自 己 紹 介
ハングルのローマ字転写は福井玲式
日本文・朝鮮文混用ページで見る(I.E. 4.0, N.N. 6 以上)
趙義成 ( |
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チョ・ウイソン CHO, Eui-sung) |
- 所属: 東京外国語大学 外国語学部 言語・情報講座
- 専攻分野: 朝鮮語学 (現代朝鮮語文法)
- 所属学会: 【日本】朝鮮学会,朝鮮語研究会 【韓国】国語学会
- 略歴:
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1964年 東京生まれ、新潟育ち
1993年 東京外国語大学大学院修士課程修了 (朝鮮語学)
1995年〜1999年 韓国ソウル大学校言語学科博士課程、延世大学校国語国文学科博士課程に留学
1999年4月〜2002年9月 県立新潟女子短期大学専任講師
2002年10月〜 東京外国語大学専任講師(至現在)
著書
論文
学会発表
その他
- 「ハングルの読み方」 ― 『韓国姓名字典』、金容権編、三修社、1988 所収
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著者が独自に開発したコンピュータプログラムを基に作った中期朝鮮語のKWIC索引(文脈つき語彙索引)。正順索引と逆順索引のほかに接尾辞索引を加え、研究の便宜を図った。また、月印釈譜の本文には、声調を中心とした詳しい校註を加え、本文の言語学的分析も同時に行なっている。
― 目 次 ―
凡例
脚註説明についての註釈
月印釈譜巻一本文
月印釈譜巻一語彙索引(正順)
月印釈譜巻一語彙索引(逆順)
月印釈譜巻一語彙索引(接尾辞) |
この研究の目的は、現代朝鮮語の格語尾である-'ei-se(エソ)の、現実の文における意味を検討するものである。-'ei-seの意味は、現実の文において、いわゆる「で」的なもの(場所的なもの)や「から」的なもの(起点的なもの)に代表されるように、さまざまな意味として現われるが、それらの意味が実現される条件を、-'ei-seの形をとる体言の種類や、-'ei-seとの関連において共起する語と-'ei-seとの関係といった客観的な言語事実に基づいて分析する。分析の理論的基礎は、ロシア言語学で広く行なわれている「単語結合論」によるところが多い。また分析に際しては、韓国で80年代末から90年代初に出版された小説・戯曲から-'ei-seの実際の用例2500余例を収集しそれを分析する、徹底した言語事実主義に依拠している。
この研究によって、起点的な意味となる-'ei-seは用言との結びつきが強く、単語結合の構成素となるが、場所的な意味となる-'ei-seは用言との結びつきが弱く、さらに抽象化したものは非単語結合的に用いられることが判明した。この研究において今一つ重要な点は、-'ei-seの観点から動詞と名詞の語彙=文法的な分類を行なった点である。
単語結合における-'ei-seの意味と結びつく用言との関係は以下のとおりである。
(1) 「出る」動作・「出す」動作の客体としての-'ei-se:-'ei-se格で表される場所に含まれるものとして話し手が認識するのは「出る」動作の場合は動作の主体であり、「出す」動作の場合は動作の客体である。-'ei-se格体言と用言はより客体的関係である。体言と用言は強い結びつきであり、奪取動詞の場合はさらに-ryr格が加わり2重の強い結びつきを形成する。-'ei-se-bu-te(エソブト)格、-ro-bu-te(ロブト)格への置き換えが可能である。
gu-mur-'ei-se bes-'e-na-da (+離脱動詞) 「網から抜け出る」
ju-me-ni-'ei-se ji-gab-'yr gge-nai-da (+奪取動詞) 「ポケットから財布を取り出す」
(2) 「受け取る」動作の客体としての-'ei-se:話し手が認識するのは客体である。やや客体的関係であり、2重の強い結びつきである。-'ei-se-bu-te格、-ro-bu-te格への置き換えが可能である。
