◇◆ 卒業論文を書くために  B最後の仕上げ ◆◇

 

「@これから始める」「A読む、書く」と作業してきました。

ここからは、論文の本文を書き終えて(あるいは書いている最中にでも)、最後の仕上げをする際に必要なことをお話しします

これによって、論文のできばえも変わってきます。

 

 

【5】参考文献の書き方に注意!

 

論文で註をつけるのは、

典拠を示すときや、本文の補足的説明をするとき、それに、本文の全体の流れからは逸れるけれど指摘しておきたいことがあるとき

です。このうち、典拠(参考文献)を示すさいには、一定のルールに従って書くことが必要になります。

 

とはいえ、参考文献の表記法にこれといったスタンダードはありません。専門分野ごと・国ごとに表記のルールが微妙に異なるのです。

それでも最低限のルールはあります。それを知るには、
@信頼のおける研究者の書き方を忠実に真似する

これがいちばんです。なぜなら、それがその専門分野で流通している表記法であるはずだからです。

また、
Aマニュアルを用いる

という方法もあります。参考文献の表記法(documentation)マニュアルが、定期的に更新されながら編集されています。

代表的なものには、Chicago Manual, MLA, Turabian Styleの3つがあります。

英語圏では、こうしたマニュアルに基づいて書かれることが多いようです。(フランスやスペインではあまり参照されませんが)

このうち、人文系の学問でおもに用いられるのは、Chicago Manualです。
1906
年から10年ごとに更新。もともとは非常に大部のものです(外語大図書館では所蔵されていませんが、ICU図書館で閲覧可能です)。
一般向けに出版されているのは、一部をまとめた簡易版です。これは外語大図書館にも所蔵されていますが、13版と古いものです(最新は15版)。
学生向けのペーパーバック版では、論文を書くにあたって頻出するケースがまとめられていて、使いやすくなっています。

 

いずれにしても重要なのは、論文全体がひとつの書き方で統一されていることです。

最初から最後まで表記にゆらぎがなければ、それで合格です。

 

 

【6】参考文献表記 ―註

西洋史で一般的に用いられる参考文献表記のルールを、外国語文献→日本語文献の順に紹介します。

ここでは註における表記を見ていきます。論文末尾につける参考文献表(リスト)については、やや異なる点もありますので、【8】であらためてお話します。

このページであげるのは、ほんとうに最低限のルールのみです。より詳しいルールについては、またあらためて追加します。

 

A.外国語文献

1.

書名は必ずイタリックで書きます。カッコにいれたりしないように。

書く順番=著者名, 書名(イタリック!), 出版地, (出版社名…これはなくても構いません), 発行年.

Maurice Agulhon, Les métamorphoses de Marianne : L’imagerie et la symbolique républicaines de 1914 à nos jours, Paris, Flammarion, 2001.

 

参照したページが1ページだけなら、p.12.

数ページにわたって参照したなら、pp. 複数形します。このように

Maurice Agulhon, Les métamorphoses de Marianne : L’imagerie et la symbolique républicaines de 1914 à nos jours, Paris, 2001, pp.12-18.

 

 

2.論文 (雑誌や紀要などに掲載されたもの)

こんどは、論文タイトルを ”でくくります(くくらなくてもよいのですが、とにかく普通の書体で書く)。

かわりに、雑誌名のほうをイタリックで書きます。

書く順番=著者名, 論文名(普通の書体で), 雑誌名(イタリックで), , , 掲載ページ.

Catherine Bertho, “L’invention de la Bretagne :genèse sociale d’un stereotype,” Actes de la recherche en sciences sociales, 35 (1980), pp. 45-62.

 

3. 論文 (論文集などの単行本に掲載されたもの)

in~(論文の入っている本の書名) と記します。

あとは上に見た例と同じ。論文名は普通の書体で、書名はイタリックで。

Phillippe Vigier, “Le bonapartisme et le monde rural,” in K. Hammer et P. C. Hartmann (publiés par), Le Bonapartisme, München, 1977, pp. 11-21.

