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2012年9月 月次レポート(桑山佳子 スイス)

短期派遣EUROPA月次レポート
2012年9月

博士後期課程 桑山佳子
派遣先:スイス・チューリッヒ大学

 9月に入り、チューリッヒ大学の秋学期が始まった。学期が始まる前、9月に入ってすぐの二週間はドイツ語の集中コースに出席した。報告者のスイス到着は春学期の途中のことで、語学センターが提供する授業には聴講も含めて出席が許されなかったため、語学の授業への参加はこれが初めてだった。最初のうちは慣れない形式の授業に緊張しきっていたが、徐々に慣れ、ドイツ語の向上もかなったと思う。
 9月第四週からは大学の学期が始まり、タン先生との面談も再開された。また、この週には日本から指導教員の山口裕之先生がチューリッヒにいらっしゃった。メールでのやりとりはあったものの、先生に直接お会いするのは3月以来、ほぼ半年ぶりだった。先生とは博士論文、来月の学会発表、同じく来月寄稿予定の雑誌論文そして今後の研究の具体的な進め方について話し合った。博士論文については問題設定を再度検討し、扱うテーマ範囲、具体的な文献そして論の方向性について細かく検討し、助言をいただいた。また、これまでの文献の読解で詰められなかった部分、特にベンヤミンに関わる部分についても先生の見解をお伺いすることができ、この先読んでいく具体的な文献についても助言をいただいた。また、学会での発表と雑誌論文について、今後の具体的な研究方法についても話し合った。タン先生との面談にも山口先生に同席していただいたため、緊張しきりだったが、両先生の見解を同時に聞くことができたのも貴重な機会だった。この週はとても濃い一週間だったように思う。
 タン先生とは4月から読解を続けてきた多和田葉子の博士論文‟Sprachmagie und Spielzeug‟ の最終章を終え、来月の一回目の面談では同じく多和田葉子の新刊"Fremde Wasser"の読解を進めることを決め、面談を終えた。
 第五週はチューリッヒで開かれた多和田葉子の朗読会に出席した。新刊の"Fremde Wasser"、博士論文で扱う予定の"Abenteuer der deutschen Grammatik", そして‟Schwager in Bordeaux"の朗読を聞くことができた。特に"Abenteuer~"の詩の朗読では、そのリズムや強弱に発見があり、朗読会ならではの体験ができた。また、詩に対する聴衆の反応がとても生き生きとしたものだったことにも驚いた。これまで一人で肩の力を入れて読んできた詩に、肩の力を抜いて楽しんで向き合えたことも大きな収穫だった。
 来月は、11月の学会での発表と雑誌論文の寄稿の準備に並行して、来学期に備えての事務手続きと、先に述べたように新刊の"Fremde Wasser"の読解をすすめる予定である。

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