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タイトル朝鮮中期のハングルの推定発音とそのローマ字表記について
記事No36
投稿日: 2010/02/03(Wed) 10:59:20
投稿者qara
はじめまして。
研究のために,ハングルで他国言語を書いたテキスト(だいたい孝宗代から英祖代までの文献)を読む必要があるのですが,二つの問題があります。

その一:学界公認的なローマ字綴り方がありますか?
その二:推定発音をどう定めますか?

よろしければ,教えていただけませんか?

よろしくお願いします。

タイトルRe: 朝鮮中期のハングルの推定発音とそのローマ字表記について
記事No37
投稿日: 2010/02/12(Fri) 17:41:57
投稿者趙義成
【その一について】
学界公認のローマ字表記というものはありませんが、学界に流布しているものとしては、以下の方式があります。

(1)韓国式
韓国文化観光部が2000年に定めた「国語のローマ字表記法」は、韓国を中心として、公的なローマ字表記の扱いをうけることがよくあります。

学術論文などでは、この第8項のような表記法(いわゆる翻字 transliteration)が用いられます。しかしながら、この表記法では古語に現れる「ㆍ(アレア)」の表記法が定まっておりません。アレアは人により「@」としたり大文字「A」にしたりていることがあるようです。

(2)Yale式
欧米を中心としてこの方式が用いられています。
「o」は現代語の表記では「ㅗ」を表しますが、古語の表記では「ㆍ(アレア)」を表します。古語における「ㅗ」は「wo」と表記されます。

(3)福井玲式
これは広く流布しているものではありませんが、体系だっているという面では最も優れています。
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/choes/korean/middle/fukui.html

ローマ字表記については、本サイトの「朝鮮語学小辞典」中の「朝鮮語のローマ字表記法」も併せてご参照ください。

【その二について】
これはなかなか容易ではありません。推定音価をどのように求めるかというのが、研究者によって異なりうるためです。1つの例として、以下のサイトを参考になさってみてはいかがでしょうか。
http://mklabo.main.jp/kindaigo/kindaimemo.html
(近代語MEMO - 中期朝鮮語研究室)

このサイトによると、例えば二重母音であったㅐ[ay]、ㅔ[∂y]が単母音化して/ε/、/e/となるのは17世紀と18世紀の交替期であるとしています。ちょうど孝宗~英祖の時期ですので、一言で「こうだ」とはなかなか言えないものがありますね。

もし、発音を提示する必要が必ずしもないのであれば、ハングルを翻字(ハングル字母とローマ字を機械的に1対1で対応される表記法)するのが最も無難ではないかと思います。

タイトルRe^2: 朝鮮中期のハングルの推定発音とそのローマ字表記について
記事No39
投稿日: 2010/02/19(Fri) 16:45:45
投稿者qara
ご返答ありがとうございます。

聞きたいことの一つは実はㅐとㅔでありますが、判別できなかったら、機械的な翻字でしか方法がありませんね。(『同文類解』のなかの満州語です)

同じ時期に、満州語(とモンゴル語)の母音も変化していくところでした。そのとき、朝鮮の翻訳家は機械的な翻字をするのか、それとも直覚的に聞いた音声をハングルで転写するのか、知る術ありませんでした。なので私にとって、機械的な翻字をする方が最もいいかもしれません。

では、改めて感謝の意を申します。