外国から見た日本


東京外国語大学は世界中から留学生を受け入れており、日本人学生が学内で留学生に会う遭遇率は 日本で一番高いと言われています。その特色を活かして、今の日本は外国の方々にどのように見られているのかを 知るためにアンケート調査を行いました。 留学生の率直な意見から、客観的に日本を見つめなおしてみませんか。

Q1: 2011年3月11日に、日本において大きな地震があったことはご存じですか?
アンケート対象者を震災後に来日した留学生に限定したことから、 98%の留学生が東日本大震災が起きたことを把握していました。


Q2: 来日前、震災後の日本に来ることに対して恐怖心はありましたか?
日本への留学に対して恐怖心を抱いていた留学生は52%にも上りました。


Q3: なぜ恐怖心をもっていましたか?
その理由として最も多かったのは、「日本中が放射能によって汚染されていると思ったため」でした。 実際はそのような事実は無いものとされていますが、外国メディアの報道の仕方によってこのようなイメージを抱いていたのかもしれません。


Q4: 来日前、あなたの国のメディアは被災地の復興状況に関してどのように放送していましたか?
この質問に対しては下図のような結果になりました。留学生の28%が、“母国では復興は完了したという内容が多かった”と答えており、反対に61%の留学生は“復興はまだ終わっていない内容を伝えていた”と回答しました。


Q5: 現在の日本での生活を通じて被災地の復興状況についてどのように思いますか?
Q4を踏まえたうえで、この質問に対しては下図のような結果になりました。「全く復興は完了していない」という意見が減った半面、「どちらかというと復興は完了している」、「どちらかというと復興は完了していない」、「わからない」が増えています。東京で生活を送っているとあたかも復興は完了したかのように映ってしまう一方で、連日メディアが報道する被災地の様子を見て、復興は完了していないという意見も持っているようです。

Q6: 来日前に母国で放送されていた日本のイメージは正しかったと思いますか?
この質問には、38%の留学生が正しかったと答えた一方、62%の留学生は正しくなかったと答えました。

【Yesと答えた理由】
自国の報道と日本の現状の間に、さほど変化がなかったから。(エジプト・女性)
より多くの視点から報道する姿勢があったから。(スイス・女性)
だいたいメディアが伝えていた通り。(ウクライナ・男性)
実際日本に来て、それが実感できたから。(イラン・女性)
中国のメディアでもよく日本の良いことを放送している。震災してから復興しているときに沢山感動させる話も出た。(中国・女性)
日本のニュースをそのまま放送したから。(中国・女性) 
まだ復興はしていないから。日本人は想像以上になにげなく生活している。(韓国・女性)
東京に住んでいたら忘れがちですが、地震と津波の被害はまだまだ復興していないと思う。(ニュージーランド・女性)

【Noと答えた理由】
報道ほど危なくない。(ウズベキスタン・女性)
アメリカでは、日本の報道があまりされないため。(アメリカ・男性)
東北にのみ目が向けられているから。(台湾・男性)
誤った報道がなされていたから。(アメリカ・女性)
もはや日本のことを報道しなくなったから。(ブラジル・男性)
日本のニュースをそのまま放送したから。(中国・女性) 
実際よりも感情的だった。(イタリア・女性)
TEPCO(東京電力)は全部の情報をメディアに渡していない。お金が絡んでいるからではないか。なぜ中立した会社に調査を依頼しないのか疑問だ。(イタリア・男性)


Q7: 現在、あなたの国の人々は日本を安全な旅行先だと考えていますか?

