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2012年6月 月次レポート(蔦原亮 スペイン)

6月月次レポート 
蔦原亮
マドリード自治大学

 三月に応募した国際学会の選考結果が今月届いた。採用していただけることになり、うれしい限りであった。提出した発表原稿は、本派遣の前半の集大成である。そうした研究を、多くの人の前で発表し、フィードバックをいただける機会を得られたこと。これ以上のことはないように思う。
 今月は引き続き、習慣表現と動詞形式の共起可能性に関する調査を続けた。データの収集と観察、一般化のための仮定と修正を繰り返す一ヶ月であったが、徐々にまとまりつつある手ごたえを得ている。
 さて、本派遣も、このレポート執筆時点で残り二日となった。得るものが非常に多かった九ヶ月間の滞在であるが、一番の収穫は、やはり人との出会いであったように思う。そこで今回の月次レポートでは、最終月であるということも考え、報告者が研究面でお世話になった方々を紹介し、派遣中、彼らから学んだことについて簡単にではあるが記しておきたい。

Antonio Moreno Sandoval教授
 報告者の受け入れ教員であり、統計処理、データの収集法、報告者がそれまでに知らなかったさまざまなタイプのコーパスを紹介していただいた。また、研究外でも、食べ歩き、料理、読書の好きな報告者に、関連するさまざまな情報を与えてくださった。いただいたアドバイスのおかげで、研究はもちろん、こちらでの生活そのものも、本当に楽しいものとなった。

Elena de Miguel教授
 語彙論の第一人者であるDe Miguel先生には理論上の指導をしていただいた。先に述べた国際学会の発表内容、および、三月に投稿した論文は、先生のアドバイス抜きには完成に至らなかったように思う。また、先生の研究分野である、語彙と統語の相互の関与は非常に興味深く、報告者の博士論文にも大いに関わってくると思われる。

Olga Fernández教授とLuis Eguren教授
 Fernández教授は前期に、Eguren先生は後期に理論言語学の授業を担当された。前期後期の授業はともに、理論言語学、特に生成文法の実際の道具立てではなく、むしろ、「生成文法的発想」を獲得し、言語学の科学性について考えることを目指すためのものであり、非常に興味深いものであった。一連の講義を通じて、これまでには持っていなかった視点を得ることが出来たように思う。

Leonardo Campillos氏とAlicia González氏
 二人は自治大学の情報言語学研究室に所属する大学院生であり、彼らとはほぼ毎日、朝八時半から夜九時まで共に研究室で過ごした。二人とも博士論文提出を控え、多忙ながら、公私にわたり、大変親切に、サポートをしていただいた。また、二人の研究に対する姿勢にも大いに感じるところがあった。

 紙面の都合で詳しく紹介は出来ないが、他にも多くの研究者の方々、大学院生からさまざまなことを学ばせていただいた。いくら感謝をしても感謝をしたりない。
 帰国後は引き続き、習慣と動詞形式に関する調査をすすめ、動詞形式の使用を非文法的とする条件を網羅した博士論文の完成に向けて邁進していきたい。報告者が先に紹介した研究者、大学院生らから薫陶を受け、それを研究に反映できることを誇りに思っているように、彼らの教え子、友人として、彼らに恥じない、少しでもいいので彼らに誇りと思ってもらえるような、博士論文を書ければと思う。
 また、メールを通じて懇切丁寧な指導をしていただいた指導教官の高垣敏博先生、自治大学にサバティカルにこられていた上智大学での修士課程の指導教官である西村君代先生、そして未熟な報告者に今回の派遣の機会を与えてくださった、短期派遣EUROPA担当者の方々には、心からの感謝を申し上げます。

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