 

 

B. 日本語文献   外国語文献の規則にほぼ準じます。

1.

書名は『 』でくくります。斜体にしないように!また、書名の前後に読点は打ちません

書く順番=著者名 『書名』 出版社名、発行年。

(例)柴田三千雄 『近代世界と民衆運動』 岩波書店、1983年。

 

参照したページを記すのに、日本語文献ではp. としません。かわりに漢字でと書きます。

(例)柴田三千雄 『近代世界と民衆運動』 岩波書店、1983年、23-27頁。

 

2.論文 (雑誌や紀要などに掲載されたもの)

論文名は「 」でくくり、雑誌名は『 』でくくります。

書く順番=著者名 「論文名」 雑誌名 号、年。

(例)北原敦「日常的実践の歴史学へ—喜安朗氏の近業によせて—」『思想』848号、1995年。

 

3. 論文 (論文集などの単行本に掲載されたもの)

上で見たのとほぼ同じですが、最後に「〜所収」と記すのが大事です。

論文名は「」、書名は『』に入れる。

書く順番=著者名「論文名」本の編者や著者名『書名』出版社、出版年所収。

(例)二宮宏之「フランス絶対王政の統治構造」吉岡昭彦・成瀬治編『近代国家形成の諸問題』木鐸社、1978年所収。

ただし、註をつけた箇所で参照したページを具体的に示す場合、「〜所収」は不要です。

 

 

【7】註で用いられるおもな略号

註では、前にあげた文献を再び記すときなどに、略号を用いることがあります。

 

1. 同一著者による別の文献を、複数の註で続けて記す場合

著者名を略号に代えます。

外国語文献についてなら Id. (またはIdem

日本語文献についてなら 

 

2. 同じ文献を連続してあげる場合

文献名を略号に代えます。

外国語文献についてなら Ibid. (またはIbidem

日本語文献についてなら (本の場合)同書

(論文の場合)同論文

 

3. 別の文献をあげた後、少し前に引いた文献を再びあげる場合

文献名を略号に代えます。

外国語文献についてなら op. cit.

日本語文献についてなら (本の場合)前掲書

(論文の場合)前掲論文

 

 

【8】参考文献表の作成

 

論文の末尾に付ける参考文献表を作るときは、著者の姓のアルファベット順に文献を並べます。

ですから外国の著者名も、family name, first name(イニシアルでも可) の順に書き直すことがふつうです。

著者名や書名などの各情報は、カンマではなくピリオドで区切ることが多いようです。

ひとつの書誌情報が複数行にわたるときは、逆インデントをして、著者名が目立つようにします。

同じ著者が続くときは、----- とダッシュを5〜7つくらい続けて著者名に代えます。

(例)

Abderrahman Jah, Cherif. Los aromas de al-Andalus: La cultura andalusí a través de
 los perfumes, especias y plantas aromáticas
. Madrid: Alianza, 2001.

Celada, Eva. La cocina de la Casa Real. Los mejores menús privados, de bodas y banquetes
de los Borbones desde el siglo XVIII
. Barcelona: Belacqva, 2004.

El Khayat, Rita. La mujer en el mundo árabe. Barcelona: CIDOB. Icaria, 2004.

Fantar, M'Hamed Hassine. Los fenicios en el Mediterráneo. Barcelona: CIDOB. Icaria, 1999.

García-Arenal, Mercedes.La diáspora de los andalusíes. Barcelona: CIDOB. Icaria, 2003.

González, Isidro. Los judíos y la Segunda República (1931-1939). Madrid: Alianza, 2004.

-------. Relaciones España-Israel y el conflicto del Oriente Medio. Madrid: Biblioteca Nueva, 2001.

-------. El retorno de los judíos. Madrid: Nerea, 1991.

Kaiser, Bernard.Una geografía de la fractura. Barcelona: CIDOB. Icaria, 2000.

Maya, José Luis. Celtas e iberos en la península ibérica. Barcelona: CIDOB. Icaria, 1999.

Troin, Jean-François. Las metrópolis del Mediterráneo. Barcelona: CIDOB. Icaria, 2003.