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2012年5月 月次レポート(蔦原亮 スペイン)

5月月次レポート 
蔦原亮
マドリード自治大学

 今月も引き続き、スペイン語動詞形式と各種習慣表現の対応関係についての調査を進めた。習慣、Genericityは報告者の当初の想像をはるかに超えて奥の深いテーマであり、先月までは、先行研究を読むたびに、その先行研究がまた別の先行研究を呼ぶといった形で、調査の方向性を見失うなど迷走気味であったが、ようやく今月、調査の方向性を定めることが出来たように思う。

 スペイン語の習慣表現に関する先行研究では、習慣を表すと考えられる表現は全て「習慣」という同一ラベルの元にまとめられがちであったが、Boneh & Doron(2008, 2009)やFerreira(2005)といった、英語、ポルトガル語、ヘブライ語の習慣表現を意味論的見地から分類した先行研究を参考に、スペイン語における習慣表現を分類し、これを念頭に置き、各習慣表現の各動詞形式による表出の可能性と不可能性について、記述することを目指すことにした。

 現在、スペイン語には少なくとも、「動詞形式単体による習慣表現」、「習慣を表す副詞+動詞形式による習慣表現」そして「Soler+動詞形式」という3つの統語、意味論的に対立する習慣表現があることを明らかにし、後者2つが、それらを表出するための動詞形式を制限している理由について考察している。

 なお、本調査では、大量のデータを使用しているが、そのデータの収集について、受け入れ先の自治大学情報言語学研究室のMoreno教授、ならびに大学院生らから、きわめて有用なアドバイスをいただいたことも報告しておきたい。

 また、今月はカスティージャ・イ・ラ・マンチャ大学のÁngeles Carrasco教授のセミナーにも参加した。教授の論文は報告者の研究テーマに密接に関わっており、学部時代から愛読していた。セミナーそのものも大変興味深く、現在進行中の研究のヒントになりそうなデータが数点提示された。そしてセミナー後、報告者の研究について2,3相談をさせていただいたが、丁寧な回答を頂戴した。このことにより、研究が前進し、なにより個人的に、大いに励みになった。

 本派遣も残り一ヶ月となった。現在の研究テーマについて、記述に必要なデータと先行文献、前提はかなり揃ってきたように思われるので、結論に向け、これまでの考察と観察、発覚した事実を収束させていきたい。

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