムの学会で口頭発表しているものであり、藤村由加・金容雲・李寧煕などような疑似科学説と同一視しないでください)
拙論の中心を成すのは音声学的分析であり、故に拙著には日本語・朝鮮語・中国語での様々な発音実験ビデオを収録したCDが添付してありますが、このCDはパソコン専用であり、一度パソコンにコピーして、それを見ながら読まなければ本当のところは理解できないという「読むのに手間暇がかかる本」であるため、その手間暇を惜しんで本文だけをナナメ読みし、トンチンカンな批判を繰り返す読者に悩まされてきました。
そこでこの程、拙論の全貌が解り、クリックするだけでYOUTUBEで発音実験が視聴できるHPを作成致しました。
私の「『記紀万葉』百済帰化人記述説」拙論の最も解りやすい証拠は第八章の万葉集の発音実験をまとめたデモビデオです。 http://www.youtube.com/watch?v=xPvxfGA_ews&feature=plcp このビデオ(約15分)を見て頂くだけで、拙論に興味を抱かれると存じます。 拙論の中核を為すのはこの第八章ではなく、現代日本人は無意識のうちに奈良時代と全く同じ法則に基づいて2種類の/O/母音、2種類のオ段音を条件異音(conditional allophone)として発音し分けている、ということを発音実験で証明している第六章です。 http://music.geocities.jp/konatarosu/Hakusonkou/6shou.html
この実験は、日本語ネイティブスピーカーなら誰でも自らの口を用いて追試できますので、是非お試し下さい。 これまで数百人の人間にこの実験をやらせてみましたが、 ●自らが2つの/O/母音を規則的に発音し分けていること ●それが上代オ段甲乙書き分け法則と一致していること を否定した人間は一人もいません。
このことを否定できないならば、 ●日本語の/O/母音の発音自体は奈良時代から全く変化していない ●『記紀万葉』でこの2種の/O/母音が書き分けられていたのは、それを書いていた書記官達が、母語においてこの2種の/O/母音を区別する言語的外国人だった(allophoneを聞き分けられるのは異言語話者だけですから) という結論しか出てきません。
そしてこのことは、歴史学的にも(第二章)、朝鮮語・中国語の側から言語学的にも(第七章・第八章)傍証できる、と言うわけです。
朝鮮語に関する私見は第七章で述べており、朝鮮語の専門家の目から見れば誤りがあったり、従来の定説・常識に反することを色々述べているかもしれませんが、それらをあげつらってのご意見やご批判は、まず第六章をご理解頂いた上でお願いします。 『記紀万葉』を書いていたのが「言語的外国人」であることは、日本の国語学が100年間蓄積してきた上代特殊仮名遣いに関するデータを元に「音声学だけで証明できる」のであり、この証明に歴史学や考古学、朝鮮語学の知識は必要ないのです。
その上で、朝鮮語のご専門家の目から見たご意見・ご感想・ご批判などを頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。
藤井游惟
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