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2012年8月 月次レポート(笹山啓 ロシア)

 短期派遣EUROPA月次報告書(2012年8月)
報告者:博士前期課程2年 笹山啓
派遣先:ロシア国立人文大学 (モスクワ)

今月は院の知人の紹介により10月5日及び6日にウクライナで開催される学会に論文を提出する運びとなった。ウクライナ当地での発表はロシアから帰国後の日程を考えると厳しく、博士前期課程在学中というある意味中途半端な時期にあることも懸念されたものの、論文のみでの参加が可能ということであり、論考の内容は修士論文の要旨のようなもので構わないというあちらの先生のお言葉もあったので、チャレンジの意味も兼ねて今月上旬から執筆に着手した。ロシア滞在中ということで資料の収集は比較的容易であったが、慣れない外国語での論文作成であり、また報告者がウクライナ語を解さないゆえにウクライナ特有の論文フォーマットの調査にも大変時間がかかってしまったため、ネイティブチェックまで含め予想以上の期間を執筆に費やしてしまった。現在はすでに提出を完了し、内容・形式のチェックを受けている状況である。審査を通過し掲載が決定された場合は印刷物あるいはデータとして論集が送付されてくるとのことなので、結果を待つのみである。論文は «Образ «радужный поток» и монистическая мысль в сочинениях В. О. Пелевина» (「ヴィクトル・ペレーヴィン作品における「虹の奔流」の形象と一元論的思想」)と題し、ペレーヴィン作品に頻繁に登場する「虹」というモチーフとチベット仏教の「虹の体」概念の関係を手掛かりに、作品内で展開される作家の一元論的思想をチベット仏教や作品内で言及される西洋哲学の知識を絡めて90年代の作品から順に追っていくもので、修士論文のレジュメ的な性格が強くなったが、この時期にこうしたものを正式な論文という形で一本まとめられたことは現時点での研究成果の整理という意味で小さからぬ意義があったように思う。
 未だ夏真っ盛りであろう東京とは対照的に、既にモスクワでは冷え冷えとした秋の風が吹き始め、上着の手放せない気候となっている。早くも残り1ヶ月となった今回のモスクワ滞在では、8月に論文執筆でおろそかになってしまった資料収集・読解等に、体調に留意しつつラストスパートのつもりで精力的に取り組む所存である。

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