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2012年7月 月次レポート(フィオレッティ・アンドレア イタリア)

月例レポート
(2012年7 月、博士後期課程 フィオレッティ・アンドレア)(派遣先:ローマ大学、イタリア)

 7月上旬に行われた夏学期の試験をもって、ローマ・ラ・サピエンツァ大学の2011−2012年度は終了した。
 大学での授業が終了したため、『にごりえ』の翻訳に集中し、完成させた。これから注釈の編集と翻訳の修正の作業に入る予定。その後、樋口一葉の人物像と文学作品をイタリアの読者に紹介する序文を準備する。来年の春までにすべての作業を完成し、出版社に提出したい。
 博士論文については、読書の歴史をめぐる側面の研究を続けてきた。特に、ヴォルファング・イーザーやハンス・ローバート・ヤウスなどの批評家によって定義された、いわゆる受容理論に関する情報と資料を集めた。この理論の参考文献のうち、ここではH.R.ヤウスの『美的経験の文明』、ローマン・インガルデンの『文学的芸術作品』、W.イーザーの『行為としての読書』など基本的なものだけに言及する。簡潔にまとめると、この理論によれば、文学テクストを理解するにあたり、読者と読むという行為も無視できない要素である。上に挙げた資料は、以前に言及した読書の歴史をめぐる参考文献とともに、研究の展開のために欠かせないものだと思われる。
 句読法のテーマに関しても最近出版された一つの興味深い本を見つけた。イタリア人研究者エリーザ・トナーニ(Elisa Tonani)の『白黒小説‐19世紀から今日までのイタリアの小説における余白と句読法の使用に関する研究』("Il romanzo in bianco e nero. Ricerche sull'uso degli spazi bianchi e dell'interpunzione nella narrativa italiana dall'Ottocento a oggi", Franco Cesati Editore, 2010)。この研究は最近発表されたものであり、句読法に関する充実した参考文献も含まれているため、以前集めた句読法に関する資料を十分に補足できることと思われる。
 来月には本派遣によるイタリアでの研究期間が終了する。帰国および東京外国語大学での研究活動再開のための準備を始めようと思う。

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