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2012年2月 月次レポート(新谷崇 イタリア)

月次レポート 2012年2月
新谷崇(博士後期課程)
派遣先:ピサ高等師範学校(イタリア)


 2月は、体調を崩したこともあり、史料収集に出かけることは控えた。ピサに留まり、論文執筆と史料分析を継続した。また、滞在許可証の更新期限にあたっていたので、その手続きを済ませた。今年から申請費用が数倍に値上がりしたことは予想外であったが、特に問題もなく更新手続きは終った。滞在許可証の発行は3か月後で、それ以降健康保険証の申請と受け取りができることになっている。不便なのは、フィレンツェ国立図書館での貸し出しに滞在許可証が必要なことである。許可証の発行を待たねばならない。
 今月はさらに、博士後期課程二年次の面接審査をおこなった。今年度から、大学のプログラムで留学している場合、休学中でもEメールなどの代替手段を用いて審査を受けられるようになった。面接に先立ち未発表論文と要約を提出し、それをもとに委員の先生方から質問を受け、それへの応答をおこなった。一連のやり取りはEメールでおこなった。審査では、ファシズムとカトリシズムの関係の過度な単純化、人々の心性への目配り不足、などが課題として浮かび上がった。この点は私自身も研究の抱える問題点として憂慮していたことで、議論の枠組みや分析方法を再検討する必要性を感じた。今回の審査はこれまで進めてきた研究を見直すいい機会となった。残りの派遣期間を有意義なものにできるよう、反省点を研究に反映させていきたい。
 さて、今月の具体的な研究目標は、1938年以降のイタリアの人種法について勉強を進めることであった。ユダヤ人問題に関する主要な先行研究を参考にしながら、カトリック系雑誌Rassena NazionaleItalia e Fedeの誌面に目を通した。ナチスドイツとイタリアの人種法との違い、バチカンの公式的立場とファシズム支持のカトリック知識人の齟齬に注目して、1938年から1943年分まで分析を進めた。ここでえられた研究内容は、4月を目途に論文としてまとめ、イタリアの学術雑誌に投稿するつもりである。
 来月は、バチカンの秘蔵文書館に赴き、現在執筆中の論文に必要な史料を補充する予定である。前回滞在した際に目録で何点か関連のありそうなファイル名を見つけた。もちろん実際に手に取ってみないことにはその有用性はわからないが、ファイル名と作成時期から、目を通しておくべきだと思われた。文書の請求番号は記録済みで、閲覧すべき点数も多くはないので、数日の滞在で作業を終えられると思う。

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