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平成28年度9月卒業式・学位記授与式を9/26に実施しました

2016年09月27日掲載

9月26日(月)、平成28年度9月卒業式・学位記授与式が、本学留学生日本語教育センターさくらホールにおいて行われました。外国語学部9名、言語文化学部3名、国際社会学部4名、博士前期課程(大学院総合国際学研究科)12名、博士後期課程(大学院総合国際学研究科及び大学院地域文化研究科)(平成28年4月~9月)6名の計34名が卒業・修了しました。

立石博高学長式辞


 

 

 

 

平成28年度秋卒業式 立石博高学長式辞


今日、本学をご卒業・修了される皆さんに、学長として東京外国語大学を代表し、心からお祝い申し上げます。社会人として広く世界に巣立っていく皆さん、また、さらなる学究の意欲に燃え、進学の道に入られる皆さん、それぞれの皆さんの新たな門出にあたり、贐(はなむけ)の言葉を述べさせていただきます。

さて、皆さんもご存じのように、私たちの大学は21世紀のグローバル社会のなかで活躍できる人材養成に努めています。つまり、グローバル言語である英語と世界諸地域の固有言語である地域語をともに駆使することができ、異文化理解と多文化共生の実現をめざす人材、「多言語グローバル人材」として活躍することを皆さんに期待しているわけです。皆さんは本学での学びのなかで、「多言語グローバル人材」としての素養を身につけられたと確信します。そして今後もさらに精進して、そうした力を十分に発揮していただきたいと願っています。

しかしそれは、私たちが「グローバル化」という現象を無批判に受け入れ、闇雲にこの流れに同調するということではありません。グローバル化は、ヒトとモノと情報の流れを加速化させ、地球規模での一体化を醸成していますが、同時に、ローカルな社会、つまり地域社会の伝統的な経済を衰退させ、その文化的個性を抹殺する危険があります。そして、地域社会がこれまで維持してきたさまざまな安全弁を取り除いて社会的・経済的格差を深刻化させる危険も併せ持っているのです。

皆さんのなかには2012年4月、つまり言語文化学部と国際社会学部の二つの学部がスタートしたときに入学された方も多いと思います。このときに前学長であった亀山先生が入学式で言われた言葉を記憶にとどめているでしょうか。「バベルの塔」の神話にからめながら、「グローバリズムと呼ばれる現代世界の状況」が新たな「バベルの塔」を建てようとしているが、それは「必ずしも、平等や公正や一体化といった平和的原理」にのっとって建設されてはいないと指摘されました。そして東京外国語大学という学びの場の4年間を通じて、「グローバル人材」としての自覚をもちつつも、「戦士(warrior)」ではなく、「選手(athlete)」として知力と人間力を競い合う姿勢を身に着けてほしいと希望されたのでした。

亀山前学長は次のようにも言われました。「広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗りこえて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間」として成長してほしい、と。

繰り返します。明日から新たなスタートを切る皆さん、「選手(athlete)」としての姿勢を忘れないでください。そして、自分の行いが、「競争」すなわち勝ち負けを競い合っているのか、それとも「競技」すなわち技を競い合っているのかを常に省みていただきたいと思います。

しかし、現実の競争社会のなかで、このような省察の姿勢を堅持するのは決して容易ではありません。それを堅持するためには、エゴイズムにブレーキをかけ、皆さんが生きている社会がかかえるさまざまな矛盾を自分のものとして感じる必要があると思います。

本学では去る4月に前ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ氏をお招きして講演をしていただきましたが、「世界で一番貧しい大統領」だったムヒカさんが学生の皆さんに問いかけたのは、まさにこのことでした。「私たちは人類という種の一員です。だからこそ、これからやってくる世界を、私たちが今生きている世界よりもより良いようにしよう」、そうした意思をもつことを熱く訴えたのです。

そしてグローバル化がもたらしている弊害を二つ指摘されました。一つには「金融資本が爆発的に大きくなったために、通貨を中心にした生活の姿が変貌して、この国際相場に翻弄される人々が増えた」ということ、もう一つには「私たちが自身の文明を発展させた結果、大量のナイロンが太平洋の中を浮遊する」といった深刻な環境破壊が進行していることです。

この講演を締めくくるにあたってムヒカさんは若者の皆さんに希望を託しています。すこし長いですが、引用させてください。

「悪いことがあって、それを変えたいと思うこと、不満を持つことは良いことです。ですが、単に何もしないで不平ばかりを言っているのでは、まったく変わりません。同じ仲間と気持ちを一つにして一緒に行動しなければならないと思います。それがあなたの人生に、あなたの存在に意味を与えることだと思います。さもなければ、失望ばかりが残されます。人生には希望が必要です。もし希望のない人生になってしまうとしたら、どうでしょう。砂をかむような人生になってしまうでしょう。」(*)

今日、社会人としての新たなスタートを切られる皆さん、そして学究の道を深めようとする皆さん、皆さんがグローバル化にいたずらに抗(あらが)うのでも、その流れに棹差すのでもなく、人類という種にとってのより良い世界の実現にむけて、まさに「選手(athlete)」として取り組まれ、活躍されることを心より希望します。

最後に一つお願いがあります。本学のOB・OG組織である東京外語会の活動に加わっていただきたいということです。東京外語会は、「東京外国語大学と連携し、外語大ブランドをともに高めていく」同窓会組織です。国立大学法人を取り巻く環境には、たいへんに厳しいものがあります。今日卒業される皆さんは、皆さんの先輩方とともに本学にとってのステークホルダーとして本学の発展のためにご協力と支援をお願いしたいと思います。

以上、皆さんのご活躍を祈念して、学長の式辞とさせていただきます。

2016年9月26日  国立大学法人 東京外国語大学長 立石博高

(*) 国際情勢研究会・著『世界でいちばん貧しい大統領だったホセ・ムヒカ氏初来日講演全文』(ゴマブックス株式会社、2016年)を参照。