5.教育基本法の概観

<教育基本法の概観>

 教育基本法の内容についてですが、ここではイメージをつかめれば、という程度の概観にとどめ、詳しい言及まではしません。いくつか近代教育思想に端を発する原理がありまして、

(1)教育権。これは憲法25条にて述べられている生存権に根拠をおくことができます。人は誰でも人間らしく生きる権利があって、教育を受けることもその中に含まれる、と考えます。教育権そのものは憲法26条で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と述べられています。

 教育基本法に立ち返ってみると、教育基本法第1条では「教育の目的」が規定され、「教育ってのは、人間が人間らしく成長できるようにするためのものだ」という感じのことが述べられています。人間らしく成長できるということを表すのに「人格の形成」という言葉が使われています。

 また、教育基本法第3条では「教育の機会均等」が規定され、「国民はみんな教育を受けようと思えば受けられるんだ。昔みたいに身分や思想によって差別しないんだ」「学びたいのにお金がなくてできない人のために、国は奨学をしますよ」という感じのことが述べられています。

(2)公権力の不介入。国や地方公共団体というのは、教育を受ける権利を保障するために教育を行わなければなりませんが、そこで何を教えるかということに口出ししてはいけないことが規定されています。某都知事が「フランス語は数が数えられないから」と言って、(仮に)その権力を濫用し都立高でのフランス語の授業を全部廃止するようなことがあってはいけないということです。教育基本法第10条に「教育は不当な支配に屈することなく」と述べられている通りです。公教育においては、特定の政治団体や宗教を支持したり批判することもしてはいけないとされている(教育基本法第8条「政治教育」、第9条「宗教教育」)のも、同じ理由でしょう。ただ、政治や宗教に対する理解を養うべきだ、とも規定されているので、中立の立場でやりましょうということです。

(3)義務教育は無償。教育基本法第4条で義務教育について、公教育での義務教育については授業料を徴収しないことが述べられ、第5条では男女共学について規定されています。

 その他に、第6条「学校教育」では「国・地方公共団体・法律の定める法人が学校を設立できます」「学校の教員は全体の奉仕者だからしっかりやれよ」ということが、第7条「社会教育」では「教育のためのハードウエア、例えば図書館とか博物館とか学校の施設とか、そういうのも作りましょう」ということが述べられています。


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