'yn-haiq-'ei-se ton-'yr bir-ri-da (+取得動詞) 「銀行から金を借りる」
'er-gur-'ei-se mu-'an-'yr ny-ggi-da (+感覚動詞) 「顔から無事を感じる」
(3) 移動の出発点としての-'ei-se:話し手が認識するのは、自動移動動詞と携行動詞では主体、他動移動動詞では客体である、携行動詞はその語彙的性格により客体にも間接的に焦点が当てられる。より状況的な関係であり、より弱い結びつきである。結びつきには到達点を表す-'ei(エ)格や-gga-ji(カジ)格、経路を表す-ro(ロ)格が加わりうる。-'ei-se-bu-te格、-ro-bu-te格への置き換えが可能である。
bagg--'ei-se dyr-'e-'o-da (+自動移動動詞) 「外から帰ってくる」
bi-haiq-gi-'ei-se pog-tan-'yr dder-'e-ddy-ri-da (+他動移動動詞) 「飛行機から爆弾を落とす」
si-cei-sir-'ei-se son-'yr ga-jie-'o-da (+携行動詞) 「死体室から手を持ってくる」
(4) 基準点としての-'ei-se:話し手が認識するのは主体である。より状況的な関係であり、より弱い結びつきである。-'ei-se-bu-te格、-ro-bu-te格への置き換えが可能である。
'ieg-'ei-se dder-'e-jin gio-'oi (+距離動詞) 「駅から離れた郊外」
'ie-gi-se 15bun ger-ri-da (+所要時間動詞) 「ここから15分かかる」
(5) 範囲の起点としての-'ei-se:用言・体言の種類に制限がない。より状況的な関係であり、より弱い結びつきである。必ず範囲の終点を表す-gga-ji格や範囲の方向を表す-'ei ger-cie(-にかけて)、後置詞的用言si-jag-ha-'ie(始めて)などを伴う固定された単語結合を形成する。
3si-'ei-se 4si-gga-ji bo-co-ryr se-da 「3時から4時まで歩哨に立つ」
(6) 場所・抽象的背景としての-'ei-se:用言の種類に制限はない。話し手が認識するものは主体である。状況的な関係であり、弱い結びつきである。滞在を表す一部の用言では-'ei格に置き換ええ、視覚活動動詞・言語活動動詞の場合、客体が-'ei-se格で表された場所にないときは-'ei-se-bu-te格、-ro-bu-te格への置き換えが可能である。
se-ur-'ei-se dai-hoi-ga 'iss-da 「ソウルで大会がある」
dai-jaq-gan-'ei-se kar-'yr man-dyr-da 「鍛冶部屋で刀を作る」
ge-sir-'ei-se bu-'ek-'yr bo-da 「居間から台所を見る」
(7) 主体としての-'ei-se:体言は団体名詞である。主体的な関係であり、弱い結びつきである。
hag-gio-cyg-'ei-se baq-'an-'yr nai-sei-'u-da 「学校側で方案を出す」
この研究は、ロシアにおいて展開された単語結合論、とりわけ旧ソ連科学アカデミーの単語結合論に基づいて、現代朝鮮語の単語結合の設定を試みたものである。まず、ロシアの単語結合論を分析し、これをもとにした南北朝鮮の文法論と日本での研究に簡単に触れた後、単語結合論を実際に現代朝鮮語に適用し、併せてこの理論に立脚していかなる文法記述が可能であるかを提示しようと考える。
この研究における考察によって、現代朝鮮語には単語結合を形成する以下のような単語付加的従位的結びつきがあることが確認された。
a) 客体的結びつき
b) 主体的結びつき
c) 規定的結びつき
d) 状況的結びつき
e) 補充的結びつき
また、現代朝鮮語の単語結合を設定するにあたり、次のような問題点があることが分かった。
1) 陳述性をいかに設定すべきか
2) 単語結合以外の統辞論的単位をどのように設定すべきか
3) 非単語結合的な状況語をどのように処理すべきか
