◇◆ 本文の註における参考文献の記し方 ◆◇

 

「卒業論文を書くためにB」で註・参考文献表における典拠の表記法をご紹介しましたが、

どれも〈必要最低限これだけは知っておきたい〉という基本ルールばかりでした。

ここではより詳しく事例別に、註における参考文献の表記法をご覧に入れます。

(一部「卒業論文〜B」とかぶります)

順次ケースを更新していく所存です。

 

 

 

A.外国語文献

英語・フランス語・スペイン語ともに、基本的には表記法にあまり違いはありません。

 

1.

1-1-a. 一人の著者による本(フランス語・スペイン語)

Maurice Agulhon, Les métamorphoses de Marianne : L’imagerie et la symbolique républicaines de 1914 à nos jours, Paris, 2001.

      著者名    ↑書名はイタリックかならず!) ↑サブタイトルはのあとに書く                   ↑出版地、発行年(どちらも必須)

出版社は任意です。記す場合はこのように、出版地の後に書くことが多い↓

Maurice Agulhon, Les métamorphoses de Marianne : L’imagerie et la symbolique républicaines de 1914 à nos jours, Paris, Flammarion, 2001.

なお、出版地と出版社との間の区切りだけを「,」ではなく「 :」にすることもあります。

Maurice Agulhon, Les métamorphoses de Marianne : L’imagerie et la symbolique républicaines de 1914 à nos jours, Paris : Flammarion, 2001.

どちらの方式をとっても構いません。が、ひとつの論文の中ではひとつの方式で、必ず統一してください。くれぐれも混用しないように!

 

参照したページが1ページだけなら、↓

Maurice Agulhon, Les métamorphoses de Marianne : L’imagerie et la symbolique républicaines de 1914 à nos jours, Paris, 2001, p.12.

数ページにわたって参照したなら、pp.(複数形)にする↓

Maurice Agulhon, Les métamorphoses de Marianne : L’imagerie et la symbolique républicaines de 1914 à nos jours, Paris, 2001, pp.12-18.

 

この一連の例のように、フランス語・イタリア語・スペイン語の文献表記法では、

タイトルの文頭の一字、および固有名詞の頭文字のみを大文字にします。

 

1-1-b. 一人の著者による本(英語)

これに対し、英語の文献表記法の場合、タイトルの各語の頭文字を大文字にします。

(例)  Charles Rosen, Sonata Forms, New York, W. W. Norton, 1980.

ただし、and, of, theなどの小さな言葉が文中にある場合は、小文字のままにします。

(例)  Lynn Hunt, Politics, Culture, and Class in the French Revolution, Berkeley, University of California Press, 1984.

 

1-2. 複数の著者による本

著者名をand, et(←フランス語文献ではこれを用いることもある)などでつなぎます。あとは1-1に倣います。

 S. G., Armistead, and J. H. Silverman, En torno al romancero sefardí (Hispanismo y

balcanismo de la tradición judeo-española), Madrid: Seminario Menéndez Pidal-Gredos, 1982.

 

1-3-a. 一人または複数の編者による論文集などの本(フランス語・スペイン語)

編者名のあと、「〜編」にあたる言葉を( )に入れて続けます。

Pierre Nora (sous la direction de), Les lieux de mémoire :la Nation, Paris, Gallimard, 1997.

↑フランス語の場合このように記せます。が、次の例のように省略も可です。

Á. Alcalá (dir.), Judíos, Sefarditas y conversos. La expulsión de 1492 y sus consecuencias, Madrid, 1995.

 

1-3-b. 一人または複数の編者による論文集などの本(英語)

「〜編」にあたる言葉を(ed.)代えれば、あとは上記1-3-aの例と同じです。

 

1-4. 再版書

                                                            ↓セミコロンで区切る

4  Maurice Agulhon, Pénitents et Francs-Maçons de l’ancienne Provence, Paris, Fayard, 1968 ; reed., Paris, Fayard, 1984.

                                                                 ↑再版書の情報

どの版を使用したかわかるように、再版書を用いた場合は明記しましょう。

 

 

2. 雑誌や紀要などに収められた論文

Catherine Bertho, “L’invention de la Bretagne :genèse sociale d’un stereotype,” Actes de la recherche en sciences sociales, 35 (1980), pp. 45-62.

↑論文タイトルは ”でくくっても、くくらなくともよい       ↑雑誌名はイタリックで           号  年  掲載ページ

フランス人研究者の書き方では、“ ”のかわりに« »でくくります。

わたしたちとしては、« »をとるか ”をとるか、好みで決めてよいようです。

 

 

3. 論文集などの単行本に収められた論文

言語を問わずin~ と記します。フランス語の場合、dans~ とすることもあります。

Phillippe Vigier, “Le bonapartisme et le monde rural,” in K. Hammer et P. C. Hartmann (publiés par), Le Bonapartisme, München, 1977, pp. 11-21.

