街の巨匠たち

ここでは、三吉以外の街の巨匠たちを紹介します。

瑞江の巨匠、 「赤煙突」 (2003年7月7日レビュー)


「赤煙突ラーメン、チャーシュー&煮玉子のせ」

昨今のラーメンブームの中でもその最大有力候補だったのが、いわゆる「とんこつしょうゆ」といわれるスープのものである。本会総裁も一時期はそういったものを好んで食べていたが、そのジレンマというのは、豚の脂(他の肉でもそうだが)にはうまみ成分が含まれており、たっぷりとあったほうが客受けがいい、つまり「こってりしていてうまい」のである。しかし、残ったスープが冷えると、その脂分が固形化して現れるわけで、その形相にぎょっとした人もいるのではないだろうか。当然、このような「こってり」なラーメンを食べた後は、胃がもたれるし、アイスとかが食べたくなるわけだ。うまみ成分を抽出した化学調味料を使うこともできるが、それでは面白くない。そんなわけで次第に本会総裁は、魚介類をベースとした醤油ラーメンに興味を移すようになった。コクと香りと透明感。この三つが私の中でラーメンを語る際に重要な項目となっていたが、これらを満たすのは、「喜多方」と呼ばれる醤油ラーメンなど、一部のものにとどまっていた。

そんななか、友人に連れられて来たこの店は、当初はまったく予想していなかったが(失礼)、そこで食べたラーメンは、それまでの価値観を一転させるようなものであったのだ。そう、それを例えるなら投打を兼ね備えた阪神のムーアのようなラーメンだった。(言うまでもなく、本会総裁は阪神ファンである。) このラーメンは、分類上は先に述べた「とんこつしょうゆ」なのだが、普通の大味なものとは一線を画していて、とんこつのうまみがぎゅっと閉じ込められていながら、それでいて胃にもたれるようなギトギトさがない。いわば、「こってり」であることの個性を強調し、苦手分野を極力まで抑えたような感がある。本会総裁は看板メニューの「赤煙突ラーメン」を食べたが、「黒煉瓦ラーメン」も独創的かつ個性的な、おいしいラーメンであることは想像に難くない。

さらにトッピングで、「煮たまご」と「チャーシュー」を頼んだが、これも名脇役といった感じでよかった。とある先輩の持論で、「店主が太っているラーメン屋はチャーシューがうまい」というものがあったが、ここの店は反例の筆頭例だろう。先輩は「チャーシューの研究を重ねていれば自然と太ってくるもんだ」と言いたかったのかも知れない。(厳密に言えば反例ではないのだが。)さて、ラーメン屋のチャーシューに対する持論というのは、以下のようなものだ。すなわち、「チャーシューを食べればその店のやる気がわかる」である。「赤煙突」のチャーシューは、一口食べた瞬間にある種の衝撃のようなものに襲われた。一言でいうならば、「ジューシー」。さんまに塩を振って炭火で焼いたような、そんな至高の秋の味覚を思い起こさせるかのような、豚肉の味覚の凝縮感だった。一口食べて「こやつできるな」と思ってしまった。



早稲田の巨匠、「早稲田の弁当や」(2003年9月3日レビュー)

三吉に対抗しうる弁当屋の筆頭として上げられるのが、この早稲田の弁当や、愛称「わせべん」である。この店は深夜2時まで開店している。最近は24時間営業の弁当屋も増えてきたが、ここは2時の閉店まで客足が途絶えないという驚異的な集客力である。もともとはチェーン店であったが、独立して現在の形に落ち着いたらしい。よく食べるのは、「ぎょうから弁当」である。揚げ餃子に唐揚げの入った脂ギッシュ(死語)な弁当で、値段も400円を切るというリーズナブルな価格設定も見逃せない。とある人の目撃情報によれば、唐揚げは揚げる前、ダンボールから出てきたらしい。ダンボールいっぱいの唐揚げを想像すると、ある種の畏怖の念を覚える。早稲田地域の一部の人間にはカリスマ的存在となっている。



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