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2012年3月 月次レポート(最上直紀 オーストリア)

短期派遣EUROPA月次報告書(2012年3月)

最上直紀
 

 報告者は東京外国語大学が提供する短期派遣EUROPAの制度によりまして、ドイツ語のブラッシュアップおよびギュンター・アンダースの技術論の研究のため、オーストリア共和国ウィーン大学に派遣されました。

 (オーストリアでの留学および生活事情に関しまして)
 2012年3月は、まずはオーストリア滞在に必要な所定の手続きを行いました。
 私の場合、まず日本にいる間にウィーンの不動産管理会社に寮を斡旋してもらい、申込みを行いましたが、その際は保証金を支払うように求められたくらいで特に証明書の提出を求められるようなこともありませんでした。こちらに到着してからすぐに不動産会社のオフィスに赴き、入居手続きと鍵の引き渡しを受けましたが、その際もパスポートでの身元確認と契約内容の再確認(前もって書面には一通り目を通してありましたので、これもスムーズに運びました)およびサインをしたくらいで、入居することができました。
 現地での入居手続きのときに、担当地区の警察署に「滞在届Meldezettel」を提出するようにと言われましたが、この書類も可能な範囲で前もって不動産会社が必要事項を記入してくれており、留学生の受け入れ手続きがシステマティックに整えられているという印象を受けました。この滞在届も奨学金の有無と5か月の契約で寮をとっているという確認をしたくらいで受理してもらえました。
 続けて、ウィーン大学でのドイツ語コースへの登録を行いました。ここでは初めにEinstufungという、文法的知識や語彙の確認および短作文からなる簡単な試験を受けまして、どのレヴェルの授業に登録するか相談して決めるというシステムになっていました(このため実際に大学まで赴かなければ登録ができないということでもあります)。ここではウィーンでの住所や連絡先を伝えるように求められまして、その場で受講料をクレジットカードで支払い、手続きを終えました。

(派遣先大学との連絡に関しまして)
 上述のとおりウィーン大のドイツ語コースへの登録を行いました。日本でドイツ語の総ざらいをやっておいた甲斐がありまして、私が参加するのはB2/1 Trimester Deutschというコースになりました。これはMittelstufe Deutsch(中級)のレヴェルにあたります。ただし授業が始まるのはイースターが終わる4月16日からです。
 これに加えまして、留学生としての受け入れをお願いしていたコンラート・リースマン教授と連絡をとり、御挨拶にうかがいました。リースマン先生は私のドイツ語能力からくる筆不精にもかかわらず、親切に歓迎してくださり、研究書や遺稿のアーカイブなど基本的なことを教えてくださり、今後は私が定期的に文書で研究状況を報告し、口頭でアドバイスをいただくという形になりました。

(派遣者の研究に関しまして)
 報告者は研究課題であるギュンター・アンダースの『異端の思想』(Ketzereien)をひとまず邦訳で通読し、彼の主著と言ってよい『時代遅れの人間』(Die Antiquiertheit des Menschen)の原文に取りかかったところです。
 『異端の思想』は、アンダースが『時代遅れの人間II』を書いていたころにした日々の体験や会話をもとにした哲学的断片集でして、こうして現地に留学いたしまして、いろいろ見聞してまわると、そこに出てくる人や場所のイメージをよりよくつかむことができます。
 また現時点では、ひとまず「アンダースのドイツ語」の調子をつかもうと考えまして、可能な限り丁寧に原文を読んでいます。(このため分量で言えば僅かしか進んでいないのですが、)「一般的見解」を提示して機知をきかせつつ相対化する様子や、縁語の用いかた、会話調の語彙の使用、譬えの多様など、じつに読みごたえがあるのですが、学ばなければならないこともまことに多いと感じております。
 3月はいくらか右往左往してしまいまして、けっきょく派遣期間中の課題を再確認することに尽きたように感じております。私の場合、ドイツ語の聴き取りの精度をあげること、なるべく喋る機会を持つこと、より素早く正確に書く能力をきたえること、そしてまた速やかに、ギュンター・アンダースという思想家の全体像をつかむ必要があると考えています。

(雑記)
 ウィーンでも3月11日には日本大使館前で小規模ではありますが、核エネルギー利用に反対するデモが行われ、小雨の降るなかで声明文が読み上げられました。

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