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平成26年度卒業式・学位授与式を3/26に実施しました

2015年03月27日掲載

3月26日(木)、平成26年度卒業式・学位記授与式が府中の森芸術劇場「どりーむホール」において行われました。

 

 

平成26年度卒業式 立石博高学長式辞

この4月1日に、社会人として広く世界に向けて巣立っていく学部卒業生の皆さん、また、さらなる学究の意欲に燃え、大学院進学の道を選ばれた皆さん、そして、大学院博士前期課程、後期課程のそれぞれで学位を取得され、新たな歩みを始めようとする皆さん、皆さんの新しい門出を祝い、東京外国語大学長として、餞(はなむけ)の言葉を述べさせていただきます。

今日、外国語学部を卒業される皆さんのなかには、海外留学などのために留年されたかたもおられると思いますが、4年で卒業されるかたは、2011年4月に入学されています。その入学式で、亀山郁夫前学長が皆さんにお話ししたことを覚えていらっしゃるでしょうか。

この年の亀山前学長の挨拶は、3月11日に起こった東日本大震災と福島原発事故による甚大な被害を前にして、これから大学生活に入られようとする皆さんへの強い呼びかけでした。「この未曾有の事態をまのあたりにして、私たちはいま呆然とし、自信を失い、将来にたいして強い不安を感じています」、「しかしその一方、『生きてここにある』ということのかけがえのない意味に目覚め、『生きてある』という事実そのものが、ひとつの恩寵であり、ひとつの奇跡であるといった感慨を抱いた人々も少なくないはずです」、「いま、私たちに残されている責務とは、『忘れない』という態度です」と述べられました。そして、「私たちの心が、社会のきびしい現実や他者の不幸に対して、つねに新鮮な『共振』(レゾナンス)を保ち続ける」必要があること、そのためには「豊かな『歓び』と『驚き』の発見に努めなくてはならない」、「不断に自分を変えるための努力を惜しまない」というメッセージを送られたのです。

皆さんは、本学での豊かな大学生活を通じて大きく成長されたと、私は確信しています。講義や演習の学業を通じて、学内競漕大会や外語祭に参加して、また課外活動やアルバイト、さらに留学などを体験して、たくさんの「歓び」や「驚き」を発見したのではないでしょうか。さらにそうした活動のなかで、自分を成長せるために若者らしく頑張ってきたと、今日この場で皆さんが自負されることを願ってやみません。

しかし、「忘れない」という態度はどうだったでしょうか。未曾有の大災害とされ、あれだけ「絆」や「思いやり」が喧伝されたにもかかわらず、4年の月日を経たいま、「被災地を忘れていない」と言い切ることは難しいと思います。今年の3.11をめぐる報道では、「災害の記憶が風化している」と警鐘が唱えられました。そして、「風化させない」、「語り継がなくてはならない」という言葉が、繰り返されました。

ここで私は、4月から社会人になられる皆さんに、期待とお願いを述べさせていただきます。「忘れない」、「記憶する」という態度はもちろん保ち続けるべきですが、それにくわえて、「思い出す」、「想起する」という態度を堅持し、そのための方法をつねに研ぎ澄ませていただきたいのです。これはけっして難しいことではなく、皆さんが4年間の学業と学生活を通じて培ったはずのものです。端的に言いましょう。それは「歴史から学ぶ」ということです。

3.11は私たちに多くの教訓を与えてくれましたが、もっとも重要なことは、私たちがいかに「災害の歴史」を無視して、科学技術の発展を過信し、傲慢になっていたかということだと思います。3.11は「未曾有の災害」と言われますが、はたして未曾有、つまり「未だかつて有らず」であったかというとけっしてそうではなかったことを「歴史」は教えてくれます。