この質問には、47%がYesと答えた反面、53%がNoと答えました。

【Yesと答えた理由】
大震災を契機により日本は震災に向けての準備がなされているはずだから。(エジプト・女性)
徐々に復興してきており、もはや心配はないと思うから。(スイス・女性)
震災への対策が十分に行われているし、地震もそんなに頻繁に来ないから。(スイス・女性)
依然として放射線への恐怖はあるが、少しずつ心象は良くなってきている。(スペイン・男性)
起こったのが11か月も前なので、もうニュースはない。放射能汚染の問題ももう終わったと思っている。(イラン・女性)
ブルガリア人の多くはあまり日本の状況を知らないから。(ブルガリア・女性) 
人による。日本が好きな人は安全だと考えているが、なかには子供を日本に旅行させたくない親もいる。だいたい安全だと考えている。(中国・女性)
日本は発展した国だから、心配する必要がない。(カンボジア・女性)

【Noと答えた理由】
まだ日本の状況について具体的なことを知らないため。(キルギス・女性)
依然として、放射線と地震への恐怖感が拭えていない状況だから。(エジプト・女性)
依然として多くの人が、放射線への恐怖心を抱いている。(ロシア・女性)
誤った報道がなされていたから。(アメリカ・女性)
放射線と地震で危険になったと考えているから。(アメリカ・女性)
依然として放射線が蔓延していると考えているから。(イタリア・女性) 
報道の内容を信じているから。また、スペインにはない、地震におびえているから。(スペイン・女性)
ドイツのメディアは日本のイメージを本当にひどく伝えている。ドイツ人は日本に旅行したくないと思う。(ドイツ・女性)




≪アンケート調査を通してわかったこと≫

アンケート調査から様々なことが読み取れますが、写真展の意義と照らし合わせて、下記のような結論を導き出しました。

結論:外国の人々は、日本に対して実状とは異なるイメージを持っている
理由① Q3にて、来日に対して恐怖心を抱いていた学生の内の半数以上(63%)が、「日本中が放射能に汚染されていると思ったため」という回答を示しているが、実際に放射能汚染が問題視されているのは日本中ではなく福島原発付近である。
理由②Q6における、「来日前に母国で放送されていた日本のイメージは正しかったと思いますか?」という質問に対して、半数以上(62%)の学生が「正しくない」と回答している。
理由③Q7における、「あなたの国の人々は日本を安全な旅行先だと考えていますか?」という質問に関して、半数以上(53%)が「NO」と回答している。また、その回答理由には、「放射能と地震で危険になったと考えているから(アメリカ・女性)」あるいは「ドイツのメディアは日本のイメージを本当にひどく伝えている(ドイツ・女性)」等、日本に対して誤ったイメージを原因としているものが多い。

日本に対する誤ったイメージがもたらす弊害:
日本製品の買い控えや観光客の減少など、風評被害が経済問題を引き起こす
理由震災直後に、既に原発事故に起因する風評被害が発生し(「日経BP net」2011年4月21日)、加えて震災から半年以上が経過した後も、被災地以外の場所で風評被害が発生している(「スポニチAnnex」2011年11月6日)。

注)私たちは、日本に対する誤ったイメージが引き起こす問題は風評被害には留まらないと考えています。従って、上記には風評被害に関する記載しかありませんが、そのことは他の様々な弊害を否定するわけではありません。

東北復興写真展写真展及びTohoku 10 × 26 Windowsの意義:
写真を通して被災地の「実情」を世界に伝え、「日本の風評被害」に対しても一定の効果を示す
「被災地の方々の復興に関する想いと写真を通して日本、そして被災地の実情を世界に対して伝える」私たちの活動は、「風評被害の解決」という観点から見ても、大きな意義を持つということが、今回のアンケート調査によって証明されるに至りました。



*今回のアンケートは以下の目的と条件のもと行いました。
目的
① 震災後の日本に留学することを決めたときの周囲の反応や留学生自身の心境を知る。
② 留学生が今の日本に対してどのような意見を持っているのかを知る。
③ 留学生の意見から、日本が今外国からどのように思われているのかを日本人が知る。
期間
2012年2月8日~17日
場所
東京外国語大学 キャンパス内
対象
2011年3月以降に来日した留学生83名(ISEP生)