近代教育思想史メモ

コンドルセ(1743-1794)

 フランスの啓蒙思想家、数学者。

 『人間精神進歩の歴史的展望の素描』は、コンドルセの進歩思想がよく表れている。進歩思想というのは、17世紀頃から発達した自然科学を基礎に、真理の認識によって人類の進歩がなされるという思想で、その背景には、それまでのヨーロッパにおいて古代ローマ・ギリシャの古典が規範として扱われていたということがある。「時代が進めば社会も人類もよりよく発展しているのだ」という感じ。

 近代の教育思想という文脈においては、彼がフランス革命に参加し、公教育委員会のメンバーとして提出した「コンドルセ案」がよく言及される。コンドルセはその後、急進派に身を追われ、投獄・獄中死を遂げることとなった。

 コンドルセ案では、公教育の原理について述べられている。その背景には、絶対王政が崩壊し、これから新しい人民の国家が作られるという社会的状況があった。特徴としては、理性中心の教育(知育と訓育で言えば知育にあたる)、教育の機会均等、教育を受ける個人のための教育と社会の進歩のための教育を考えた二重性、その二重性をふまえたうえで5段階に分かれた教育システム(初等学校、中等学校、アンスティテュ、リセ、国立学術院)、公権力からの独立と自由が挙げられる。

 個人のための教育と社会の進歩のための教育とは、教育はただ個人のためだけに行うのではなく、特に有能な者には高度な学問的教育を受けさせ、将来的には真理の発見によって社会の進歩に貢献することをさすものである。これをスポーツにたとえて言えば、健康づくりやストレス発散などの目的で行うスポーツはみんなのものであり、誰でも望めば参加することができるものである。しかし、特に優れた選手には特別な指導を受けさせ、世界的な舞台での活躍やスポーツそのものの進化・発展に貢献してもらうという面も存在する。

 先日ニュースで松岡修造が安藤美姫にインタビューをした際、普通の女の子としての生活も望んでいると言った安藤美姫のコメントに対して、「はっきり言いますが、それは無理です。彼女は実力もあるし、年齢も若い。ルックスもいいし、人気もある。メダルも期待されているから、他の選手がそうしているようにメディアとうまく付き合う方法を模索してほしい」と言っていた。これはある意味的を射た意見であり、またテニスの発展に多大な貢献してきた松岡修造だからこそはっきりと言えることである。社会のためにスケートをしているという責任感と自負心がなければ、いくら技術や才能があっても選手としては失格なのである。


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