なお、単語結合と密接な関連をもつものとして名詞の格があるが、この研究では単語結合論に基づいた格の記述の方法を簡単に提示した。
単語結合論は格の意味を分析するのに貢献するのみならず、主要な統辞論的単位として多大な意義を持ち、更には名詞分類や動詞分類などの語彙分類にも少なからぬ貢献をするであろうと信じる。
この研究は筆者の研究テーマである現代朝鮮語の格研究の一環として、上記の諸研究の続編的な位置付けをもつものである。-'ei-se格の場合と同様に、90年以降に韓国で出版された小説から-'ei格の用例約3000例を抽出し、言語事実に立脚した分析を加えた。理論的な基礎は単語結合論にある。この研究においても-'eiの観点から動詞分類がなされている。
この研究の結果、-'ei格は以下のように分類された(一部のみ詳細に記述する)。
1. 単語結合の構成素としての-'ei格
1.1 動作の前提となる場所としての-'ei格
1.1.1 存在場所
[場所]-'ei + [存在詞]/[存在動詞]
sa-ram-'i giet-'ei 'iss-da 「人がそばにいる」
'i sei-saq-'ei jon-jai-ha-da 「この世に存在する」
[場所]-'ei + [bo-'i-da(見える)]/[dyr-ri-da(聞こえる)]
ba-ram-gier-'ei dyr-ri-da 「風間に聞こえる」
[場所]-'ei + [形容詞]
hais-bic-'i par-ddug-'ei dda-gab-da 「日差しが腕に熱い」
1.1.2 動作場所
[場所]-'ei/-'ei-se + [滞在動詞]/[反復動詞]
doq-nei-'ei sar-da 「町に住む」
bu-'ek-'ei 'er-ssin-ge-ri-da 「台所に出入りする」
1.1.3 到達点
([場所]-'ei-se +) [場所]-'ei + [移動動詞]/[到達動詞]
gor-py-jaq-'ei ga-da 「ゴルフ場へ行く」
jib-'ei do-cag-ha-da 「家に着く」
派生した慣用句:ma-'ym-'ei dyr-da「気に入る」、(mo-syb-'i) nun-'ei dyr-'e-'o-da「(姿が)目に入る」など
1.1.4 距離計測の到達点
[場所]-'ei + [ga-ggab-da(近い)]
gaq-hoa-do-'ei ga-ggab-da 「江華島に近い」
1.1.5 出現場所
[場所]-'ei + [出現動詞]
par 'ui-'ei (so-rym-'i) dod-'a-na-da 「腕の上に(鳥肌が)立つ」
1.2 客体的な場所としての-'ei格
1.2.1 付着点
[場所]-'ei + [付着動詞]/[添加動詞の受動形]
bieg-'ei ger-ri-da 「壁にかかる」
baq-'ei gat-hi-da 「部屋に閉じ込められる」
1.2.2 添加点
[場所]-'ei/-'ei-da-ga + []-ryr + [添加動詞]/[生産動詞]/[転送動詞]/[所持動詞]
dam-bai-'ei bur-'yr but-'i-da 「タバコに火をつける」
'i-ma-'ei ju-rym-'yr man-dyr-da 「額にしわを作る」
bun-'ei sig-mur-'yr 'orm-gi-da 「盆に植物を移す」
'ib-'ei dam-bai-ryr mur-da 「口にタバコをくわえる」
1.3 客体としての-'ei格
1.3.1 主体へ作用する客体 1.3.2 関与の客体 1.3.3 充填の客体 1.3.4 その他
1.4 状況語としての-'ei格
1.4.1 状況的場所 1.4.2 時間 1.4.3 価格 1.4.4 割合 1.4.5 原因 1.4.6 動作主=道具
2. 非単語結合における-'ei格
2.1 所属源 2.2 さまざまな状況的意味 2.3 その他
3. 後置詞を伴った-'ei格
-'ei dai-ha-'ie/dai-han「-について/ついての」など
4. 格と見なしがたい-'ei
4.1 列挙 4.2 副詞化した単語 4.3 分析的な形
