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2012年6月 月次レポート(村松恭平 スイス)

月次レポート(6月) 村松恭平

6月に入り、ジュネーブでの滞在も残り2か月となった。ユーロ圏の財政危機が更に悪化すると同時に、地理的にも徐々に影響が広がりつつある。戦後から続く欧州経済統合が、その運命の岐路に立っていると言える。ユーロの崩壊か、それとも財政・金融分野の更なる統合の進展か。日本のメディアではあまり報道されていないが、ギリシャやスペイン、イタリアといった南欧諸国の債務問題・経済の悪化だけでなく(アイルランドといった南欧以外の国も含まれる)、事態はオランダといった一見、経済的にそれほど問題がないとイメージされる国も、緊縮財政政策の影響を多大に受けている。
 このようにEUは現在、大変な事態ではあるが、経済統合についての歴史と思想を研究テーマに置いている私としては、欧州政治経済の激動の真只中というタイミングで欧州に派遣されたことによって、現地の議論や情報に高い感度をもって触れられている。統合の進展については、今後の動向を予想することは未だ困難である。しかしながら、少なくとも戦後の欧州統合の追い風となった"経済成長"や"福利の充実"といった言葉は今や空しく響くだけであり、新たな統合のモデルと確固たる思想の基盤の再構築が必要な事態となっているのは確かである。
 今月は、5月に引き続き論文の執筆と見直しに(悩みながら)集中した1か月となった。経済統合のステップの1つである関税同盟について、どういった切り口から論を組み立てていくか、実際に執筆を進めながら試行錯誤を繰り返す日々であった。一方で、指導教官のJovanovic教授からは、論文に対しての一定の評価を頂戴することができた。様々な文献に接し、考え、丁寧に論を組み立てた努力は何とか認められた様子ではある。(不十分な部分はまだ多いが。)また、教授からは「現在のユーロ危機が仮に進展して共通通貨ユーロが崩壊した場合、欧州は再度、"関税同盟レベルのつながり"に戻るか」といった新たな考える種も提供していただいた。更に、研究所の仲間数人にも私が執筆したものを読んでもらい、いくつかのコメントや批判を受けることもできた。
 最後の月は、帰国後の研究も考慮し、資料収集を中心としたい。ジュネーブを出発する前に必要な事務処理関連の作業も少なからずあるので、きっちりと終わらせて、帰国致します。

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