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平成27年度9月卒業式・学位記授与式を9/25に実施しました

2015年09月29日掲載

9月25日(金)、平成27年度9月卒業式・学位記授与式が、本学留学生日本語教育センター さくらホールにおいて行われました。外国語学部22名、博士前期課程(大学院地域文化研究科及び総合国際学研究科)11名(国際協力専攻平和構築・紛争予防(PCS)専修コース8名を含む)、博士後期課程(平成27年4月~9月)6名の計39名が卒業・修了しました。

 

 

 

平成27年度秋卒業式 立石博高学長式辞

今日、社会人として広く世界に向けて巣立っていく卒業生の皆さん、また、さらなる学究の意欲に燃え、進学の道に入られる皆さん、そして、大学院博士前期課程、後期課程のそれぞれで学位を取得された皆さん、皆さんの新しい門出を祝い、東京外国語大学長として、餞(はなむけ)の言葉を述べさせていただきます。

今日、外国語学部を卒業される皆さんのなかには、海外留学などのために留年された方もおられると思いますが、4年間で卒業される方は、2011年4月に入学されています。その入学式で、亀山郁夫前学長が皆さんにお話ししたことを覚えていらっしゃるでしょうか。

この年の亀山前学長の挨拶は、3月11日に起こった東日本大震災による甚大な被害を前にして、これから大学生活を送られようとしていた皆さんへの強い呼びかけでした。それは、「この未曾有の事態をまのあたりにして、私たちはいま呆然とし、自信を失い、将来にたいして強い不安を感じています。」「しかしその一方、『生きてここにある』ということのかけがえのない意味に目覚め、『生きてある』という事実そのものが、ひとつの恩寵であり、ひとつの奇跡であるといった感慨を抱いた人々も少なくないはずです。」そして、「いま、私たちに残されている責務とは、『忘れない』という態度です。」 と述べられ、「私たちの心が、社会のきびしい現実や他者の不幸に対して、つねに新鮮な『共振』(レゾナンス)を保ち続ける」必要があること、そのためには「豊かな『歓び』と『驚き』の発見に努めなくてはならない」、「不断に自分を変えるための努力を惜しまない」ことが必要だというメッセージです。

皆さんは、本学での豊かな大学生活を通じて、大きく成長したと、私は確信しています。
講義や演習の学業を通じて、学内競漕大会や大学祭に参加して、また課外活動やアルバイト、さらに留学などを体験して、たくさんの「歓び」や「驚き」を発見したのではないでしょうか。そうした活動のなかで、自分を成長させるために若者らしく頑張ってきたと、今日この場で皆さんが自負されるよう願ってやみません。

しかし、「忘れない」という態度はどうだったでしょうか。未曾有の大災害とされ、あれだけ「絆」や「思いやり」が喧伝されたにもかかわらず、4年半の月日を経たいま、「被災地を忘れていない」と言い切れるでしょうか。今年の3.11をめぐる報道では、「災害の記憶が風化している」と警鐘が唱えられました。今ここで、あらためて、「風化させない」、「語り継がなくてはならない」という思いを強くしていただきたいと思います。なぜなら、今もプレハブの仮設住宅で生活されている方が岩手・宮城・福島の3つの県で8万人に上り、全国の避難者数はおよそ20万人もいるのです。そして福島第一原発の事態も、完全にコントロールされているとはとても言い難いからです。

さて、たとえ長い年月を経ても、私たちが「忘れない」という態度を堅持すべきことがらがほかにもあります。今年は第二次世界大戦後70年目にあたって、先の戦争の辛い経験や体験を風化させないように、さまざまな催しや企画が行なわれています。太平洋戦争で日本は、海外と国内でじつに310万人の戦没者を出したとされます(厚生労働省の推計)。 それだけではなく、アジア・太平洋の各国に甚大な被害を与え、各国の戦争犠牲者数はこの数の何倍にも上ることは間違いありません。日本の戦争の悲惨さを語るとき、私たちが加害者であったことも忘れてはなりません。今ここで、あらためて皆さんにも、大戦の記憶を「風化させない」、「語り継がなくてはならない」という思いを強くしていただきたいと願います。

私は今年の入学式で新入生に対して、この戦争で亡くなった本学の先輩の一人のことをとりあげました。繰り返したいと思います。

学徒出陣で多くの若者が亡くなりましたが、その一人が瀬田万之助さんでした。瀬田さんは東京外国語学校支那語貿易科を繰り上げで卒業して入営し、フィリピンのルソン島で21歳の若さで戦死しました。その瀬田さんが、死の二日前に郷里の両親にあてた手紙が、戦没学徒の遺書を集めた遺稿集『きけ わだつみの声』に収められています。
≪マニラ湾の夕焼けは見事なものです。こうしてぼんやりと黄昏時の海を眺めていますと、どうしてわれわれは憎しみ合い、矛を交えなくてはならないかと、そぞろ懐疑的になります。避け得られぬ宿命であったにせよ、もっとほかに、打開の道はなかったものかと、くれぐれも考えさせられます。あたら青春を、われわれはなぜこのようなみじめな思いをして暮らさなければならないのでしょうか。若い有為の人びとが次々と戦死していくことはたまらないことです。中村屋の羊羹を食べたいと今ふっと思い出しました。≫

皆さんは、これからは社会人として、地球市民として大いに活躍されるでしょう。同時に、日本社会、国際社会のさまざまな困難や矛盾にも直面するでしょう。そのときに、瀬田万之助さんのような悲劇が繰り返されてはならない、ということを肝に銘じておいていただきたいと思います。ユネスコ憲章の前文にありますように、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」のです。

最後に、さらに二つお願いがあります。一つは、本学のOB・OG組織である東京外語会の活動に加わっていただきたいということです。東京外語会は、「東京外国語大学と連携し、外語大ブランドをともに高めていく」同窓会組織です。国立大学法人を取り巻く環境には、たいへんに厳しいものがあります。今日卒業される皆さんは、本学にとってのステークホルダーとして本学の発展のためにご協力と支援をお願いしたいと思います。

もう一つは、社会人になられて多少ゆとりができたときで結構ですが、本学が昨年からスタートした「建学150周年基金」を支援していただきたいということです。皆さんもご存じのように、本学は昨年度文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」事業に採択されました。本学は「グローバル化牽引大学」として、TUFS Global Japan Officeを主要な海外協定校に設置し、アジアやアフリカ、ラテンアメリカから優秀な留学生を受け入れて、真の知日派人材を育成していきます。そのためには、奨学金制度を充実させて、裕福でない留学生を支援することが必要です。

どうか、2023年の東京外国語大学を想像してみてください。つまり1873年(明治6年)の建学の年から150年目となる、いまから8年後の本学の姿です。OB・OGの皆様からの篤い財政的支援と人的支援に支えられて、本学は「地球社会化時代における教育研究の拠点大学」つまりグローバル・ユニヴァーシティーとなり、この府中のグローバルキャンパスで日本人学生と世界各地からの留学生が、ともに学び合い、切磋琢磨していることでしょう。私たち教職員もがんばりますが、卒業される皆さんが母校を末永く支援してくださることを心より希望いたします。

以上、皆さんのご活躍を祈念して、学長の式辞とさせていただきます。

2015年9月25日  国立大学法人 東京外国語大学長 立石博高