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クラクフ留学日記〜2月24日木曜日〜

2022.03.03 その他,ポーランド,ポーランド語,ヤギェロン大学

Dzień dobry! こんにちは。

本日2月24日は、「脂の木曜日」という祝祭日でした。

キリスト教に基づいた祝祭日ですが(断食や節制を必要とする四旬節の直前に、ご馳走をたくさん食べておこうというもの)、現在のポーランドでは、「ポンチキ」という伝統的な丸いドーナツを大量に食べる日として、イベント化している様子です。

脂の木曜日当日の朝は、お菓子屋さんの前にポンチキを求める人の行列ができるとか。

ということで、私もぜひこのビッグウェーブに乗ろうと、いそいそ早起きをしたわけです。


身支度をしていると、ルームメイトから、「ロシアがウクライナに侵攻した」と聞かされました。まさか本当に戦争をするとは思わなかった、というのが最初の率直な感想です。

支度を中断してインターネットでニュースをチェックすると、かなり状況が悪いということだけは分かりました。


ともかく、ポンチキを買いに出ました。

街には、ポンチキが入った箱を嬉しそうに抱えた人が行き交っていました。

お目当ての店に着くとすでに、50m以上はありそうな長蛇の列ができていました。

というのもこの店は、「クラクフでポンチキを買うならここ」と誰もが口を揃えて言うほどの人気店なのだそうです。



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「ポンチキは今日じゃなくても買えるんだ!」というもう一人の自分の声を無視して、さっそく列に加わりました。

とはいえ、たかだか50m強の行列ですし、出来上がったポンチキを売り渡すだけですから、すぐに私の番が来ると思っていました。しかし列は異常に進みません。やっと店の看板が見えてきた頃には、並び始めてから3時間が経過していました。そこからさらに1時間待ち、やっと店に入ってみると、売り子さんが二人しかいません。それに、ポンチキの生産スピードも追いついていない様子です。そりゃあ遅いわけです。

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寒い屋外で4時間立ちっぱなしだったのでかなり空腹を感じており、予定より多く、4個も購入してしまいました。ちょっと何かに負けた感じがします。

ただ、他の人は数十個単位を平気で買っていましたから、それに比べたら4個なんて可愛いものです。

売り子さんが紙に包んでくれたポンチキを受け取ると、出来立てらしく、ほんのりと温もりを感じました。


もちろん4個のポンチキは全て自分一人で食べます。1個目は第一印象を楽しむため、2個目はさらにお腹を満たすため、3個目は風味を復習するため、4個目は名残惜しさを断ち切るため。一個一個に意味があるのです。

食べてみると、さすが人気店だけあって、揚げドーナツの概念がひっくり返るほど美味でした。

生地の出来からして違います。きめの細かい滑らかな生地で、脂の美味しい匂いを漂わせつつも脂っこさを感じさせない絶妙な塩梅です。生地には更にオレンジピールが練り込まれており、飽きのこない風味と食感が加わっています。外側には厚いグレーズが惜しみなく掛かっています。噛むたびに、砂糖のざらついた感触とストレートな甘味が口の中に広がり、食いしん坊だけが感じる類の恍惚感を引き起こします。中には香り高いバラのジャムがたっぷり。ジャム自体の甘さは強すぎないので、パクパクと食べられてしまいます。

こうして私は、コーヒーを片手に、ポンチキ4個をペロリと平らげました。

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さて、ポンチキを食べ終わったあとは、インターネットで引き続き情勢について調べます。

今回の日記の目的は情勢を記録することではありませんので具体的な話は割愛しますが、出てくる情報はどれも悲観的なもので、状況は悪くなる一方のように見えました。

戦場から私の現在地までは陸続きですから、自身の安全にすらやや不安を感じました。

ただ、この状況をポーランドの人はどう思っているのかと、たまたま会った知り合い数人に聞いてみたところ、

「私たちは、NATOに入っているから安全」「ウクライナ出身の知り合いの身が心配だ」「ロシアの人も抗議しているし・・・」

と、自国の心配は全くと言っていいほどしていない様子。確かに、それに関して異論はありません。

とはいえ、ついつい情勢は気になって調べてしまいます。

もちろん、情勢は知るべきでその行動自体は続けていくべきなのですが、ふと私は、自身に対してある疑念を持ちました。

それは、「私がもし日本にいたら、ここまで積極的に知ろうとしていただろうか?」「これがもし他の国の出来事だったら、ここまで関心をもっていただろうか?」ということでした。

残念ながら、どちらの問いにも「いいえ」と答えるしかありません。

私がここまで興味をもっているのは、私が偶然置かれた状況に突き動かされているに過ぎません。

今も、これまでも、世界各地で罪のない人たちが健康に穏やかに生きる権利を奪われ続けていますが、私は(私たちは)それら全てに平等に注意を払って生活することは、多分しませんし、できません。

それが良いことなのか悪いことなのか、現時点では分かりませんが、少なくとも、自身のスタンスがとても不平等で流動的であることには気づけました。


繰り返しにはなりますが、情報収集自体は自身の糧にもなりますし、将来的に他の地域で起こっている争いや人権侵害に目を向けるきっかけにもなりますから、たゆまず続けていきたいものです。




【ギャラリー】

・ウクライナ食料品店に貼ってあった、救援物資を募る貼り紙。「服・食料・衛生製品などが必要。寄付は我々の店で受け付けて、適切な分配センターに送られる」とあります。


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・ウクライナ料理レストランの扉に貼ってあった、義援金を募る貼り紙。義援金振込先の口座番号が書いてあります。


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