 

 

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B. 日本語文献   外国語文献の規則にほぼ準じます。

1.

(例1)柴田三千雄 『近代世界と民衆運動』 岩波書店、1983年。

 書名は『 』でくくる  出版社名、発行年(どちらも必須)

書名の前後に読点は打ちません

日本の本の場合、出版地は東京や京都であることが多いため、記入は任意です。

 

註ではこのように出版情報を( )に入れてもよいとされます↓      ↓日本語文献ではp. とせずに、漢字で「」と書きます

柴田三千雄『近代世界と民衆運動』岩波書店、198323-27

↑註をつけた箇所で参照したページは、できるだけ具体的に記します

 

 

2.雑誌などに収められた論文

↓論文名は「 」でくくり                   ↓雑誌名は『 』でくくります

(例2)北原敦「日常的実践の歴史学へ—喜安朗氏の近業によせて—」『思想』848号、1995年。

↑号、 ↑年(どちらも必須)

マイナーな雑誌や紀要には、出版社名や大学名を記しておく方が親切です。

 

 

3.論文集などの単行本に収められた論文

↓ナカグロでなく読点でも可

(例3)二宮宏之「フランス絶対王政の統治構造」吉岡昭彦・成瀬治編『近代国家形成の諸問題』木鐸社、1978所収

これを書くことが大事です↑

ただし、註をつけた箇所で参照したページを具体的に示す場合、「〜所収」は不要です。

 

 

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註で用いられるラテン語由来の略号

使用例

とある論文の註を例に検討していこう、という設定です

 

 

A. 外国語文献

1. 同一著者による別の文献を、複数の註で続けて記す

これら冒頭の番号は、註の番号だと思ってください
(13) Claude Lévi-Strauss, Les structures élémentaires de la parenté, Paris, Mouton, 1967.
(14) Id., “Histoire et ethnologie,” Annales E.S.C., 6 (Novembre-Décembre, 1983), pp. 1217-1231. ←同じ著者による異なる文献です

↑ピリオド必須

Id. とはIdemの略なので、必ずピリオドをつけてください。

また、略さずにIdem, “Histoire et…” としても大丈夫です。

書籍の場合はイタリックでId.とし、論文の場合はそのままId.とするという使い分けをする人もいますが、

必ずしもその必要はないでしょう。

 

2. 同じ文献を連続してあげる

さきほどの例の続き。註15に注目です。
(13) Lévi-Strauss, Les structures élémentaires de la parenté, Paris, Mouton, 1967.
(14) Id., “Histoire et ethnologie,” Annales E.S.C., 6 (Novembre-Décembre, 1983), pp. 1217-1231.
(15)
Ibid. , pp. 1220-1223. ←これです。同じ文献を連続してあげています。

Ibid. とはIbidemの略なので、必ずピリオドをつけてください。

また略さずに、Ibidem, pp. 1220-1223. としても大丈夫です。

 

3. 別の文献をあげた後、少し前に引いた文献を再びあげる

今度は註17に注目してください。
(13) Lévi-Strauss, Les structures élémentaires de la parenté, Paris, Mouton, 1967.
(14) Id., “Histoire et ethnologie,” Annales E.S.C., 6 (Novembre-Décembre, 1983), pp. 1217-1231.
(15)
Ibid. , pp. 1220-1223.
(16)
川田順造『西の風・南の風文明論の組みかえのために』河出書房新社、1992年、55-56頁。
(17)
Lévi-Strauss, op. cit., p. 1229. ←これです。註14ならびに註15で引いた文献を再びあげています。

op. cit. とはopere citatoの略なので、必ずピリオドをつけてください。

op. cit.とイタリックにしてもかまいません。

 

4. 別の文献をあげた後、少し前に引いた文献と全く同じ箇所をあげる

最後に、註18にご注目。
(13) Lévi-Strauss, Les structures élémentaires de la parenté, Paris, Mouton, 1967.
(14) Id., “Histoire et ethnologie,” Annales E.S.C., 6 (Novembre-Décembre, 1983), pp. 1217-1231.
(15)
Ibid. , pp. 1220-1223.
(16)
川田順造『西の風・南の風文明論の組みかえのために』河出書房新社、1992年、55-56頁。
(17)
Lévi-Strauss, op. cit., p. 1229.
(18) Lévi-Strauss, loc. cit.

loc. cit. とイタリックにしても○。なおloc. cit. loco citatoの略なので、ピリオドが必ず必要です。