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本研究は中期朝鮮語のKWIC索引を作成するために、コンピュータ処理をいかに行なうかについて述べたものである。現在のハングルのコード体系は現代語を処理するために用意されており、中期語の処理は前提とされていない。従って、中期語の処理は一般のテキストファイルが利用できず、多くの場合中期語が表示できるワードプロセッサを利用して中期語テクストの処理をしている。しかしながら、ワードプロセッサの機能だけでは中期語テクストをデータとして処理するには力不足であり、中期語のデータベース化は少なからぬ困難を伴っているのが実情である。
本研究では中期語のKWIC索引を、韓国国内のワードプロセッサとC言語を用いて作成しようとするものであり、独自のコード体系を用いて中期語を処理するための方法論を提示する。また、中期語テクスト処理において軽視されがちであった傍点についても、本研究ではテクストの一部としてKWIC索引に積極的に取り込むことを試みている。
共和国の文法論において1960年と1963年に刊行された『朝鮮語文法1・2』(共和国60年文法) は、共和国科学院の創設後はじめて作られた文法書として、共和国の文法論の全体像を知る上で重要な書籍である。この文法書は1952年と1954年に旧ソ連科学アカデミーで刊行した『ロシア語文法』(ソ連60年文法) の影響を受けていると推測されるが、単語結合論に関して見ると、『共和国60年文法』は『ソ連60年文法』と少なからぬ違いがあることが分かる。とりわけ『共和国60年文法』の統辞論編では単語結合論の中心的単位である「単語結合」が認められていないが、共和国が旧ソ連の単語結合論を導入するに当たってどのような問題があったのか、共和国の単語結合論はどこに問題があるのかについて考察するのが本稿の目的である。
本稿は中期朝鮮語のアクセントに関し、その体系の記述方法について簡単に考察するものである。中期朝鮮語アクセント体系に関する研究は、金完鎮がいわゆる去声不連三、語末去平交替の現象を指摘し、金星奎が去声不連三に外れるアクセント現象を詳しく考察した。また日本の研究でも、門脇、福井らがアクセント論の観点から考察を行なっている。
本稿では、日本における研究と同様に、アクセント論の観点から今一度中期朝鮮語のアクセント体系の記述方法を考えてみることにする。
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この研究は15世紀朝鮮語のいわゆる「声調」体系をアクセント論の観点から分析したものである。15世紀語の声調の本質はアクセントであり、アクセント核は昇り核である。
'er-gur- ○○ ha-n@r+ ○「○ gu+rum+ 「○○
また、「去声不連三」「語末去平交替」と呼ばれてきた現象は、非音韻論的レベルで実現する交替であり、音韻論的レベルであるアクセント核とは次元を異にすることを明らかにした。
用言は語基活用によりアクセント核の位置が変わりうることは既存の研究で明らかにされているが、、接尾辞も同様に語基活用によってアクセント核の位置が変わりうることを本研究で明らかにした。
| -de- | |
I・II | de+ | | 「○ |
IV da+ | | 「○ |
| -n@- | |
I・II | n@- | | ○ |
IV no+ | | 「○ |
本研究では、アクセントの境界として「強い境界」と「弱い境界」を設定した。強い境界とは、個々のアクセント節において固有のアクセントが保たれるのに対し、弱い境界では語末去平交替が起こり、高調の連続を避ける傾向があることを明らかにした。弱い境界は、2つのアクセント節の境界が曖昧になり、1つのアクセント節に統合される過程にあると見、自立語の文法化とも関連があることに言及した。
強い境界:sy+re+//di+ge-nyr+ 「○○//「○○○ = 高高//高低高
弱い境界:'u+ri-/d@r+h@r+ 「○○/「○○ = 高低/高高
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