2011年から400年前の1611年には、慶長三陸地震が起こっており、震度はそれほどでもなかったのですが、強大な津波が発生したと記録されています。大津波は現在の三陸沿岸や北海道太平洋沿岸に来襲し、当時の伊達政宗が命じて纏めた『駿府記』には、伊達領内では「波涛大漲来、悉流失、溺死者五千人」(海辺の人家に大津波が来て溺死者が5000人出た)と記録されています。仙台市の波分神社(なみわけじんじゃ)は、このときに到来した津波が二つに分かれて、その後、水が引いた場所とされていますが、この地は太平洋岸から5キロ以上も内陸にあるのです。私たちが「歴史から学ぶ」姿勢を忘れずにもっと謙虚になっていれば、あれほど甚大な被害をだすことはなかったと考えられます。

4月から皆さんは、社会のきびしい現実に直面します。これまでのさまざまなできごとを「忘れない」あるいは「記憶する」という態度を取り続けるには無理があります。大事なのは、繰り返しますが、「思い出す」という態度であり、しかも個人的な体験だけではなく、過去の人びと、その時代の人びとがどのように記憶し記録していたかを想起することです。

19世紀末に当時のドイツの宰相であったビスマルクが言ったとされる言葉があります。「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」という戒めです。というのも、仕方がないことですが、個人の経験や体験は風化し、その記憶は往々にしてゆがめられてしまいます。ですから、皆さんは、さまざまなできごとに遭遇したときには、「歴史から学ぶ」という姿勢を思い出し、さまざまなことがらを過去から想起して、しっかりと対処していただきたいと思うのです。東京外国語大学での学びを通じて皆さんは、人文社会科学の教養、なかでも「ものごとを歴史的にとらえる」という教養を身につけられたと私は確信しています。社会人になっても皆さんは、この姿勢を生涯たいせつにしていただきたいと思います。

最後に、さらに二つお願いがあります。東京外国語大学は、これまでも日本の国際化をリードする大学であることを自負してきました。その歴史を踏まえつつ、昨年、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」事業に応募し、本学の構想は「グローバル化牽引型」として採択されました。この構想については本学HPなどで確認していただきたいのですが、その一つが、真の多言語グローバル人材を養成するために、本学学生は、在籍中に一人2回以上の留学をするという「留学200%」を実現することです。

学生たちが世界諸地域で安全・安心な留学生活を送るためには、世界の各地で活躍する本学のOB・OGの支援が不可欠です。東京外語会は、「東京外国語大学と連携し、外語大ブランドをともに高めていく」同窓会組織ですが、海外に50以上の支部を置いており、本学の構想への全面的支援を約束されています。今日卒業される皆さんもぜひ、この東京外語会の活動に加わっていただき、皆さんの後輩が多言語グローバル人材として成長するよう支援していただきたいと思います。

もう一つは、社会人になられて多少ゆとりができたときで結構ですので、本学が昨年からスタートした「建学150周年基金」を支援していただきたいということです。本学は「グローバル化牽引大学」として、TUFS Global Japan Officeを主要な海外協定校に設置し、アジアやアフリカ、ラテンアメリカからの優秀な留学生を受け入れて、真の知日派人材を育成していきます。そのためには、奨学金制度を充実させて、裕福でない留学生をサポートすることが必要なのです。

どうか、2023年の東京外国語大学を想像してみてください。つまり1873年(明治6年)の建学の年から150年目となる、いまから8年後の本学の姿です。OB・OGの皆さんからの篤い財政的支援と人的支援に支えられて、本学は「地球社会化時代における教育研究の拠点大学」、つまりグローバル・ユニヴァーシティーとなり、このキャンパスで日本人学生と世界各地からの留学生が、ともに学び合い、切磋琢磨していることでしょう。私たち教職員もがんばりますが、卒業される皆さんが母校を末永く支援してくださることを心より希望いたします。 

以上、皆さんのご活躍を祈念して、学長の式辞とさせていただきます。

2015年3月26日 国立大学法人東京外国語大学長 立石博高