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2012年5月 月次レポート(柏崎正憲 ドイツ)

東京外国語大学 短期派遣EUROPA 月次レポート(2012年5月分)

2012.06.01 柏崎正憲

概要
 刊行予定の博士論文の改稿案を、5月第一週に、吉田書店(東京)に提出。ただし本格的な改稿への着手は夏以降の予定。
 5月10日にカナンクラム教授と面談。ほか、毎週のゼミナールおよびドイツ語研修コースに参加。会話能力向上のため、日本語を習いたい学生とのタンデム(言語交換)の開始。
 関連文献の調査(後述)。

成果
 EU危機の構造的要因に関する諸分析の調査。
 大筋で共通しているのは、第一に、EUおよび単一通貨圏を、過去20年のタイムスパンにおいてではなく、第二次大戦後のいわゆるブレトン・ウッズ体制(金・米ドルを基軸とした為替相場の固定による国際通貨体制)の構築からたどって分析している点。第二に、共同市場や単一通貨圏の構築が、EU構成国家間の競争を排除せず、むしろそれを前提とし、さらにはそれを促進しているという点。
 これら二つの観点を前提として、EU圏の政府のみならず企業や市民社会やトランスナショナルなネットワークといった要素のあいだの相互作用に着目し、EU危機の構造的原因を浮かび上がらせているということが分かった。

派遣先大学(マールブルク大学・ドイツ)との連絡状況
 指導教員のジョン・カナンクラムとの今回の会合では、報告者の博士論文(ニコス・プーランザスの国家理論)の内容について討論。基本的なアプローチについては教授の賛同を得たうえで、詳細な読解に関するいくつかのアドバイスを受けた。そのうえで、今後は理論を応用した現実の国際政治秩序の分析に着手することを勧められ、いくつかの文献を紹介してもらった。ちょうど報告者としても、その点に関する研究の不足を感じていたので、今後しばらくはその調査を集中的に進めていく予定。

今後の展望
 6月にはユーロ圏危機に関する集中セミナー、国際政治経済学の諸主題に関する発表と討論があるので、そこから多くの成果を得てきたい。また、本派遣終了後の研究活動継続のために、非常勤講師や任期制研究所への書類応募を徐々に進めていく予定。

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