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2011年11月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート

(2011年11月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア]) 

 新学期の慌ただしさも去り、秋もいよいよ深まった今月は、能のワークショップ、イタリア文学における滑稽をテーマとするセミナー、無声映画と演劇との関連を多角的に議論するシンポジウム等、学術イベントが数多く開催され、派遣者も論文作業の傍らで積極的に様々な場に顔を出し、大いに刺激を受けることとなった。
 派遣者の研究活動の主旨である博士論文執筆作業に関しては、今月に入り、第四章第三節の準備と執筆に取り掛かった。同箇所では、前節のバーチャルリアリティをめぐる議論を受け継ぐかたちで、20世紀を代表する笑いの一形態であり、ザヴァッティーニにおいて典型的に表現された"ユーモア"の分析、次いで、ザヴァッティーニの実例に拠りながら鏡像経験から映画経験へと至る経緯を辿ってゆく予定である。論文の最終節にあたることもあり、改めてこれまでの議論を振り返り、注意して、丁寧に、執筆を進めてゆきたいと考えている。
 ところで、今月半ばには、本学指導教員である和田教授が渡伊し、論文及び研究活動に関して直接に相談をする機会を得た。その際には、派遣者所属学科研究科長を交えての面会も行い、博士論文提出、及び、審査の概要と手順を具体的に決定することとなった。加えて、指導教員には、これまでに執筆した箇所をこの機会に改めてまとまったかたちで見ていただいた上で、これまでの経過や今度の見通しについて丁寧な助言をいただくことができ、今後の派遣者の研究活動において他に代えがたい励みとなった。
 同じく今月半ばにはまた、恒例の博士報告会に参加し、研究成果報告を行った。今回で早五度目の参加となるが、ずらりと居並ぶ学科教授陣と同学科所属博士課程全学生を前にしての発表は何度経験してもどうしても緊張してしまうというのが本音である。事前に十分な準備をして望んだ研究進度状況をめぐる発表に関しては特別に問題視されることこそなかったものの、研究内容に関して鋭い質問が複数飛んだことから、必死の思いで対応することとなった。その場でできる限りの応答こそ試みたものの、後で振り返るとより最適な回答がほかにあったようにも思え、報告会後しばらくは少なからず悶々とした思いを抱えて過ごすこととなった。こうした負の経験は努めて今後の課題としていきたいと考えている。ところで、来期の博士論文提出を予定している派遣者にとっては、今回の報告をもとに博士論文提出許可を得るという意味でも重要な機会であった。結果として、無事に、希望通り来春三月の博士論文提出許可が降り、改めて、身の引き締まる思いでいる。
 ところで、今月末には、週末を利用してトリノ映画祭に参加し、世界中から集まる新作映画の数々を時間の許す限り鑑賞してきた。直接的には20世紀前半に生起した事象を取り扱いながらも現在に絶えず思いを馳せている派遣者にとり、なにより、博士論文の結論部を考慮しはじめたこの時期に、映画の現状を実体験するチャンスをこうして得られたことは殊更に意味深く思われてならない。

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トリノ映画祭(Torino Film Festival)にて。

 

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